スケッチブック

写真と文章で、日常を記録に残す

ショートショート 1

2005-08-31 10:45:58 | Short shorts
ぼくが欲しいのはあっちなの
原作 Charles Stanley

翻訳 polo181

昔、ある農夫が生まれた子犬を売りたいと思いました。彼はそのことを知らせるべく板に広告文を書いて敷地の隅の柱に打ち付けました。その板を釘でトントン打ち付けているその時に、誰かが彼の作業服の下のあたりを引っぱっているのに気付きました。そこには小さな子がいて、やや緊張気味に上を見上げて何かを手に握っていました。「おじちゃん、ぼくワンちゃんを買いたいんだけれど」と口ごもりながら言いました。すると農夫は「うん、でもこの子犬たちは親が血統書付きのいい犬だからかなり高いんだよ」と答えました。その子はちょっと頭を落として、気を取り直したように言いました。「ぼく、39セントあるんだけれど、見るだけじゃこれでいいでしょう?」  すると農夫は「いいとも」と答えました。

農夫は口笛を吹いて、大声で叫びました。「ドりー、ドりーこっちへおいで!」
すると犬小屋から小道へと飛び出してきました。そしてドりーお母さんのあとには、四匹の小さな小さな毛糸の手毬のような子犬が転がるようにして出てきました。少年はそれを見て飛び上がって喜びました。しばらく遅れて犬小屋からもう一匹の子犬が外を恐る恐るのぞいているではありませんか。駆け回る四匹よりは明らかに小さい。しかも歩けそうもない様子。でもドりーお母さんの方へ滑って転んでよろよろと歩き出しそうです。でも歩けませんでした。当時はそのような子犬を「出来そこない」と呼んでいました。

少年は顔をフェンスに押しつけて大声で言いました。「ボクはあの出来そこないが欲しいなぁ!」 すると農夫は膝を折ってこう言いました。「ボクちゃん、あれを欲しがっちゃいけないよ。あれは決して走れるようにはならないだろうし、将来けっしてお前さんと一緒に元気に遊ぶことができっこないのさ」 この言葉を聞いた少年はしゃがんで、ズボンの裾をまくり上げました。そして言いました。「おじさん、これを見てよ。ボクの足は偽足なんだ。分かる?ボクだって決して走れるようにならないんだよ」


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15 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
続きが楽しみ (あまもり)
2005-08-31 12:05:22
新しい仕事を見つけたのですね

翻訳もされるとは尊敬

昔読んだ翻訳本(イギリスだったと思います)の「犬になりたくなかった犬」を思い出しました。

あの中には題名になった変わった犬以外にもいろんな動物が出てきますが、ワクワクしながら楽しく読んだ記憶が蘇りました。

続きが楽しみです。
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あまもりさん、こんにちは (polo181)
2005-08-31 12:26:42
コメントを有難う。バークレーは意外と元気で、心配などまるっきり無いみたいです。気落ちしているのはわたしだけで、他の人たちは日常的に接しています。

新しい仕事を見つけました。翻訳です。これは小品の読み切りです。続き物ではありません。上の物語は完結しています。ですから、明日は明日で全く別の物語が出てきます。笑
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再生 ポロさまに (熊子)
2005-08-31 12:33:11
拍手です。短篇もの好きですよ。こうした動物たちと子どもの物語は大好きだな。次はなんのお話かな、楽しみです。
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熊子さん、こんにちは (polo181)
2005-08-31 12:44:38
コメントを有難う。実際、このままだと私の頭がどうにかなってしまいます。仕事を見つけました。原作者に申し訳ないほど稚拙な訳文だけれど、誰にも翻訳されていない本だから、私の力で日に当てようと思って。頭を使えば呆けずにすむかなぁ。?
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最高です! (じゃこしかです)
2005-08-31 13:55:12
 polo181さんこんにちは。

poloさんの違った面でのブログ最高です。生意気を云うようですが、これこそpoloさんに相応しいブログであると思います。

 今後が多いに楽しみです。
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じゃこしかさん、こんにちは (polo181)
2005-08-31 14:19:36
コメントを有難う。お褒めを頂いてとても嬉しいです。この前も書きましたが、バークレーは私にとっては特別な存在で、彼がいないと外出もできません。このままでは私が先に参ってしまいそうです。で、考え出したのが、お恥ずかしながら下手な翻訳です。じゃこしかさんほどの文章力がないので、小学生の作文のようになりますが、どうかご勘弁を。
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簡潔で完結 (あまもり)
2005-08-31 16:46:20
完結だったんですか。

足が悪いから、歩けないからと見捨てないで・・・

考えさせられる名作です。

素晴らしいショートショートです。

明日はどんなショートが出てくるんだろ、ワクワク。
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小さい話に大きな感動 (anikobe)
2005-08-31 18:39:25
このお話とても深い意味のある感動的なお話ですね。

農夫の考え方と、貧しい坊やのとった行動。

この坊やこそ、本当の優しさをもって

「ぼく、あっちがいいよ」

と言ったのですね。

優しさと、強く生きることが、坊やの前途を読者に伝えていますね。

このお話を選ばれたpoloさんに
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あまもりさん、こんばんは (polo181)
2005-08-31 21:13:47
コメントを有難う。作者は色々で100余りの短編がB5版のペーパーバックに収められています。ひとつのお話がせいぜい2ページこっきりで終わっています。語り継がれた小話も網羅されていて、著者不明のものもあります。英語独特の難解な部分もありますが、たっぷり時間をかけて翻訳しようと思っています。文学的才能がないので、お恥ずかしいかぎりです。
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anikobeさん、こんばんは (polo181)
2005-08-31 21:21:04
コメントを有難う。乾杯のビールを頂いて恐縮しております。笑 貴女のように文学的才能があれば、少しは感動を与える作品になるのでしょうが、その点は残念です。それでも、著者に失礼の無いように原文に忠実でかつ分かりやすく翻訳しようと思っています。当分の間の仕事が出来ましたので、机に向かっている時間だけでもバークレーのことを忘れることが出来ます。ノイローゼにならなくて済みます。
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