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憲法改正の前にすべきこと

2013-04-30 | 精確!?な政策提案

※朝日新聞記事(平成25年4月27日)

 まだ正式には日程は決まっていませんが、今夏の改選を迎える参議院議員の任期はこの7月28日で満了となりますので、どんなに遅くとも参院選まで残り3ヶ月ありません。この参院選の大きな争点として、既に報道されていますように、憲法改正、特に改正手続きを定めた憲法第96条の要件緩和の是非について問うべきという意見が、最近、政府与党や維新の会等から強く出されています(例えば「自由民主党参議院選挙公約骨格(案)」)。

 私は憲法改正自体を否定するつもりは全くありません。しかし、憲法改正と一言で言っても、考えるべき問題は実に多岐に渡ります。また、言うまでもありませんが、そもそも憲法改正は私達の生活、社会をより良くするための手段、手続きであって、目的ではありません。ところが、96条の問題が出されるときの議論は、改正要件が厳しすぎるから緩和しようという、とにかく改正することを目的とした主張ばかりが目立つように思えてなりません。

 戦後一度も日本国憲法は改正されていないためか、他国の憲法よりも日本国憲法の改正要件は厳しいように思われがちですが、決してそのようなことはありません(※詳しくは、「All About「世界の憲法改正手続比較」」「衆議院「硬性憲法としての改正手続に関する基礎的資料」」等をご参照下さい)。ですから、改正要件よりも改正すべき内容について議論すべきですが、少なくともそうした議論は一部ではされていても、国民的に全体でされているとは言えません。

 また、改正の内容について、特に他国に影響を及ぼす(日本にそのつもりがないとしても他国がそのように理解する)問題について、正に憲法第9条はそうですが、そうした影響も配慮しながら議論しなければなりません。平和や安全保障というものは相対的なもの(例えば、二国関係の場合、一方が相手を危険だと認識すれば二国間の平和は危うくなる)であり、日本の平和を確保するための議論が日本の平和を危うくしては元も子もありません。あるいは、そうした議論により海外で頑張っている日系のデパートや店舗等が害を被るようなことがあっては、正に国益に反する議論だと言うべきでしょう。

 ジェラルド・カーティス教授が記事の中で言うように、憲法改正の前にすべきことは沢山あります。早急にすべきは、「社会保障と税の一体改革」のような、人口減少・高齢化社会の到来を長期的に見据えた議論や新たな制度設計です。また、たとえ全ての国は難しいとしても、いくつかの近隣の国とはより緊密な信頼関係を築かなければ、憲法改正議論は不必要な緊張関係を東アジアにもたらすだけとなるでしょう。

 とにかく、安易かつ性急な憲法改正議論は、国益を害するものです。議論自体はすべきですが、この夏の参院選で結論を出すべきというほど簡単な問題ではないはずです。

日本語の記事の元となっているジェラルド・カーティス教授の英語論文はこちら。日本語の記事はこの英語版の要約となっています。

 お読み下さり、ありがとうございます。


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