私にとっては県議として4年目、今の任期の最終年となる平成26年度が始まりました。2月議会で可決した今年度の県の一般会計予算の総額は、前年度比3.6%増の1兆1802億円で、平成14年度の1兆1920億円に次ぐ、過去10年間では最大規模となっています。
一方、県の「財政の中期見通し」によれば、今年度末の県債残高は過去最多の2兆7303億円に達すると見込まれています。景気は回復基調にあるとは言え、県内経済の先行きは依然として不透明であるだけでなく、将来人口推計が示すように少なくとも今後数十年間は人口減少と高齢化が急速に進むことから、当面は厳しい財政状況が続くことを前提に県政を運営する必要があります。
予算案と同時に示される「財政の中期見通し」では、その試算の前提として、内閣府が試算した経済成長率を用いています。内閣府の試算では、今後の経済が順調に成長した、言わば楽観的なシナリオと、そうではない慎重なシナリオ等、2つ以上のケースを想定しています。過去の県の財政の中期見通しでは、平成21年と22年は、順調回復と底ばい継続の2つのシナリオを、平成23年から昨年までは、内閣府の試算の中でも、より慎重なシナリオを前提に置いてきました。
※平成21年度当初予算財政の中期見通し(一部)
※平成22年度中期見通し(同)
※平成23年度中期見通し(同)
※平成24年度中期見通し(同)
※平成25年度中期見通し(同)
なぜ楽観的な見通しに?
ところが、今年の財政の中期見通しでは、内閣府の、より楽観的な「経済再生ケース」のみを試算の前提にし、税収が大幅に伸びることを想定しています。
※平成26年度中期見通し(同)
基本的な考え方として、財政の見通しを試算する場合には、より慎重で控えめな想定をするべきではないでしょうか。なぜなら、楽観的な経済再生シナリオを前提に試算し計画したものの、経済再生が前提通りに実現しなかった場合、財政再建は更に遠のくこととなりますが、逆に、慎重なケースを前提にし、想定以上の成長が実現した場合には、財政再建計画を前倒しすることが可能になるからです。
ちなみに、大阪府が今年2月に示した「財政状況に関する中長期試算」では、内閣府の、より慎重な「参考ケース」を用いています。またお隣山梨県の「財政の中期見通し」では平成27年度の県税収入については消費税増税に伴う増額分を反映させていますが、平成28年度以降の県税は全く増えないという、実に慎重な前提に基づいて試算を行なっています。
こうした点に加え、更に指摘すべきは、今回の中期見通しが前提としている内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」そのものが、極めて楽観的である点です。例えば、今年1月28日の日本経済新聞のコラム「大機小機」は、この内閣府の試算について「議論の突っ込みどころ満載の資料だ。中でも前提としている経済の姿がかなり楽観的であるのが目に付く」と厳しく批判しています。
※「成長率、「目標」と「前提」は大違い」
(平成26年1月28日 日本経済新聞「大機小機」)
同記事が指摘するように、県の中期見通しが前提としている「経済再生ケース」は、客観的に実現可能な前提というよりも安倍政権が目標とする経済成長率の達成を前提としたものです。「経済再生ケース」では平成25年度から34年度の平均の実質成長率を2.1%としていますが、国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計によれば、平成25年から34年の10年間で、合計440万人以上、約3.5%の人口減少と、約3.1%の生産年齢人口の割合の低下が予想される中で、そうした高い成長率の実現は本当に現実的なのでしょうか。
ちなみに、同記事が紹介している「公益社団法人日本経済研究センター」(理事長は、元日本銀行副総裁で、現在、政府の「「選択する未来」委員会」の会長代理である岩田一政氏)が作成した平成37年度までの「中期経済予測最終報告」では、労働力人口の減少等も織り込んだ結果として、平成23年から27年の平均の実質成長率は1.0%、平成28年から32年は0.9%、平成33年から37年では0.7%となっています。
県では昨年10月に独自の将来人口推計を策定しているのですから、安倍政権の楽観的な見通しを単に鵜呑みにするのではなく、もう一つの「参考ケース」や民間の予測も大いに取り入れながら、人口減少や高齢化の影響も十分に加味した、慎重かつ現実的な中期見通しを、県は改めて示すべきです。加えて、昨年12月議会の一般質問でも提言しましたが、10年以上の長期見通しについても早急に策定すべきです。例えば、大阪府では、独自の「財政運営基本条例」に基づいて、予算審議や計画的な財政運営の参考のために、平成46年までの20年間を見通した中長期試算を行なっています。
2月議会閉会日の討論でこうした点を指摘しました。県当局には、慎重で現実的な中長期見通しに基づいた財政運営を行うよう、引き続き働き掛けていくつもりです。
お読み下さり、ありがとうございます。
一方、県の「財政の中期見通し」によれば、今年度末の県債残高は過去最多の2兆7303億円に達すると見込まれています。景気は回復基調にあるとは言え、県内経済の先行きは依然として不透明であるだけでなく、将来人口推計が示すように少なくとも今後数十年間は人口減少と高齢化が急速に進むことから、当面は厳しい財政状況が続くことを前提に県政を運営する必要があります。
予算案と同時に示される「財政の中期見通し」では、その試算の前提として、内閣府が試算した経済成長率を用いています。内閣府の試算では、今後の経済が順調に成長した、言わば楽観的なシナリオと、そうではない慎重なシナリオ等、2つ以上のケースを想定しています。過去の県の財政の中期見通しでは、平成21年と22年は、順調回復と底ばい継続の2つのシナリオを、平成23年から昨年までは、内閣府の試算の中でも、より慎重なシナリオを前提に置いてきました。
※平成21年度当初予算財政の中期見通し(一部)
※平成22年度中期見通し(同)
※平成23年度中期見通し(同)
※平成24年度中期見通し(同)
※平成25年度中期見通し(同)
なぜ楽観的な見通しに?
ところが、今年の財政の中期見通しでは、内閣府の、より楽観的な「経済再生ケース」のみを試算の前提にし、税収が大幅に伸びることを想定しています。
※平成26年度中期見通し(同)
基本的な考え方として、財政の見通しを試算する場合には、より慎重で控えめな想定をするべきではないでしょうか。なぜなら、楽観的な経済再生シナリオを前提に試算し計画したものの、経済再生が前提通りに実現しなかった場合、財政再建は更に遠のくこととなりますが、逆に、慎重なケースを前提にし、想定以上の成長が実現した場合には、財政再建計画を前倒しすることが可能になるからです。
ちなみに、大阪府が今年2月に示した「財政状況に関する中長期試算」では、内閣府の、より慎重な「参考ケース」を用いています。またお隣山梨県の「財政の中期見通し」では平成27年度の県税収入については消費税増税に伴う増額分を反映させていますが、平成28年度以降の県税は全く増えないという、実に慎重な前提に基づいて試算を行なっています。
こうした点に加え、更に指摘すべきは、今回の中期見通しが前提としている内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」そのものが、極めて楽観的である点です。例えば、今年1月28日の日本経済新聞のコラム「大機小機」は、この内閣府の試算について「議論の突っ込みどころ満載の資料だ。中でも前提としている経済の姿がかなり楽観的であるのが目に付く」と厳しく批判しています。
※「成長率、「目標」と「前提」は大違い」
(平成26年1月28日 日本経済新聞「大機小機」)
同記事が指摘するように、県の中期見通しが前提としている「経済再生ケース」は、客観的に実現可能な前提というよりも安倍政権が目標とする経済成長率の達成を前提としたものです。「経済再生ケース」では平成25年度から34年度の平均の実質成長率を2.1%としていますが、国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計によれば、平成25年から34年の10年間で、合計440万人以上、約3.5%の人口減少と、約3.1%の生産年齢人口の割合の低下が予想される中で、そうした高い成長率の実現は本当に現実的なのでしょうか。
ちなみに、同記事が紹介している「公益社団法人日本経済研究センター」(理事長は、元日本銀行副総裁で、現在、政府の「「選択する未来」委員会」の会長代理である岩田一政氏)が作成した平成37年度までの「中期経済予測最終報告」では、労働力人口の減少等も織り込んだ結果として、平成23年から27年の平均の実質成長率は1.0%、平成28年から32年は0.9%、平成33年から37年では0.7%となっています。
県では昨年10月に独自の将来人口推計を策定しているのですから、安倍政権の楽観的な見通しを単に鵜呑みにするのではなく、もう一つの「参考ケース」や民間の予測も大いに取り入れながら、人口減少や高齢化の影響も十分に加味した、慎重かつ現実的な中期見通しを、県は改めて示すべきです。加えて、昨年12月議会の一般質問でも提言しましたが、10年以上の長期見通しについても早急に策定すべきです。例えば、大阪府では、独自の「財政運営基本条例」に基づいて、予算審議や計画的な財政運営の参考のために、平成46年までの20年間を見通した中長期試算を行なっています。
2月議会閉会日の討論でこうした点を指摘しました。県当局には、慎重で現実的な中長期見通しに基づいた財政運営を行うよう、引き続き働き掛けていくつもりです。
お読み下さり、ありがとうございます。