元祖・静岡県議会議員すずきさとる新聞『すずしん』web版★新しいサイトもご覧下さい!

『新発想でつくろう。豊かな人口減少社会』が合言葉。現在のブログは➡ https://suzukisatoru.net

財政的見通しも示した津波対策を!

2013-09-20 | 精確!?な政策提案

絵に描いた餅になりかねない津波対策

 静岡県は6月27日に「第4次地震被害想定(第一次報告)」と共に「静岡県地震・津波対策アクションプログラム2013」を公表しました。このアクションプログラムは、今回想定されたレベル1の地震(駿河・南海トラフ沿いでは約100~150年に1回程度発生することが予想される大地震)に伴う津波による人的被害(県内で約9千名と想定)を10年間(平成25~34年度)で8割減少させること等を目指し、施設整備や計画策定などを進めようというものです。

 7月26日には、県は、「レベル1津波対策の施設整備による減災効果」を公表しました。レベル1津波対策施設の整備が完了した時の効果ですから、想定上は(つまり津波の危険性が完全に無くなる訳ではない)、レベル1地震に伴う津波の浸水域と津波による人的被害はゼロということになります。あくまでもレベル1対策ですので、レベル2地震(発生頻度は極めて低い(千~数千年に一度?)とされる南海トラフ巨大地震。マグニチュード9(東日本大震災の規模)程度と想定)による津波被害を防ぐことはできません。しかし、津波が乗り越えても倒壊しないように防潮堤を強化すること等により、レベル2地震や津波に対しても減災効果を発揮させることをアクションプログラムは目指しています。

 こうした計画は大変頼もしく見えますし、県としては、県民の不安を和らげるために「減災効果」まで公表したのでしょう。しかし私には無責任な部分もあるように思えてなりません。なぜなら、「対策がいつ完了するのか、そして財政的に実現可能なのか」という目途が示されていないからです。



※建設委員会で、副委員長として質問(平成25年7月30日)


 7月30日の建設委員会でこの点に関し質問しました。今回のプログラムでは、平成34年度末までにという日程は設定されています。具体的には、それまでに、レベル1津波対策施設整備事業(全体で約4千億円)の約半分(22百億円分)を完了させて8割減災を目指すというものですが、これまでに東海地震対策等として津波対策施設に投入してきた総費用は約1215億円ですから、極めて大きい額です。また、その予算の半分は国の補助を予定しています。現政権は「国土強靭化」という名の下に公共事業を大幅に増やしていますが、実際に補助が全額確保できるかは当然未定です。

 また、アクションプログラム全体では10年間で約42百億円掛かるとされ、その大部分は防潮堤、道路等のハード事業です。半額を国が負担したとしても、県だけでも今後毎年2百億円以上費やすことが本当に出来るのかといえば、今のところ、納得できる説明はありません。

 更に先のことを言えば、アクションプログラム2013が10年後に無事に目標を達成したとしても、レベル1津波対策はまだ半分近く残っています。単純に言えば、更に10年間同様の予算を投入すれば完了ということになりますが、県の担当者の答弁は「計算上はそうだが、その見通しは今のところない」ということでした。今後も人口減少に伴う税収減が予想される一方、高度成長期に整備されたインフラ施設の老朽化対策が急務となる状況で、どのように財源を確保するのか、中長期的な試算はされていませんから、10年、20年先の見通しが立たないのは当然です。

 つまり、前述の「レベル1施設の減災効果」がいつ頃から発揮されることになるのか未定であり、現時点では、「絵に描いた餅」になりかねない津波対策と言わざるを得ません。


長期的視点が不可欠

 将来のことはわからないから仕方ないという意見もあるでしょう。しかし、地震被害想定と同様に、政策を決める根拠として、税収減と支出増が最悪どうなるか推計することは可能なはずです。国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計(人口推計は「出生」「死亡」「移動」の3つの変数から計算できるため他の推計に比べ精度が高い)によれば、静岡県の人口は、2025年に約348万人、2035年に約319万人まで減少(そして高齢化)します。そうした人口推計を基にして厳しく予想(税収減と義務的経費増)し、それでも達成可能な、財政的見通しがある計画を立てるべきです。そして、何とか前倒しできるように努力することが、今だけでなく未来に対しても責任ある政策だと考えます。

 新たな施設整備は、その後の維持管理費と数十年後の更新費、言わば、「隠れ借金」を上乗せすることも意味します。一方、沿岸部の人口が大幅に減少した場合、防潮堤を整備しなくても十分に津波に対応できる可能性がでてきます。人命と財産に関わるものですから、地震・津波対策は急ぐべきものは急がなければなりません。同時に、いつ発生するかわかりませんから、地震・津波対策は長期的視点も持って取り組むべきです。

 先ばかり見ていてもきりがありませんが、少なくとも、今あるもの、そしてこれから作るものについて、耐用年数まで必要か、維持管理と次の更新が財政的に可能かどうか十分に見通した上で整備していかなければ、作ったものの、その後の維持管理や更新が財政的にできず、災害発生時に全く機能しなかったということにもなりかねません。既存の考え方に囚われず、長期的に持続可能な政策、システム、インフラを何とかして作り出していくことが、既に莫大な借金を残しつつある私達の、将来の世代に対する最低限の義務であるはずです。

 お読み下さり、ありがとうございます。


最新の画像もっと見る