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積極的に、守り、活かしたい南アルプス

2012-08-18 | 活発!な活動報告
 8月5日から7日の2泊3日の日程で、私も所属する日本高山植物保護協会(JAFPA)の高山植物観察山行に参加し、南アルプスの千枚岳、丸山、鳥森山に行ってきました。JAFPAの皆さんの目当ては高山植物ですが、私の主目的は、シカによる食害の実態と観光資源としての南アルプスの調査です。富士山頂上にまだ登ったことがない私にとっては、初めての登山らしい登山なので、最初はドキドキしながら参加してきました。

 南アルプスの静岡県側、静岡県の天辺である最北端の井川地域一帯は、公有地ではなく特殊東海製紙株式会社の社有林、つまり私有地です。その一部は南アルプス国立公園に指定されていることから、畑薙第一ダムの北にある沼平ゲートの以北は一般車両は通行できません。入山者は、沼平ゲートから歩くか、登山小屋に泊まる方用に無料運行されている東海フォレストもしくは井川観光協会の送迎バスでロッヂや登山口まで行くことができます。今回は、東海フォレストさんによる送迎と案内で、千枚小屋椹島ロッジに宿泊してきました。

 まず目指したのは、千枚小屋です。千枚小屋は、以前の建物が2009年6月に全焼したため、この夏に再建されたばかりの小屋です。小屋自体は県のもので、管理は東海フォレストが行なっています。

 
※千枚小屋写真。右側は千枚岳に向かう登山道からのもの。実際に我々が泊まったのは、すぐ隣にある別の建物でした。


 千枚小屋の周囲には、マルバダケブキの黄色い花が沢山咲いていました。千枚小屋に来る途中でガイドの方から、最近は小屋の工事等があって人も多かったから小屋付近にはシカはあまり姿は見せないが、夜にはシカの鳴き声が時々聞こえたりしますよと伺っていましたので、シカがいるとは言っても、千枚小屋周辺では、食害と言えるような被害はまだないのだろうと最初は思いました。ところがJAFPAの方に尋ねてみると、シカはマルバダケブキを食べないので、マルバダケブキばかり咲いているのは、シカによる採食の影響だろうということでした。一面に緑や花があるからといって、シカの被害がないとは限らないのです。

 
※千枚小屋周辺で見られたマルバダケブキの「お花畑」


 同様に、緑の中をよーく見ると、シカの採食の後はあちこちにありました。

   
※茎の途中から食べられています。左2枚は千枚小屋から下る登山道の途中にて。右二枚は鳥森山への登山道にて。


 また、これらもシカの採食の影響です。

  
※ひょろひょろと背が高い植物は、時代劇でよく出てくる毒草のトリカブトです。シカはトリカブトも食べませんので、トリカブト以外が食べられた結果、トリカブトだけが成長し、周りの背の低い植物は最近になってまた芽が出てきたものだろうということでした。千枚小屋から下る登山道にて。


 さて、いよいよ千枚岳に登ります。JAFPAの会員とはいえ、花の名前や見分け方は全く分からず、名前を教えてもらっても殆ど忘れてしまいましたが、高山植物は厳しい環境で育つせいか、可憐で健気だなあという印象を共通して持ちました。


 
※私が特に気に入った花の一つ。ツメクサの一種(色々種類があるそうですが正確にどれかはわかりません…)。岩を背にすることで強い風雨に耐えながら成長しているような様がいいですね。千枚岳への登山道にて。


 そして千枚岳頂上です。自分にとっては、記念すべき、登山らしい登山での初登頂です。

 
※(左)一緒に登ったJAFPAのグループの皆さんと(右)千枚岳からの風景。この日は雲がやや多目でした。


 翌朝の千枚小屋からの早朝の風景。コンパクトカメラでの撮影ですが、それでもなかなかの景色に見えませんか?

 
※(左)日の出と富士山(右)雲海に浮かぶ富士山。特に外国の方が見たら喜びそうな風景だと思います。


 千枚岳の先にある丸山に向かうため、再び千枚岳を目指します。

 
※(左)千枚岳に向かう途中で見えた雪渓(右)同じ場所でのパノラマ写真。時折雨も降った天気でした。


 千枚岳の先には結構な崖が待ち構えていました。


※自分は正直、恐怖を感じながら下りましたが、登山に慣れているJAFPAの方々はすいすいと下りていきました。


 千枚岳から丸山に向かう途中の尾根では、実に様々な高山植物が花を咲かせていました。

  
※(左)恐らく、ミネウスユキソウ。小学校で習った「エーデルワイス」の花に近い種類のものだそうです。
(中)恐らく、エゾイワツメクサ
(右)何の花だと思いますか?実はトリカブト(何種類かあるそうですが、どれかはよくわかりません)の花です。綺麗な花にはご注意!


 尾根伝いを越えると、丸山が見えてきます。その途中には何とライチョウが!

  
※(左)先に見えるのが丸山
(中)真ん中に見えるのが親のライチョウです。右には子供も。雨模様の天気だとタカやワシのような天敵は飛んでこないので姿を現したんだろうということでした。
(右)ライチョウの親子。全部は写っていませんが子供は6羽ほどいました。人を恐れる気配はありませんでした。


 そしてやっと丸山に到着です。


※ガイド役の東海フォレストの鈴木さんと一緒に。慣れているので軽装です。自分にとっては丸山(標高3032m)がこれまでに登った最高峰です。


 あとは、来た道を戻り、千枚小屋に預けた荷物を取って、椹島ロッジへ向かいます。

 
※(左)千枚小屋から下りる登山道で見つけた花。葉や花の開き方がいいですね。名前は不明です…
(右)椹島ロッジに隣接する南アルプス白籏史朗写真館。山岳写真家の白籏氏は、JAFPAの会長でもあります。


 翌日は鳥森山へ。

 
※(左)実がきれいなのですが、名前は不明です…
(右)葉の形に見覚えありませんか?「葵の紋所」の原型であるフタバアオイです。フタバアオイは文字通り2枚の葉のある植物で、徳川家の「三つ葉葵」は架空のものだそうです。


 途中には再びシカの痕跡があちこちに見られました。

     
※どれもシカによる被害と思われるものです。シカは一度かじってから、木の皮を上にはがそうとするので、細い木にはそうした跡がはっきり残っています。太い木のものは、食害というよりは、オスシカが角をこすりつける剥皮害の跡かもしれません。一番右の木の跡は古いもののようですが、流れ出た樹液は泣いているようにも見えます。


※これはクマの爪跡です。


 そして鳥森山に到着。

 
※(左)鳥森山山頂からの眺め。中央から少し右にある草木が生えていない尖った山が赤石岳だそうです。
(右)中央からすこし右が千枚岳。そこから左に戻れば丸山です。


 長いブログとなりました。私が申し上げたいことはタイトルにあるように2点です。

 1.積極的に守ろう: 今回登った千枚岳・丸山・鳥森山周辺は比較的シカの被害が目立たないところです(だと思います)。既に「お花畑」や貴重な高山植物等が消滅しつつある場所は南アルプスにも何箇所もあり、行政でも防鹿柵を設置するなどの対策を実施していますが、南アルプスを柵だらけにする訳には当然いきません。やはりシカの数を減らさないといけませんが、2千mもの山々に登ってシカを捕獲あるいは狩猟することは容易ではありません。根本的な解決には、従来の対策だけでなく、私も理事を務める日本オオカミ協会が主張するような対策の研究や導入を真剣に考えなければならない段階に既にきてしまっていると考えます。


※アメリカ・イエローストーン国立公園の「ビフォー・アフター」を紹介したイラスト(出典:ナショナル・ジオグラフィック)。詳しくはこちら

 2.積極的に活かそう: 静岡県側の南アルプスは、マイカー規制があることに加え、井川地域までのアクセスが必ずしも容易ではない(※「市内」である私の自宅(静岡駅南口から歩いて10分程)から畑薙第一ダムまで80km余りですが、途中の道が狭いこともあり、車で3時間近く掛かりました)ため、入山者数は限られています。しかしそのことにより、保たれている自然度はかなり高く感じました。登山道等でもゴミらしいゴミは殆ど見かけませんでした。現状の規制は維持しながらも、南アルプスの魅力を、本場のアルプスにも負けない素晴らしさを(スイスに行ったことはありませんが…)、日本国内はもとより海外にアピールできれば、より大きな経済効果も期待できるのではないでしょうか。例えば、まだ行ったことはありませんが、二軒小屋ロッジの新館は山小屋ながらツインルームであるなど、高級感あふれるところ(のよう)です。ただ利用者数に限りがありますので、自然に無理が無い程度に増設したり、あるいは椹島ロッジにも同様の施設を儲け、外国語対応も出来るようにすれば、外国人登山者あるいは観光客も呼び込めるのではないでしょうか。

 私有地ですが、静岡県の誇る貴重な財産でもある南アルプスを、積極的に守り活かしましょう!私も県議会の企画文化観光委員として、色々と考え提案していきたいと思います。

 最後までお読み下さり、ありがとうございます。






 


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