朝のTV情報番組に“ズームインなんとか”ってありますが、そのズームですね。
「映画≠日誌」の映画用語集の解説では、こう書かれています。
<■ ズーム
焦点距離が一ショットの間に変更されるレンズを使ったショット。このレンズの焦点距離は広角から望遠までの範囲が可能である。ズームは時に移動ショットの代わりに使われるが、両者の違いは大きい。>
テレビ放送でも使われるので、どんなものかは皆さんご存じですよね。
あるポイントに迫って行くのをズームイン或いはズームアップ、反対にアップからロングに引いていくのをズームアウトといいます。映画ではシーンの切り替え時に使われることもよくありますね。
今回コレを取り上げたのは、昨日vivajijiさんのブログでデビッド・リーンの「旅情」の1シーンの動画がアップされていて、そこにズームを上手に使った演出があったからです。
「旅情(1955)」はキャサリン・ヘプバーン扮するアメリカのオールドミス、ジェーンが憧れのベニスに休暇でやって来て、思いもかけずイタリアの中年男性レナート(ロッサノ・ブラッツィ)と恋に落ち、彼女に生涯消えないだろう美しい想い出が出来るというほんの数日間の夏の恋物語。動画はそのヒロインが、後に彼氏となる男性と初めて逢うオープン・カフェのシーンです。
サンマルコ広場のカフェ。カメラを片手にお上りさん状態のジェーンがテーブルで飲み物を摂りながら、なおも広場の向こうの建物などをカメラに収めている。彼女の後ろの席には、これもレナートが一人所在なげに酒を飲んでいる。と、目の前のジェーンに彼は気付く。椅子に座ってカメラをアチコチに向けている後ろ姿しか見えないが、スカートから伸びた脚はつい見とれてしまうほど魅力的だった。
上に向けていたカメラを降ろしながら、ふと背後に視線を感じるジェーン。
『えっ、何? 誰か見てる? ・・・』そんな彼女の心の声が聞こえるようなシーン。
ここで、ジェーンの背後をレナートの位置から撮ったアングルのカメラが、ジワッとジェーンにズーム・アップしていきます。 百聞は一見に如かず、まずは動画を観ていただきましょうか。
まさかと思いながらジェーンが後ろに目をやると、案の定見知らぬ男がじっと自分を見ている。慌てるジェーン。動揺を隠すようにサングラスをかけ、勘定を済ませて早々に立ち去ろうとウェイターを呼ぶが・・・。
実に面白い一幕です。
ズームの使い方も完璧なら、ヘプバーンの演技も最高。女を見つめるイタリア男のプレイボーイらしい視線の描き方も、主観カメラはジェーンの脚もとを一度撮すだけなので、それ程イヤらしくなってないのが良い。シーン全体に大人のユーモアと洒落っ気もある。
この次の日、ジェーンは街に買い物に出かけ、立ち寄った骨董屋で又してもレナートに逢うんですな。
人物の心理が緊張状態にあるとか、前頭葉がフル回転しているとか、そんなシーンでズームとか移動ショットを使うと効果的ですね。逆に、そういう状態でない時にズームを使うと説明的になってつまらないショットになったりします。
面白みのないズームの使い手として思い出すのはジョン・シュレシンジャー監督。「真夜中のカーボーイ」、「ダーリング」に数少ないですがズームショットが有り、どちらも説明的とは言いませんが面白みはなかったですネ。
「映画≠日誌」の映画用語集の解説では、こう書かれています。
<■ ズーム
焦点距離が一ショットの間に変更されるレンズを使ったショット。このレンズの焦点距離は広角から望遠までの範囲が可能である。ズームは時に移動ショットの代わりに使われるが、両者の違いは大きい。>
テレビ放送でも使われるので、どんなものかは皆さんご存じですよね。
あるポイントに迫って行くのをズームイン或いはズームアップ、反対にアップからロングに引いていくのをズームアウトといいます。映画ではシーンの切り替え時に使われることもよくありますね。
今回コレを取り上げたのは、昨日vivajijiさんのブログでデビッド・リーンの「旅情」の1シーンの動画がアップされていて、そこにズームを上手に使った演出があったからです。
「旅情(1955)」はキャサリン・ヘプバーン扮するアメリカのオールドミス、ジェーンが憧れのベニスに休暇でやって来て、思いもかけずイタリアの中年男性レナート(ロッサノ・ブラッツィ)と恋に落ち、彼女に生涯消えないだろう美しい想い出が出来るというほんの数日間の夏の恋物語。動画はそのヒロインが、後に彼氏となる男性と初めて逢うオープン・カフェのシーンです。
サンマルコ広場のカフェ。カメラを片手にお上りさん状態のジェーンがテーブルで飲み物を摂りながら、なおも広場の向こうの建物などをカメラに収めている。彼女の後ろの席には、これもレナートが一人所在なげに酒を飲んでいる。と、目の前のジェーンに彼は気付く。椅子に座ってカメラをアチコチに向けている後ろ姿しか見えないが、スカートから伸びた脚はつい見とれてしまうほど魅力的だった。
上に向けていたカメラを降ろしながら、ふと背後に視線を感じるジェーン。
『えっ、何? 誰か見てる? ・・・』そんな彼女の心の声が聞こえるようなシーン。
ここで、ジェーンの背後をレナートの位置から撮ったアングルのカメラが、ジワッとジェーンにズーム・アップしていきます。 百聞は一見に如かず、まずは動画を観ていただきましょうか。
(Katharine Hepburn (Summertime, 1955): First Meeting at the Piazza )
まさかと思いながらジェーンが後ろに目をやると、案の定見知らぬ男がじっと自分を見ている。慌てるジェーン。動揺を隠すようにサングラスをかけ、勘定を済ませて早々に立ち去ろうとウェイターを呼ぶが・・・。
実に面白い一幕です。
ズームの使い方も完璧なら、ヘプバーンの演技も最高。女を見つめるイタリア男のプレイボーイらしい視線の描き方も、主観カメラはジェーンの脚もとを一度撮すだけなので、それ程イヤらしくなってないのが良い。シーン全体に大人のユーモアと洒落っ気もある。
この次の日、ジェーンは街に買い物に出かけ、立ち寄った骨董屋で又してもレナートに逢うんですな。
人物の心理が緊張状態にあるとか、前頭葉がフル回転しているとか、そんなシーンでズームとか移動ショットを使うと効果的ですね。逆に、そういう状態でない時にズームを使うと説明的になってつまらないショットになったりします。
面白みのないズームの使い手として思い出すのはジョン・シュレシンジャー監督。「真夜中のカーボーイ」、「ダーリング」に数少ないですがズームショットが有り、どちらも説明的とは言いませんが面白みはなかったですネ。
その辺になげておいて下さい。(笑)
>大人のユーモアと洒落っ気もある。
それなんですよね~(^ ^)
いささかでも観る側もそれを解する器量を
お持ちでないとこの良さがわからないの。
>・・・・慌てるジェーン。
もう1歩踏み込んでみると
“恋に慣れてないまま”あの年になった彼女の
無防備さが一連の動作によく表されてますね。
ま、映画的わかりやすさとおっちょこちょいの
性格を端的に見せた場面でしょう。実に巧い!
「真夜中」や「ダーリング」以外にも
映画的効果よりも、作り手の独断的表現の
範疇でしかない悪く言えばひけらかし的に
やたら引いたり寄ったりする映画もあの時代に
あったような・・・。
心情に寄り添って撮る。
それとわからせずに自然に撮る。
編集者も職人技でしたよね~。
拙記事ご紹介ありがとうございます。^^
ズームで秀逸だと思ったのは、「失われた週末」冒頭、ニューヨークの街の“パン”から酒びんをズームインするところです。
ですです。
無防備さが観客の笑いを誘い、だけども何処かで応援したい気分にもなる。
7年前に観たままですが、こうして動画を観ると色々と思い出しますねぇ。
コメントありがとうございました。
記憶違いだったら御免なさいです。^^
>偶然、例の骨董品店(商売は別でした)を見つけました。
凄い! それはセットじゃなかったって事ですね。
確かに、本物ならずっと話題になっていたでしょうから、残っているのも分かる気はするけど、それを見つけたまいじょさんが如何に熱心な映画ファンかということですネ
僕はつい昨日(もう夜中なんで)初めて3D眼鏡で『アバター』を観てきたんです。
ブログにも書きましたが、圧倒的な映像と迫力で、大興奮しました。
しかしそれと同時に、自分の頭の中のどこか隅っこの方で、寂しいという感情がベタっと残っていました。
興奮は物語の途中で醒めたのに、その寂しさはずっと残っています。
この↑の動画を見ると、何かヒントを得た気がします。でもまだ悩んどきますけど。
「アバター」観てないので、そちらについては何とも言えませんです。^^
アトラクション的で、あまりの緊張に気分を悪くした観客も各国で出ているとか。
映画は影(2D)で勝負してもらいたいと思いますが、いつかは3Dも観なければとも思っています。
絵画と彫刻くらいの、ある意味別物ではないかと、観てない内から勝手に創造したりして・・・。