(1972/ジョージ・ロイ・ヒル監督/マイケル・サックス、ユージン・ロッシュ、ロン・リーブマン、シャロン・ガンス、ヴァレリー・ペリン、ペリー・キング/103分)
(↓Twitter on 十瑠 から(一部修正あり))
ロイ・ヒル監督の「スローターハウス5」を観る。先日ネット購入したDVD。主人公が過去や未来に本人の意思に関係なく行ったり来たりする話というのは知ってたけど、SFチックな感じは思ったより少なかったな。重要なエピソードは第二次世界大戦中のドレスデン大空襲だった。
[ 9月 12日 以下同じ]
昨日が9.11という事で、My Back Page に「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」を挙げていたけど、まさか今日見た「スローターハウス5」もドレスデンを扱っていたとは。原作がカート・ヴォネガット。村上春樹が好きだって言ってた作家だが、確か短編集を大昔に読んだ気がするな。
「スローターハウス」っていうのは「場」の意味で、ドイツ軍の捕虜となった主人公が元「場」の5号舎に入れられるから後ろに「5」が付いている。
フィルモグラフィーで調べると、ロイ・ヒル監督としては「スティング」の前作にあたる。SFという触れ込みだったけど、雰囲気としては「ガープの世界」に似て、人生を俯瞰で見ているよう。ただ、僕にはまだ真意は掴めていないので、紹介記事は書けないです。
主人公は時間や場所さえも(本人の意思には関係なく)行ったり来たりするんだけど、本当に身体も移っているかといえばそうでもなく、じゃあ意識だけかというとそうでもない(地球以外の星に行く)シーンもあったりして、左脳で考えるとイラつく感じもある。難しく考えない方がいいんだろう。
第二次世界大戦中の過去エピソードと現代が並行して描かれるが、シーンの切り替えにマッチカットが多用されていて、また、次のシーンの音を先行して流したりするテクニックが使われて懐かしい感じがした。編集はデデ・アレンという女性。「スラップ・ショット」、「レッズ(1981)」など。
「スローターハウス5」2回目を観る。初見後、作者が描きたかった事を色々考えたがよく分からなかった。『万事塞翁が馬』的な事かと考えたりしたが2回目を観て違うと思った。もっと積極的な思想があるんだろうが、はっきりしない。勿論言葉にも出来ない。多分原作を読んでも明確に掴むのは無理だな。
[ 9月 16日 以下同じ]
映画的テクニックはやはりマッチカットの巧さが光る。オーバーラップや音を先行させるのも結局はマッチカットの効果を狙っているわけだ。一般映画ファンにはなんてことないかも知れないが、マニアックなファンにはお薦めしたい作品だな。
ストーリーは第二次世界大戦での出来事と、主人公の人生のふり返りを並行している。ただ、戦争体験は時系列なのに、ファミリーヒストリーが時系列じゃないのが昨今の時間軸操作の先駆け的で興味深い。
ここからは備忘録。まずは、主人公の人生を時系列に直しておきます。
ビリー・ピルグリムは優しい母親と厳しい父親に育てられた。父親との思い出は、まだ泳げない幼い頃に水着も着てないままにプールに投げ込まれた事くらい。
検眼士の専門学校に行ったのは自分の意志で、他人の役に立つし需要が多いと見込んだからだが、この考え方は後に捕虜収容所であった大学教授のダービーに懸命な生き方だと誉められた。
戦争から帰ると、検眼士専門学校の経営者でもある実業家の娘バーバラと結婚した。彼女からのアプローチだ。
一男一女に恵まれたが、息子は若い頃は親に反抗的だった。
バーバラの父親は、当初ビリーには期待してなかったが、やがて認めるようになりビリーも右腕として有能ぶりを発揮した。
ある時、チャーター機で仕事に向かうも離陸して25分で墜落。義父は亡くなったが事故を予知していたビリーだけが奇跡的に助かった。
その事故を聞いたバーバラは動転したまま車を運転し、あちこちで交通事故。ビリーが搬送された病院になんとか着くも、壊れた排気管の影響で車内に充満した一酸化炭素を吸って数時間後に亡くなってしまう。
娘夫婦は退院したビリーを引き取ろうとするが、彼はひとり妻のいない家に戻る。迎えてくれたのは愛犬のスポットだけだった。
その夜、宇宙の彼方からやって来た光の玉に包まれたビリーは、スポットと共にトラルファマドール星にさらわれる。
何故か他のシーンでは意識だけが時空を超えているようなのに、異星にさらわれるシーンでは身体ごと移動している。よく分からんですな。
もう一つのドレスデン空襲に遭遇するまでのエピソードは時系列なのであえて書きません。出演者の紹介の中で部分的に触れていきましょう。
ユージン・ロッシュは捕虜収容所で知り合う大学教授のダービー。素直な性格のビリーを息子のように気にかけてくれる男だが、ドレスデン空襲の後片付けの時にドイツ兵に誤解を受けて無慈悲な最期を迎える。
捕虜となった彼らがドレスデンに移送が決まった後、列車で訪れた歴史あるその街は美しい彫刻があちこちに施され(BGMはクラシックの旋律)、一般市民が見守る中ビリーたちが行進するシーンを見ながら、この後の惨劇を想像させて悲しい気分になってしまいました。
「ホット・ロック」が印象深いロン・リーブマンは、ビリーが捕虜になるときに一緒だったラザロ。もう一人一緒に捕虜となった男の死をビリーのせいだと思い込み復讐に燃え続ける男。後年、有名になったビリーの講演中にも銃を持って現れます。
この後の「レニー・ブルース (1974)」で主演オスカーにノミネートされたヴァレリー・ペリンはポルノ女優のモンタナ役。ビリーのお相手としてトラルファマドール星にやって来る女性であります。
お勧め度は、僕の理解度が足りないので★三つ(一見の価値あり)。ただ、映画テクニック的に素晴らしいのでコアな映画ファンにはお薦めしたい★四つという所。
カンヌ国際映画祭でパルム・ドール候補となり、ジョージ・ロイ・ヒル監督が審査員賞を受賞したそうです。
(↓Twitter on 十瑠 から(一部修正あり))
ロイ・ヒル監督の「スローターハウス5」を観る。先日ネット購入したDVD。主人公が過去や未来に本人の意思に関係なく行ったり来たりする話というのは知ってたけど、SFチックな感じは思ったより少なかったな。重要なエピソードは第二次世界大戦中のドレスデン大空襲だった。
[ 9月 12日 以下同じ]
昨日が9.11という事で、My Back Page に「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」を挙げていたけど、まさか今日見た「スローターハウス5」もドレスデンを扱っていたとは。原作がカート・ヴォネガット。村上春樹が好きだって言ってた作家だが、確か短編集を大昔に読んだ気がするな。
「スローターハウス」っていうのは「場」の意味で、ドイツ軍の捕虜となった主人公が元「場」の5号舎に入れられるから後ろに「5」が付いている。
フィルモグラフィーで調べると、ロイ・ヒル監督としては「スティング」の前作にあたる。SFという触れ込みだったけど、雰囲気としては「ガープの世界」に似て、人生を俯瞰で見ているよう。ただ、僕にはまだ真意は掴めていないので、紹介記事は書けないです。
主人公は時間や場所さえも(本人の意思には関係なく)行ったり来たりするんだけど、本当に身体も移っているかといえばそうでもなく、じゃあ意識だけかというとそうでもない(地球以外の星に行く)シーンもあったりして、左脳で考えるとイラつく感じもある。難しく考えない方がいいんだろう。
第二次世界大戦中の過去エピソードと現代が並行して描かれるが、シーンの切り替えにマッチカットが多用されていて、また、次のシーンの音を先行して流したりするテクニックが使われて懐かしい感じがした。編集はデデ・アレンという女性。「スラップ・ショット」、「レッズ(1981)」など。
「スローターハウス5」2回目を観る。初見後、作者が描きたかった事を色々考えたがよく分からなかった。『万事塞翁が馬』的な事かと考えたりしたが2回目を観て違うと思った。もっと積極的な思想があるんだろうが、はっきりしない。勿論言葉にも出来ない。多分原作を読んでも明確に掴むのは無理だな。
[ 9月 16日 以下同じ]
映画的テクニックはやはりマッチカットの巧さが光る。オーバーラップや音を先行させるのも結局はマッチカットの効果を狙っているわけだ。一般映画ファンにはなんてことないかも知れないが、マニアックなファンにはお薦めしたい作品だな。
ストーリーは第二次世界大戦での出来事と、主人公の人生のふり返りを並行している。ただ、戦争体験は時系列なのに、ファミリーヒストリーが時系列じゃないのが昨今の時間軸操作の先駆け的で興味深い。
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ここからは備忘録。まずは、主人公の人生を時系列に直しておきます。
ビリー・ピルグリムは優しい母親と厳しい父親に育てられた。父親との思い出は、まだ泳げない幼い頃に水着も着てないままにプールに投げ込まれた事くらい。
検眼士の専門学校に行ったのは自分の意志で、他人の役に立つし需要が多いと見込んだからだが、この考え方は後に捕虜収容所であった大学教授のダービーに懸命な生き方だと誉められた。
戦争から帰ると、検眼士専門学校の経営者でもある実業家の娘バーバラと結婚した。彼女からのアプローチだ。
一男一女に恵まれたが、息子は若い頃は親に反抗的だった。
バーバラの父親は、当初ビリーには期待してなかったが、やがて認めるようになりビリーも右腕として有能ぶりを発揮した。
ある時、チャーター機で仕事に向かうも離陸して25分で墜落。義父は亡くなったが事故を予知していたビリーだけが奇跡的に助かった。
その事故を聞いたバーバラは動転したまま車を運転し、あちこちで交通事故。ビリーが搬送された病院になんとか着くも、壊れた排気管の影響で車内に充満した一酸化炭素を吸って数時間後に亡くなってしまう。
娘夫婦は退院したビリーを引き取ろうとするが、彼はひとり妻のいない家に戻る。迎えてくれたのは愛犬のスポットだけだった。
その夜、宇宙の彼方からやって来た光の玉に包まれたビリーは、スポットと共にトラルファマドール星にさらわれる。
何故か他のシーンでは意識だけが時空を超えているようなのに、異星にさらわれるシーンでは身体ごと移動している。よく分からんですな。
もう一つのドレスデン空襲に遭遇するまでのエピソードは時系列なのであえて書きません。出演者の紹介の中で部分的に触れていきましょう。
ユージン・ロッシュは捕虜収容所で知り合う大学教授のダービー。素直な性格のビリーを息子のように気にかけてくれる男だが、ドレスデン空襲の後片付けの時にドイツ兵に誤解を受けて無慈悲な最期を迎える。
捕虜となった彼らがドレスデンに移送が決まった後、列車で訪れた歴史あるその街は美しい彫刻があちこちに施され(BGMはクラシックの旋律)、一般市民が見守る中ビリーたちが行進するシーンを見ながら、この後の惨劇を想像させて悲しい気分になってしまいました。
「ホット・ロック」が印象深いロン・リーブマンは、ビリーが捕虜になるときに一緒だったラザロ。もう一人一緒に捕虜となった男の死をビリーのせいだと思い込み復讐に燃え続ける男。後年、有名になったビリーの講演中にも銃を持って現れます。
この後の「レニー・ブルース (1974)」で主演オスカーにノミネートされたヴァレリー・ペリンはポルノ女優のモンタナ役。ビリーのお相手としてトラルファマドール星にやって来る女性であります。
お勧め度は、僕の理解度が足りないので★三つ(一見の価値あり)。ただ、映画テクニック的に素晴らしいのでコアな映画ファンにはお薦めしたい★四つという所。
カンヌ国際映画祭でパルム・ドール候補となり、ジョージ・ロイ・ヒル監督が審査員賞を受賞したそうです。
・お薦め度【★★★★=コアな映画ファンの友達にも薦めて】
>個人的な解釈
なるほど。
原作を読めばヒントがあるかも知れませんが、僕の予想としては更に原作の解釈本も読まないとスッキリしない感じがして、先に進むかどうか躊躇しています。
宵乃さんの意見は一つの合点がいく解釈ですね。その視点でもう一度見るのも有りかな。
個人的な解釈としては、時空移動に見えるのは戦後のPDSDで過去を追体験していて、異星に行っているシーンは、妻を亡くしたショックで夢の世界に行ってしまったのかなと思いました。そして夢の世界でもフラッシュバックは続いていて…。
変わった戦争ものという感じでしたね~。