(2004/監督・共同脚本:井筒和幸/塩谷瞬、高岡蒼佑、沢尻エリカ、楊原京子、尾上寛之、真木よう子、小出恵介、波岡一喜、オダギリジョー、光石研、加瀬亮、キムラ緑子、余貴美子、大友康平、前田吟、笑福亭松之助、ぼんちおさむ、笹野高史、松澤一之/119分)
日本における戦後最大のヒット曲は1976年に発売された「♪およげたいやきくん」だが、それまでの記録を持っていたのがザ・フォーク・クルセダーズの「♪帰ってきたヨッパライ」だった。68年に発売された「♪帰ってきたヨッパライ」は早回しを使ったコミカルな歌で、生では出せない歌声なのでTVではマリオネットの人形が唄ったりした。
その後、フォークル(=ザ・フォーク・クルセダーズ)は前作とうって変わって叙情的なメロディーの曲を出す。ところが、このシングル第2弾はアッという間に発売中止になり、テレビは勿論、ラジオでさえも放送されなくなった。中止の理由は、元歌が北朝鮮の曲だったから。
タイトルは「♪イムジン河」。「パッチギ!」の主題曲である。
映画の公開に前後して三十数年ぶりに聞くことができた。懐かしかった。
音楽担当は元フォークルの加藤和彦。当時、奈良の高校生だった井筒監督にも思い出深い楽曲ばかりだと思うが、映画の中でも非常に効果的な使われ方をしていて、このオジさんも(←私のことであります^^)終盤でオダギリ・ジョーが唄う「♪悲しくてやりきれない」、塩谷瞬扮する康介がラジオの勝ち抜き歌合戦で唄う「♪イムジン河」が流れるシーンでは、2度見て2度とも泣いてしまいました。
三つ、或いは四つのシークエンスをカットバックを使って上手く構成したこのシーンは、歌の効果もあって感動もの。昭和40年代にティーンエイジャーだったオジさん、オバさん向けに、お薦め度★一個おまけいたしました。
「パッチギ!」は1968年の京都が舞台。
「♪イムジン河」の作詞者である松山猛氏の原案による物語との事で、主役の高校生の名前が“松山”康介だから、ご本人の体験談が元になっているのでしょう。
修学旅行で京都に来ている九州の男子高校生が当地の朝鮮高校の女生徒をからかい、それを聞きつけた男子朝高生が大挙して押しかけ、件の男子高校生を殴り修学旅行のバスを横転させるという事件が発生する。たまたま通りかかり事件に巻き込まれた康介は、そこで可愛い朝鮮高校の女生徒キョンジャ(沢尻)に出逢い、惹かれる。
新聞沙汰になったこの事件を嘆いた革命かぶれの康介の担任(光石)は、朝鮮高校との親善サッカー試合を提案し、康介を試合申し込みの使者に指名する。友人と朝高へ出向いた康介は、ブラスバンドでフルートを吹いているキョンジャと再会し、バンドが演奏していた美しい曲にも聴き入ってしまう。それが「♪イムジン河」だった。
南北に国を分断された朝鮮半島で、イムジン河の北、北朝鮮の人々が河の南にある故郷を想って唄った曲だという。この映画では、日本人と朝鮮人との溝を憂うものになっている。
キョンジャとの再会後、楽器店にギターを買いに来た康介は、そこで大学生坂崎(オダギリ)に会い、ブラスバンドが演奏していた曲が「♪イムジン河」である事、フォークルのレコードが発売されたがすぐに中止になったことなどを教えてもらう。坂崎にギターを習い、フォークルのコンサートが近々あることを聞き、思い切ってキョンジャを誘ってみるが、当日は自分たちのコンサートがあるからと断られる。
キョンジャのコンサートは本当はウソで、そこはキョンジャの兄アンソン(高岡)の送別会の場所だった。ギターを抱えてやって来た康介はキョンジャと「♪イムジン河」を合奏し、朝鮮の大人達とも話が出来るようになるのだが・・・。
タイトルの“パッチギ”とは<ハングル語で“突き破る、乗り越える”という意味。また“頭突き”の意味も持つ。>とのこと。
キョンジャの兄が朝高の番長で、日夜、日本の“花の応援団”連中とドツキアイを続けていて、報復の連鎖が何度かあった後、終盤での日本の関西連合との賀茂川での乱闘がクライマックスになっている。暴力シーンが多いので、映倫ではPG-12指定。
ケンカのシーンはドタバタコメディに近いですがね。
▼(ネタバレ注意)
前述した泣けたシーンの中でも特に印象的だったショット。オダギリの「♪悲しくてやりきれない」が流れるシーンだ。
アンソンの後輩がケンカ絡みの交通事故で亡くなり、その葬式の夜のこと。既に友達になっていた康介も出席するが、つまらない失敗を犯し、朝鮮人の大人に『日本人は帰れ』となじられる。キョンジャも声をかけることが出来ず、康介は一人ギターを抱えて日本人街へ帰っていく。一方、アンソンたちは弔い合戦をやろうと仲間を集め始める。
そんな中、街を走る夜のバスの中で、アンソンの子供を宿した桃子(楊原)が最後尾の座席で破水してしまう。『堪忍して』とお腹の赤ん坊に声をかける桃子。そして、そのバスの横を車に乗ったアンソン等が雄叫びを挙げながらケンカに向かっている・・・。
このバスの中で痛みをこらえる桃子と、何も知らずにその横を通り過ぎるアンソンのショットは生きることの辛さや哀しみを感じさせる強烈なものでした。
朝鮮からの帰り道、ラジオの歌合戦に出るために持ってきたギターを、橋の上で泣きながら壊してしまう康介の姿もやるせない。葬式会場のすぐ外では、そんな康介を想ってキョンジャも泣いている。
▲(解除)
初めて見た井筒作品で、脚本(共同脚本:羽原大介)も書いているせいか、俳優達の関西弁の台詞回しがTVでの監督の印象通りなのが笑えます。
「てなもんや三度笠」、「三匹の侍」、「♪困っちゃうな」、「♪アンコ椿は恋の花」、グループ・サウンズ、ベトナム戦争、キング牧師、フリーセックス、大橋巨泉、11PM、平凡パンチ、学生運動、ヒッピー・・・etc
時代色がよ~く出ています。
2005年度日本アカデミー賞では、作品賞と監督賞、脚本賞にノミネート。関西弁に親近感があって、「ALWAYS 三丁目の夕日」より面白かったなぁ。
ネット情報によると、「♪悲しくてやりきれない」は、発売中止になった「♪イムジン河」のコード進行を逆走する事で生まれたメロディーとのことでした。
尚、私が通った高校のある街にも朝鮮高校を含めて四つの高校がありましたが、この映画のような抗争は聞いたことがありません。
日本における戦後最大のヒット曲は1976年に発売された「♪およげたいやきくん」だが、それまでの記録を持っていたのがザ・フォーク・クルセダーズの「♪帰ってきたヨッパライ」だった。68年に発売された「♪帰ってきたヨッパライ」は早回しを使ったコミカルな歌で、生では出せない歌声なのでTVではマリオネットの人形が唄ったりした。
その後、フォークル(=ザ・フォーク・クルセダーズ)は前作とうって変わって叙情的なメロディーの曲を出す。ところが、このシングル第2弾はアッという間に発売中止になり、テレビは勿論、ラジオでさえも放送されなくなった。中止の理由は、元歌が北朝鮮の曲だったから。
タイトルは「♪イムジン河」。「パッチギ!」の主題曲である。
映画の公開に前後して三十数年ぶりに聞くことができた。懐かしかった。
音楽担当は元フォークルの加藤和彦。当時、奈良の高校生だった井筒監督にも思い出深い楽曲ばかりだと思うが、映画の中でも非常に効果的な使われ方をしていて、このオジさんも(←私のことであります^^)終盤でオダギリ・ジョーが唄う「♪悲しくてやりきれない」、塩谷瞬扮する康介がラジオの勝ち抜き歌合戦で唄う「♪イムジン河」が流れるシーンでは、2度見て2度とも泣いてしまいました。
三つ、或いは四つのシークエンスをカットバックを使って上手く構成したこのシーンは、歌の効果もあって感動もの。昭和40年代にティーンエイジャーだったオジさん、オバさん向けに、お薦め度★一個おまけいたしました。
「パッチギ!」は1968年の京都が舞台。
「♪イムジン河」の作詞者である松山猛氏の原案による物語との事で、主役の高校生の名前が“松山”康介だから、ご本人の体験談が元になっているのでしょう。
修学旅行で京都に来ている九州の男子高校生が当地の朝鮮高校の女生徒をからかい、それを聞きつけた男子朝高生が大挙して押しかけ、件の男子高校生を殴り修学旅行のバスを横転させるという事件が発生する。たまたま通りかかり事件に巻き込まれた康介は、そこで可愛い朝鮮高校の女生徒キョンジャ(沢尻)に出逢い、惹かれる。
新聞沙汰になったこの事件を嘆いた革命かぶれの康介の担任(光石)は、朝鮮高校との親善サッカー試合を提案し、康介を試合申し込みの使者に指名する。友人と朝高へ出向いた康介は、ブラスバンドでフルートを吹いているキョンジャと再会し、バンドが演奏していた美しい曲にも聴き入ってしまう。それが「♪イムジン河」だった。
南北に国を分断された朝鮮半島で、イムジン河の北、北朝鮮の人々が河の南にある故郷を想って唄った曲だという。この映画では、日本人と朝鮮人との溝を憂うものになっている。
キョンジャとの再会後、楽器店にギターを買いに来た康介は、そこで大学生坂崎(オダギリ)に会い、ブラスバンドが演奏していた曲が「♪イムジン河」である事、フォークルのレコードが発売されたがすぐに中止になったことなどを教えてもらう。坂崎にギターを習い、フォークルのコンサートが近々あることを聞き、思い切ってキョンジャを誘ってみるが、当日は自分たちのコンサートがあるからと断られる。
キョンジャのコンサートは本当はウソで、そこはキョンジャの兄アンソン(高岡)の送別会の場所だった。ギターを抱えてやって来た康介はキョンジャと「♪イムジン河」を合奏し、朝鮮の大人達とも話が出来るようになるのだが・・・。
タイトルの“パッチギ”とは<ハングル語で“突き破る、乗り越える”という意味。また“頭突き”の意味も持つ。>とのこと。
キョンジャの兄が朝高の番長で、日夜、日本の“花の応援団”連中とドツキアイを続けていて、報復の連鎖が何度かあった後、終盤での日本の関西連合との賀茂川での乱闘がクライマックスになっている。暴力シーンが多いので、映倫ではPG-12指定。
ケンカのシーンはドタバタコメディに近いですがね。
▼(ネタバレ注意)
前述した泣けたシーンの中でも特に印象的だったショット。オダギリの「♪悲しくてやりきれない」が流れるシーンだ。
アンソンの後輩がケンカ絡みの交通事故で亡くなり、その葬式の夜のこと。既に友達になっていた康介も出席するが、つまらない失敗を犯し、朝鮮人の大人に『日本人は帰れ』となじられる。キョンジャも声をかけることが出来ず、康介は一人ギターを抱えて日本人街へ帰っていく。一方、アンソンたちは弔い合戦をやろうと仲間を集め始める。
そんな中、街を走る夜のバスの中で、アンソンの子供を宿した桃子(楊原)が最後尾の座席で破水してしまう。『堪忍して』とお腹の赤ん坊に声をかける桃子。そして、そのバスの横を車に乗ったアンソン等が雄叫びを挙げながらケンカに向かっている・・・。
このバスの中で痛みをこらえる桃子と、何も知らずにその横を通り過ぎるアンソンのショットは生きることの辛さや哀しみを感じさせる強烈なものでした。
朝鮮からの帰り道、ラジオの歌合戦に出るために持ってきたギターを、橋の上で泣きながら壊してしまう康介の姿もやるせない。葬式会場のすぐ外では、そんな康介を想ってキョンジャも泣いている。
▲(解除)
初めて見た井筒作品で、脚本(共同脚本:羽原大介)も書いているせいか、俳優達の関西弁の台詞回しがTVでの監督の印象通りなのが笑えます。
「てなもんや三度笠」、「三匹の侍」、「♪困っちゃうな」、「♪アンコ椿は恋の花」、グループ・サウンズ、ベトナム戦争、キング牧師、フリーセックス、大橋巨泉、11PM、平凡パンチ、学生運動、ヒッピー・・・etc
時代色がよ~く出ています。
2005年度日本アカデミー賞では、作品賞と監督賞、脚本賞にノミネート。関西弁に親近感があって、「ALWAYS 三丁目の夕日」より面白かったなぁ。
ネット情報によると、「♪悲しくてやりきれない」は、発売中止になった「♪イムジン河」のコード進行を逆走する事で生まれたメロディーとのことでした。
尚、私が通った高校のある街にも朝鮮高校を含めて四つの高校がありましたが、この映画のような抗争は聞いたことがありません。
・お薦め度【★★★★=フォークル世代の皆さん、友達にも薦めて】
一番惹かれた場面でありました。
井筒がメジャーになった「ガキ帝国」という作品をもっときちんと作り直した内容と言っても良いでしょうが、「岸和田少年うんたら」という作品もあるように、相当喧嘩好きの御仁ですわいな。
ネット情報では、井筒監督は黒澤やチャップリンを貶したとか。鑑賞者としての感覚が良く分からないので、「ウエスト・サイド」についてもどう思っているのか、はなはだ疑問ですが・・・。
終盤の演出は力強いものでしたし、生意気とか言う噂のエリカちゃんも、好印象の演技でした。
黒澤がくどいのは確かで、部分的に賛同できるのですが、かと言ってラスト一つを以って全体の評価を大きく下げるのはどうですかね。
チャップリンについては解りませんが、井筒は芸術派ではないので、やはり押し付けがましさではないでしょうか。貧乏人の描き方が極端だとか?
一つ前の「ゲロッパ!」は珍妙なセミ・ミュージカル的な作りですから、ミュージカルと喧嘩に関心があるらしいこと。
それ以上に、「ウエスト・サイド」のカットバックにあれだけそっくりだと、パクリかオマージュしか考えられないのですが。
皆さんは物語が似ていると言いますが、私はそう感じなかった。寧ろあのカットバックの扱いがそっくりだなあと思ううちに、そう言えば話も似ているね、という感じなのでした。^^;
井筒監督らしいですな。
関西人の“平たい表現”を好む性格がモロ出た感じです。
黒澤と言えば、昔「酔いどれ天使」を見た時に、三船扮するヤクザが夢の中で棺桶に入っている自分を見るというシーンがあって、その数年前に見ていた「野いちご」にそっくりだなぁと思いましたが、後で製作年を調べるとベルイマン作品の方が10年程後でした。
ベルイマンが参考にしたのか、それとも偶然か?
または、二人が参考にするようなもっと旧い作品があったのか?
オカピーさんは何かご存じでしょうか?
「野いちご」のそのシーンを見た時は、ダリの絵を見ている感覚にもなりましたが・・・。^^
井筒の作品は「かなり観てます」が、これまでの印象は「かなり悪い」です。井筒が黒澤やチャップリンに何を言おうと構わないのですが、「あんたの作品はどうなの?」と、問い返したくなっちゃいますよね(汗)
でも、本作は痛快でしたね。
やれば出来るじゃん! っていうのはプロフェッサーの評価と同じであります(笑)
やはり過去の作風と同じで、センスが悪いドタバタで笑うに笑えないシーンもありますが、作品トータルで観れば、さほど気にもなりませんでした。むしろ、演出の工夫に唸らされる方がずっと多い秀作です。
ご指摘のカットバック。ああした使い方は、実に効果的でしたね。
「イムジン河」にしても「悲しくてやりきれない」も、私の世代ではありませんが、その経緯などについては以前から知っておりました。
加藤和彦というと、私の世代ではミカ・バンドの「トノバン」って印象になりますけど(笑)
気付きませんでした。(汗)
井筒映画はこれ以外見たこと無いですが、今の所、これ以上を期待しない方がいいと言うことですね。ラジャッ!
ミカ・バンドの頃は全然聴いてないですね。
最近、木村カエラちゃんが参加しているのはTVで聴きました♪
井筒は・・・もういいので(笑)
歴代ミカの中でも、木村カエラが一番キュートで、
歌も上手いんじゃないか・・・
と、私は思っちゃいました~(笑)
ちょっと、待って下さい。
でも・・・
「フラガール」は蒼井優ちゃんのおへそが見れるんですよね