「ハリケーン違いも甚だしいぞ>デニス」
無実の罪で投獄されたプロボクサー、ルービン・ハリケーン・カーターの実話を元にした作品。
この映画をブラック・ムービーの範疇に入れて良いのかどうかはわからないけれど、黒人差別を中心に据えている確実だ。
まず何よりも、ミドル級のボクサーの身体を作り上げたデンゼル・ワシントンに拍手。
そして、ボクサーのハリケーンと、投獄されて老いたハリケーンの「眼」の演技は凄まじかった。
役者って眼だけでも演技が出来るのだな、と改めて感心させられた。
映画は前半はハリケーンの半生を綴り、後半はハリケーン釈放のためにカナダ人の有志が立ち上がるというもの。
前半のハリケーンの半生は、黒人差別そのものであり、ハリケーンが完全にメインとなっている。
ストーリーについては本作を観ていただくとして、こういった歴史的背景を背負っているからこそ、ブラックムービー(あえてブラックムービーと解釈する)の「重さ」を実感するだろうな、と思った。
でも、残念ながら私のような日本人には、この「重さ」を実感することはできない、勉強することはできても。
ただ単に「デンゼル・ワシントン、スゲー!」じゃなくて、何がデンゼル・ワシントンに凄みをもたらしているのか……それを理解することはできても、実感することは現状では不可能なのだろうな……
文化と歴史ってのは重たいもんです。
んで、後半に入ってハリケーンのえん罪を証明し、ハリケーン釈放のために奔走するカナダ人有志の活躍が描かれるのだが、けっこうあっさりとしていたのは拍子抜け。
まあ、ここにまで史実を盛り込み詳細に検証していったら、尺がどんなにあっても足りないから仕方がないのか。
(『マルコムX』ぐらいに尺を持たせてもらえればね……)
そして、感動のラストを迎えるわけだが…
ここで一つだけ、言っておきたい。
「合衆国の正義」を振りかざすのはまことにけっこうだけど、どうせならハリケーンを冤罪に追いやった白人たちの末路も、同時に描いてほしかったな。
いや、それをやっちゃうと後味が悪くなるのはわかっているけれど、やっぱり「正義」の名の下にハリケーンが釈放されたわけなのだから、「正義」の名の下において不埒な白人がどのような処罰を受けたのかも見てみたかった。
この部分だけが、不満らしい不満である。
映画そのものは面白い。
久しぶりに、映画そのものに入り込んで時間を忘れて観られた映画であった。
『ザ・ハリケーン』(ビデオ)
監督:ノーマン・ジュイソン
出演:デンゼル・ワシントン、ヴィセラス・レオン・シャノン、デボラ・カーラ・アンガー、リーヴ・シュレイバー、ジョン・ハナー、他
評価:8点
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