十返舎一九(じっぺんしゃいっく)
「東海道中膝栗毛」の作者
弥次郎兵衛と喜多八が江戸を出発し 途中滑稽な失敗を続けて
東海道を旅をするという おなじみの「やじきた道中記」の成功で
文名を高めた 超売れっ子の流行作家。
先生 こんなところでよろしいでしょうか。
なんでしたら 女たらしだとか 金にきたないとか書いておきましょうか?
余計なことは書くんじゃない!
はいはいわかりました
この男 名前を月虫(げっちゅう)という。
江戸では評判の根付師。夕七ッ(午後4時)になると 手ぬぐい
ぶらさげて銭湯にでかけてしまう。
「おや月虫さん もう仕事は仕舞いなのかい」
「この時期は日が沈むのが早くていけませんね 細かい仕事なもの
で日中しか仕事になりませんや」
「そんな眼鏡をつけていてもだめなのかね」
長屋では怠け者だと言われている月虫さんの作った根付が 200年後
大英博物館秘蔵の日本の文化として展示されようとは 月虫さんは
もちろん 長屋の誰一人として思いもしませんでした。
もし大英博物館にでかけることがあったら 日本のコーナーに2.000個
ほど展示してある根付の中に ひと際素晴らしい月虫さんの根付を観る
ことができますよ
なぁんて 偉そうに書きましたがアタシは大英博物館ってとこには行っ
たことがないんですよ
ほんとうは物知りの兄ー兄ーさん 根付はココをクリックしてください
末吉 お前はいくつになった?
十六か おまえ年上の女をどう思う?
ふ~ん 女は八っくらい年上が好きですだって?
さぁ ダンゴをもっとお食べよ
太った女は嫌いかい?
女は少々太めの方が抱き心地がいいですだって?
お前少しませてないか
ねえ 末吉きょうはお琴の稽古を休んでさぁ
うなぎでも食べに行こうか
お前がだまってりゃ お母ぁさんにはわかりゃしないよ
旦那は婿に行くのだけははやめろって言ったけど おいらは
この伊勢屋の一人娘お梅お嬢さんの婿になるのだ!
八っも年上だけど デブでブスチビだけど おいらは我慢して
婿になるのだ!
と 心に決めた冬の朝です
この伊勢屋の一人娘お梅お嬢さんの婿になるのだ!
八っも年上だけど デブでブスチビだけど おいらは我慢して
婿になるのだ!
と 心に決めた冬の朝です
江戸の市中に時を知らせる鐘は 日本橋本石町にありました。
その後 江戸の市街地が広がり日本橋の鐘だけでは聞こえない地域が
でたため上野 浅草 芝 赤坂 目白 市ヶ谷 四谷などの寺院の鐘も
時を知らせるようになりました。
鐘つき人(という職業があります)は24時間待機して2時間おきに鐘を打つ。
今朝も日の出の明け六ッ(午前6時)の鐘を打って朝の食事です。
鐘のつきかたは明け六ッならば六回つくのだが みんなの注意をひくた
めに捨て鐘といってその前に三ッついたので 合計九回鳴りました。
きょうはとても真面目なコメントになってしまいました。
まぁ たまにはいいですよね
末吉や お前に云っておくがどんなにいい話でも婿にだけは行っちゃ
いけませんよ!
それも大店のひとり娘の婿だけは ぜったいにやめておきなさい!
わたしは世間では伊勢屋の旦那で通っていますが 奥ではいまだに
婿ですからね
さっきは花バサミで大事なところをちょん切られるんじゃないかと
身ぶるいしましたよ
これ末吉 なにを笑っているんです
いけませんよ!
それも大店のひとり娘の婿だけは ぜったいにやめておきなさい!
わたしは世間では伊勢屋の旦那で通っていますが 奥ではいまだに
婿ですからね
さっきは花バサミで大事なところをちょん切られるんじゃないかと
身ぶるいしましたよ
これ末吉 なにを笑っているんです
旦那さん 奥の部屋でおかみさんが呼んでますよ
忙しいのはわかっていますが すぐいった方がよさそうです。
花を生けているのですが 椿の花をハサミでチョキん! と
切り落としました。恐い顔して・・・
あれがばれたんじゃあなですか いえ あたしはしゃべりませんよ
ちんちんを切り落とされないように気をつけてください。
ほんとうに婿さんってのは つらいものですね 旦那さん
あっしは太助 魚屋です。
いやいや あの一心太助とは違います
貧乏人の多い裏長屋を売り歩く棒手振りの魚屋です
だから高けえ魚は仕入れません。
いわし あじ さんま ふぐ まぐろ・・・ってとこかね
ふぐなんて怖がって余り売れませんし
まぐろの脂身のとこころなど 長屋の貧乏人も買いませんよ
えっ? そこのとろが旨いんだって へーあんたも
変ったお人だね
せっしゃ奇病にとりつかれております
昼間でも突然眠くなる病気です。
平成の時代では「ナルコレプシー」という立派な病気んだ
そうですが この江戸では単なるなまけものと思われて
おります。 同僚からは「物書き同心居眠り紋蔵」
などと呼ばれており 多分一生出世はできないでしょう
あ~あ 眠くなってきましたょ・・・
おや あの笛は座頭の市さんですよ
定吉や 市さんを呼んでくれないか
まだ5~6町も向こうだって?
市さんさんに揉んでもらうと身体の芯から疲れが
とれるんですよ 他の按摩さんじゃぁもういけません
定吉や ちょいとひとっ走り行ってってきてくれないかい
えっ寒いからいやですだって あのね 旦那のわたしが
頼んでいるのですよ
近頃の丁稚は言うことを聞きませんよ 困ったものだ!
おや 笛が聞こえなくなりましたよ
定吉や 聞こえなくなりましたよ!
誰かが頼んでしまったんでしょうって! あ~あ
「なぁんだ母ちゃんのふかした芋か おいら湯屋の
隣の焼き芋買うんだから8文(160円)くれよ」
手習い所から帰ってきた子供はそう言って母親を
困らせます。
この頃の子供の人気のおやつは 焼き芋と大福餅。
中でも焼き芋は子供たちばかりでなく 女房族にも
人気があったというから いまの時代と変わりません
顔は悪いが背中はい~い男だって!
かかぁのやつ うめーこと云うじゃねえか
袖の下を貰うんじゃねぇだと! あたぼうよ!
あっしは江戸っ子だぜ たとえお袋さんからだって
小使いのびた一文も 貰わねぇよ
江戸はきょうもいい天気だぜ
「おまえさん 気をつけていってらっしゃい」
うちの人は顔は悪いが 背中はい~い男だね
ご覧なさいよ 肩で風を切って歩いて行くよ~
「おまえさ~ん 弱いものいじめしちゃダメだよ~
袖の下なんか貰うんじゃないよ
おまえさんは正義の味方なんだからね~」
「若旦那! さっきからそろばんの指が動いていませんよ
気持ちは吉原の方に行ってるんじゃないでしょうね
あんまり大旦那さまを怒らせないように・・・ せめて
松の内ぐらいは真面目に願いますよ」 と番頭さん
落語に中には道楽者の若旦那がよく登場しますが 松の内と
いうのは門松を立てておく期間をいうのだそうで
関東では元旦から六日まで 関西では元旦から十四日まで
が松の内っていうのもおもしろい。
山豚火も 松の内が終わるまでに帰ってくるといいのですが