18歳の時だった。
ボクが家出する前の日、親父は晩酌の刺身を食べながら、泣き出した。
親父の涙を見たのは2回めだった。
1回目は、ボクが3才の時、1才の妹を養女に出すときだった。
ボクはそれ以来、妹のことは封印した。
親父の涙は堪らない。
ボクは頭から布団を被って一晩中泣いた。
親父が死んで5年、
親父の遺影に手を合わせる。
18歳の時だった。
18歳の時だった。
なんかな、大変なんやと思う。
でも、大変でなかった時代ってあったんやろか？
そんな風に思ったりする。
昔の人たちの苦悩や努力の上に、今のボクたちは幸せを享受してるんやろな？
そうも思ったりする。
ありがたいなと思う。
小さい頃、隣のおばちゃんが大島紬を織っていた。
一日に数センチしか織れない。
ボクは日永眺めていた。
何かを紡ぐことは大変なんだと思う。
ボクが書いたクリスマスイベントのコントの練習を毎日やっている。
題名は「サンタ苦労す」
女性職員二人とボク、三人の掛け合いコント。
二人に突っこまれながら、台本がガラリと変わってしまう。
それがホントに面白い！
昨日の夕方の空。
メルヘンのように美しかった。
デイのおじいちゃん達が
毎日「間違い探し」をやっている。
「10個ある間違いの最後の１個が解かんないだよな」
ボクも覗きこんで観るが、
さっぱり解らない。
「間違い探しの左の画像と右の画像はどっちが正解なんやろか？」
いつも思う疑問が浮かんで来る。
恋愛相談でもそんな時がある。
どっちが間違いなのか？
さっぱり解らない！
2年ぐらい前のことだ。
「死ぬ前に飲みたいのは、カルピスなのよね。それも濃く作ったやつ」
デイの休憩室でまゆみちゃんが笑顔で言った。
「私は絶対ビール、それも生ビールよ」
まみちゃんが天井を見つめながらうっとりした顔で呟いた。
ボクは俯いて考えてしまう。
「レモンサワーかな？」
思わず言ってしまった。
シマッタと思った。
渋谷のレノンのバーテンダーだったアキラくん。
彼が作ったオンザロックは、地球儀のようにまん丸だった。
そして、黒のフォアローゼスのロックは絶品だった。
嗚呼、死ぬ前に飲みたい！
そんなオンザロック。
また、出逢えるんかな？