飛行機の後ろにスーッと伸びていく飛行機雲
。。。と思っていたら、いきなり途切れてしまったという経験はないでしょうか。
飛行機雲は、飛行機の排ガスに含まれる高温の水蒸気が周囲の冷たい空気に冷やされてできます。
それでは、途切れたということは、ジェットエンジンからの噴射が止まったのでしょうか?
しかし、ジェットエンジンからの噴射がもし止まってしまったら、
飛行機は前に進めないどころか場合によっては浮力を保てなくなってしまいますので、どうやらそうではないようです。
では、なぜ?
そのヒントは周囲の雲にありました。
この画像をよく見てみると、
ちょうど、雲がない領域の所から飛行機雲が途切れているのが分かります。
(右上にこの飛行機雲を残した飛行機が写っています)
雲は、水蒸気の量がその地点で含むことができる限界量(飽和水蒸気量)に達すると発生します。
つまり、その地点の水蒸気の量が多いほどできやすく、
逆に水蒸気の量が少ない乾燥した状態だとできにくいということになります。
また、雲はさまざまな高度で発生しますが、飛行機も離陸後高度をぐんぐん上げ、最終的には高度1万メートル前後を航行します。
そこで、さきほどの画像から、次のとおり推測することができます。
① 途中までは、背後にも雲が見えるため、雲ができやすい条件の領域を飛んでいた。
② 飛行機がどんどん小さくなっていったことから、高度を上げていった。
③ 高度が上がったこと等の理由により、雲ができにくい乾燥した条件の領域に突入した。
そのため、途中でいきなり飛行機雲が消えたものと思われます。
また、この飛行機雲と周囲の雲のでき方から、
「中層(高度5,000メートル前後)までは湿った空気が多く雲ができやすい状態だが、それより上空では雲ができにくい乾燥した状態になっている」
と逆に大気の状態を推測することもできます。
なお、水蒸気が多い状態でも、大気の乱れ(上下方向、左右方向)がなければ雲は発生しにくいため、青空を見ても一見しただけでは水蒸気が多いかどうかは分かりません。
そのような青空に、飛行機が飛行機雲を描き、その飛行機雲がすぐに消えない場合は、「雲はなくても実は水蒸気が多い状態である」ということを私たちに教えてくれるのです。
また、低気圧が近づいているときは、上空に湿った空気が流れ込んできますので、「飛行機雲が長く残る場合は雨が近い」などと言われたりもします。
ちなみに、上空の大気の状態は、気象庁でもラジオゾンデと呼ばれる気球をつけた観測装置で観測していますが、観測地点や観測時間が限られてしまうため、それを補完するために民間の飛行機なども航行中に気温などのデータを観測して気象庁などに提供しています。
夏は大気の状態も変わりやすい季節ですので、夏空に描かれた飛行機雲を見ながら、上空の大気の様子に想いを馳せてみるのもいかがでしょうか