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52ヘルツのクジラたち/町田そのこ

2024-02-11 | 町田その子

 

【あらすじ】

親の搾取によって自由を奪われ続けた貴瑚。

その貴瑚を救ってくれたのは、友人の同僚「アンさん」でした。

そのアンさんを失った貴瑚は、現実から逃れるように、祖母が生前暮らしていた、海の見える町へ引っ越してきます。

そこで出会ったのは、言葉を発することができない、髪の長い、女の子のような訳ありの少年。

貴瑚はその少年を、高い周波数で鳴く、52Hzのクジラから因み「52」と仮の名前を呼ぶことにします。

少年が家族の虐待に遭っていたことを知った貴瑚は、少年を救う決意をしますが、同時に、自分の過去と向き合わなければならなくなります。

 

【感想】

親ガチャ・児童虐待・ヤングケアラー・DV・トランスジェンダー。

現在の社会問題の全てを凝縮された一冊。

クジラは一般的に、10ヘルツから39ヘルツの周波数で鳴くと言われているそうですが、52ヘルツの高い周波数で泣くクジラは、世界で1頭しかいない、珍しいクジラ。
その高い泣き声から、自分の存在を仲間に気付いてもらえない孤独な存在なのだそうです。

 

この物語の登場人物、貴瑚。そして彼女を助けたアンさん。母親から名前を呼んでもらえず「ムシ」と呼ばれ続けた少年。3人もまた、52ヘルツのクジラで、人には言えない過去・心と体の問題は、読んでいて胸が苦しくなります。

「人というのは最初こそ(愛を)もらうものだけど、いずれは与える側にならないといかん」

村中のおばぁちゃんの言葉が、胸に突き刺さります。

貴瑚の祖母は、娘の育て方をどこで誤ってしまったのか。

愛(少年)の祖父もまた、娘の育て方をどこで誤ってしまったのか。

子供が親を選べられないのは、不幸だなと思いました。

そして私は、52ヘルツの声を受け止めることができるのか、とても考えさせられました。


ともぐい/河崎秋子

2024-02-08 | 書籍
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【あらすじ】

物語は北海道東部。

親の顔を知らず、自分の年齢もわからない。

養父に育てられ、養父が付けた名前は熊爪。

人との関わりを嫌う熊爪は、人里から離れた山奥で、仕留めた鹿や熊を裁き、馴染みの問屋で売り得たお金で、米やタバコ。銃弾を買う生活を送っている。

ある日、瀕死の重傷を負った男。太一を発見し、面倒だと思いながらも救出。怪我の手当てをします。


阿寒から穴持たずと言われる熊を追い、逆襲にあったことを太一から聞いた熊爪は、穴持たずの熊を退治しようとしますが、、、。

 

【感 想】

面白かった〜

さすが、直木賞受賞作品だと思いました

 

熊文学と言うので、熊を仕留めるマタギの物語なのかと思いましたが、少し違う気がしました。

ただ、内容はとても壮絶で、時折目を背けたくなるような描写が出てきて、クマの生態を熟知している人ではないと描けないストーリーだと思いました。

物語のタイトル「ともぐい」が、最初の「ともぐい」と、どのように繋がるのか全くと言って良いほど想像がつきませんでしたが、最終章で「ともぐい」の本当の意味を知ることになり、とても切ない気持ちになります。