私の本棚

※読書感想メイン

羆嵐/吉村昭

2021-02-18 | ルポルタージュ
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余談ですが、北海道に住んでいるので、羆には2回ほど遭遇しています💦

羆が冬に活動をすれば、アナウンサーは「熊は冬の間は冬眠するはずなのに…」と言うのですが

友人や主人が言うには、冬眠ではないそうです

食料がなくなる冬の間、空腹を避けるために余計な動きをせず

穴の中に潜っているだけで、冬でも食料があれば活動するそうです。

本来羆は臆病で、人間の姿を見ると逃げるのですが、この事件の加害者と言われる羆は

お腹が満たされず、空腹を満たすために人間を襲いました

熊は一度食した物に執着すると言われ、最初に食した被害者が女性だったため、女性ばかりを狙いました。

なんでタイトルが『羆嵐』なのか、不思議に思ったのですが

仕留められた羆を村落に運び出される途中、強い風か吹いたので、銀次郎が「『羆嵐』だな」こうつぶやくのです。

羆を仕留めた時に、強い風が吹き荒れると言い伝えがあり、それを『羆嵐』と呼ぶので、タイトルにしたのですね。

今から20年くらい前、会社の後輩から人食い熊の事件の話を聞き

彼が持ってきた資料をみんなでコピーし、それを家に持ち帰り読んだことがありました。

資料には羆が人骨を噛み砕く音や、身重の女性が

「お腹の子どもだけは助けてくれ」と、言いながら息絶えていく姿がリアルに表現され

読んだときは背筋がゾッとしたのですが、この本には、そこまでのリアルさはありません。

ただ、最初の犠牲者が出てから、銀次郎の手によって、羆が仕留められるまでの

村落に住む男たち心の動きが、表現されています。

その銀次郎ですが、彼のタフガイにも感心させられます。

村に到着してすぐ、事件現場を見たいと周囲を呆れさせるのですが

村人が避難した場所から3キロほどある事件現場まで、区長案内の元、雪の中を歩くのです。

そこで目にした光景で、羆が避難場所を襲う危険があることを察し、翌日には、羆を仕留める事を決めます。

大の男たち200名以上が、手に負えなかった羆を、簡単に仕留めてしまう。

酒癖が悪く、酒場でトラブルを起こしては大暴れするので、みんなの厄介者で嫌われ者の銀次郎ですが

彼がいなければ第3・第4の犠牲者が出ていたことを考えると、銀次郎はスーパーヒーロー的な存在です。

ところで、犠牲者を供養するため、羆を食べるアイヌの風習があるそうです。

彼らは戸惑いながらアイヌの風習に従い、1人又1人と羆を食べ、最後には、みんな争うように食べていたそうです。

いくら、風習で供養とはいえ、自分の家族・仲間を襲い食い殺した羆を

なんの躊躇いも無く、食べられることが出来るだろうか?

私は、ちょっと無理だな・・・


夫を捨てたい。/いくたはな

2021-02-17 | コミック
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※加筆・編集しました

高校時代の同級生と、大学時代に再会し、交際に発展。
交際から4年が経過した頃に妊娠が判明し、結婚。
甘い結婚生活を想像していたが、現実は厳しく、家事・育児などの負担が全て「はな」にのしかかる。
何もしない夫に苛立ちながらも、現状を夫に伝えることが出来ずに、最後は爆発し、家を出てしまう。

夫くんは気が利かないだけで、クズ夫でもなければ、ダメ夫でもありませんでした。
はなさんに足りなかったのは、辛い胸の内を夫に伝えようとはしなかったことです。
はなさんは、母親の言葉に目が覚め、今の思いを夫に伝えることが出来ました。

最近、SNSでも見かける「言わなくても察して」
それが出来れば最高の夫ですが、まず、出来ない人が多いと思った方が良い。

決して男性を責めているのではなく、「あ・うん」の呼吸なんて、ベテラン夫婦でも難しいのです。
夫婦になって数年足らずであれば、尚のこと難しい。
逆の立場になって考えると、わかりやすいのではないでしょうか?
自分の言っていること・望んでいることが如何に傲慢であるか。

夫婦にとって必要なことは、会話をすることだと私は思っています。
ツライ時は我慢せずにツライと言えば良い
苦しい時は苦しい。助けてほしい時は助けてほしいと言わなければ、相手には伝わりません。

実は今、結婚2年目の娘が、この壁にぶつかっています。
はなさんのお母さんと、同じことを娘に伝えたこともあるのですが
スランプの娘には、残念ながら私の声は聞こえません。

相手に変わってもらいたいのなら、まず、自分が変わることから始めよう。

スランプ真っ只中の娘へ、贈る言葉です。


東京二十三区女/長江俊和

2021-02-15 | 長江俊和

 


 

東京二十三区女 第一弾

この物語は、霊感の強いフリーライターの原田璃々子と

璃々子の先輩で、霊の存在を全く信じない璃々子と同じ大学を卒業した元民俗学講師

島野仁を中心に、実際にあった事件を織り交ぜながら話は進みます。

長江さんの本は全て読んでいるので、簡単に結末を終わらはしないだろうなと思いました。

期待した通り、板橋区で驚愕させられます。

当然、次の章も何かトリックがあるのだろうと身構えて読むと

勘の良い人なら「江東区」の最後の1行で気づくかもしれません。

最初の板橋区だけでも衝撃なのにさすが長江さん。そう簡単に物語を終わらせはしない。

今回はホラー要素も加わり、ゾクっとします

個人的には、貰い子殺人事件や自殺の名所として知られた公営住宅があったのは衝撃でした。

読友の中には、ネットで検索をしながら、東京を旅した気分で本を読んだ人が多く

第二弾は、Google earthを使いながらのスタートです。

そして、見事に騙されました。

表紙タイトルの「あの女は誰?」は、後になって「そう言うことか」と、納得できました。

まさかの展開に、「やられた」と、声を上げずにいられませんでした。

ただ、読感はやや不完全燃焼。というか、偽霊媒師の意味深な言葉が気になって仕方なく

これってまだ続きがあると言うことなのかな?

とはいえ、東京の歴史を知る機会にもなり、面白かったです

 


black box/伊藤詩織

2021-02-14 | ルポルタージュ
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伊藤さんは、自分が性犯罪被害にあったことで、司法制度の問題に直面し

海外と日本の制度の違い。そしてサポートの違いを訴えています

 

性犯罪に関する本はこれが初めてではなく、何冊か読んでいるのですが

いきなり、事件当日の話を綴る人が多いのに対し、black boxは自分の生い立ちから話が進み

しかも流れがスムーズで、小説を読んでいるような錯覚に陥るほどでした

とにかく、今まで読んだ性犯罪とは流れが違うため、最初は面食らったのですが

事件当日の話になると、流石に感情を抑えることが出来なくなったとみえ

まだ、事件と向き合うことが出来ずにいることが伺えます

 

 

ところで、山口氏が政権寄りだったこともあり、この事件の話になると

必ずと言って良いほど目にする記事は、山口氏に対して「安倍にべったり」の文字。

伊藤さんへのインタビューでも、性犯罪の問題のはずなのに

政権批判に話を繋ごうとする印象がとにかく強い。

また伊藤さんの周囲も、反政権の人達が多く

本気で伊藤さんを応援しようとする人がどれだけいるだろうと、疑問に思うことがあります。

両親や友人には恵まれていても、それ以外の周囲が、政権批判に伊藤さんを利用し

逆に伊藤さんを苦しめているように思いました


福家堂本舗/遊知やよみ

2021-02-13 | コミック

 

昨年、寿退職し、一時家に戻ってきた娘と二人で見た配信ドラマがこの福家堂本舗でした。
ドラマが面白かったこともあり、電子書籍をAmazonから購入。
ドラマの配役を脳内で想像しながら読んだので尚、楽しめました。

ちなみにドラマでは

雛役に、佐々木希
あられ役 早見あかり(主演)
はな役 宮野陽名
3人の母親役の駒子は浅野ゆうこ

後に雛の夫となる桧山は、山下健二郎
あられの恋のお相手は 市原隼人
はなのボーイフレンド 前田旺志郎

創業450年の歴史を誇る老舗和菓子店「福家堂本舗」
しっかりものの長女「雛」
自由奔放でおてんば娘の次女「あられ」
少し天然の三女「はな」の三姉妹の恋と成長の物語


京都という街は、他の地方と比較すると少し独特なところがあるのか
京都に住んでいた事があるという知人も、閉鎖的なところがあるかもしれないと聞いていました。
新しいものを受け入れないと言うより、古い歴史を大事にするのが京都の良さなのかもしれません。

また、私なら褒められていると勘違いしてしまいそうな会話の中身も、実は毒を放っていること。
さらに「荷物をお持ちしましょう」「おおきに」の『おおきに』は、「遠慮します」の意味
「家でお茶でも飲みませんか?」は、社交辞令で本気にしてしまうと
「厚かましい人」と思われてしまうなど、京都独自の意思疎通も面白いです。

最終巻では6年後の3人が描かれています。
三女、花の結婚が決まり、ハッピーエンドで終わるのですが
子供を育てる二人の姉を、複雑な表情で見る花の姿が印象的です
 
私も子供がいるせいか、とても考えさせる場面が多かったです。