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新年度を前に、住まい探しが活発化する時期を迎えた。ただ、注意が必要だ。不動産業界の情報サイトや広告には、好条件だが実際には入居できない「おとり広告」が少なくないためだ。
「おとり広告」は物件が存在しなかったり、実際には取引する意思がなかったりする物件を指す。既に契約済みなどの理由で取引対象にならない物件を掲載しているケースもある。
公益社団法人、首都圏不動産公正取引協議会のポータルサイト広告適正化部会によると、同部会が把握したおとり広告は2018年度には2212件あったが、22年度は126件と大幅に減少した。しかし、安心はできない。
不動産情報サイトの「LIFULL HOME′S」を運営するLIFULL(東京都千代田区)の調査によると、賃貸物件検索サイトを利用した人のうち約半数にあたる46・8%がおとり広告に「遭遇したことがある」と答えた。
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激減したはずのおとり広告に、なぜ「遭遇」してしまうのか。LIFULLは「利用者をだます目的の悪意がある広告は減ったものの、最近は契約済みの物件の取り下げが遅れるなどして消費者の不満要因となっている」と説明する。
同社が23年12月~24年1月に不動産仲介業務の担当者に行った調査では、広告の取り下げ期間に関して「可能ならもっと早く取り下げたい」との回答が40・4%を占めた。このうち49・0%が「人手不足のため十分なメンテナンスができない」としている。
契約が成立次第、すぐに物件情報が取り下げられる仕組みを作らなければ、利用者とのトラブルはなくならない。国も対策に動き出した。国土交通省が検討しているのは、不動産情報に番号(ID)を付与する仕組みだ。共通のIDを割り当てることで、契約成立時に各不動産情報サイトから物件情報を取り下げやすくする効果を期待している。既に実証試験に入っており、おとり広告の低減効果を検証しているという。
不動産情報サイトで見た物件が実際には契約できなかった経験は、不動産業界の信頼失墜に直結する。LIFULLは「不動産業界全体で連携を強化し、企業の枠を超えて横断的に課題に取り組む必要がある」としている。【道下寛子】