彫刻家・本郷新が綴った『彫刻十戒』 の“彫刻の存在は同時に生命体の存在である” に着目した企画展「生命体の存在」。北海道にゆかりのある作家の中から、陶、ガラス、ジュエリー、繊維など生活に根差した素材・技法を用いたユニークな彫刻を制作している8名の作品を展示します。彼らの作品から醸し出される得も言われぬ生命感に着目し彫刻表現の多様性とその可能性を探る標記展覧会が「本郷新記念札幌彫刻美術館」において9月16日(土)~12月17日(日)の会期で開催中です。
本日は宮の森の「本郷新記念札幌彫刻美術館」で開催中の企画展「生命体の存在」の鑑賞です。今年6月24日に42回目の開館記念日を機に開催された「サンクスデー」と企画展「彫刻60年 鈴木吾郎展 悠久を舞う」などを観賞して以来です。本日は自宅から自転車で「円山公園」や「円山動物園」前を経由して高級住宅街の中をやってきました。公共交通機関だと地下鉄東西線「西28丁目」駅2番出口バスターミナルから出ているJR北海道バス山の手線〈循環西20(神宮前先回り)〉に乗り「彫刻美術館入口」下車し徒歩約10分ほどです(地図)。
「本郷新記念札幌彫刻美術館」外観。
企画展「生命体の存在」フライヤー。
“彫刻において、人や動物を「動いているように」「生きているように」表現することは、古代から現代にまで共通する普遍的な課題となっています。一方で、彫刻(あるいは彫刻を取り巻く空間)そのものが新たな生命体と化した作品もあり、それらは単なる模写、リアルの追及を超えて生命の探求へと向かっていると感じられます。また、こうした作品には、工芸品や日用品のイメージが強い陶やガラス、ジュエリーなど身近で意外性のある素材・技法が用いられることがあり、生命体としての彫刻はますます人々の日常や生き方への問いに接近してきているといえます。
本展では北海道にゆかりのある作家たちの作品から、生命体としての彫刻に着目し、彫刻表現の多様性とその可能性を探ります。”
出品作家:青木美歌(ガラス)、伊藤光恵(繊維)、上ノ大作(竹、陶芸)、小林繁美(金工)、下沢敏也(陶芸)、丹羽シゲユキ(陶芸)、中村修一(陶芸)、前田明日美(ジュエリー)。
本展では北海道にゆかりのある作家たちの作品から、生命体としての彫刻に着目し、彫刻表現の多様性とその可能性を探ります。”
出品作家:青木美歌(ガラス)、伊藤光恵(繊維)、上ノ大作(竹、陶芸)、小林繁美(金工)、下沢敏也(陶芸)、丹羽シゲユキ(陶芸)、中村修一(陶芸)、前田明日美(ジュエリー)。
入館すると直ぐに上ノ大作氏のインスタレーション作品《LIFE IN THE WOODS》2023年がお出迎えです。
2階から見た《LIFE IN THE WOODS》。宮の森の木々をイメージしつつ竹のみで制作したという作品。異星の生命体のようで迫力があります。
下沢敏也氏の作品コーナー。
下沢敏也《Re-birth from silence 21‐23》2023年。朽ちた先の「再生」と新たな生命の誕生を予感させるという作品。
白で統一された丹羽シゲユキ氏のオブジェ。厚く降り積もった白い雪など北海道の土地と結びついた作品類とのこと。
《華蓮(かれん)》2023年。
青木美歌氏のガラス作品《作品名不詳》。作者にとってガラスは「透明」かつ「強固に無意味」な素材だそうです。
同《作品名不詳》。
伊藤光恵氏の《Like a bird 鳥の如く》2023年。北海道の渡り鳥がV字飛行している姿から着想を得たという作品。
小林繁美氏の銅製の作品群。古代遺跡の出土品さながらの生と死のドラマを感じさせる作品。
小林繁美《仮面舞》。
前田明日美氏の展示コーナー。今回の展示品で最も存在感があり印象的だった作品です。
前川明日美;
“新陳代謝をしない無機物に生命の息吹を感じてしまう、というような不思議な感覚を覚えたことがあるだろうか。前田明日美は様々な無機物を駆使してこの感覚を呼び起こし、私たちの心を動かす生命力とは何なのだろうかと自問する。糸や古い布、フェルトやビーズなどの身近な素材を自在に組み合わせ、時には雨や日光などに長期間晒して自然の刻印を付与した素材をも埋め込んでいく。こうして生み出されたオプジェは、個々の素材の素材感が消失しており、一つの大きな生命体のようにも、小さな深海生物の集合体のようにも見えてくる。”
《echo》2023年。“《echo》は地の部分が貝殻のらせん模様のように規則的なバターンを描きつつも、不規則な変化が加わっていて、互いに反響しあいながら全体が展開されている。人間が身に纏ったときには、命ある有機物と無機物との境界が至極あいまいな、独特の世界観が繰り広げられる。”
《colony 5》2023年。
《colony 7》2023年。
中村修一氏の作品《emerge)2023年。地面から「現れる」生命体です。
以上で鑑賞終了です。美術館ロビーには本郷新の写真が飾られています。
“彫刻の存在は同時に生命体の存在である。古代彫刻を見よ、中世芸術を見よ、東洋の数々の古典を見よ、人類万年の歴史は、彫刻の何たるかをわれわれに教えている。軽佻浮薄の現代を恥じ、大自然と大古典を友とし、師と仰ぎつつ明日に向かおう。”――本郷新『彫刻十戒』より。
前庭の「わだつみのこえ像」。気鋭の作家8名の作品が並ぶ展覧会は大変見応えがありました。良い企画が続く本郷新美術館でした。ありがとうございます。
「記念館」 2階から見た「円山」方向。
企画展「生命体の存在」
会場:本郷新記念札幌彫刻美術館(札幌市中央区宮の森4条12丁目)
会期:2023年9月16日(土)~2023年12月17日(日)
休館日:月曜日(ただし月曜祝日の場合開館し、火曜日休館)
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
料金:一般600円(500円)、65歳以上500円(400円)、高校・大学生400円(300円)、中学生以下無料、( )内は10名以上の団体料金
主催:本郷新記念札幌彫刻美術館(札幌市芸術文化財団)
後援:北海道、札幌市、札幌市教育委員会
(2023.9.29)