それは滞在二日目のこと。
泊めてもらっている友人家族と全員で朝ご飯を食べに外に繰り出してみた。ベタではあるがやはりボリュームたっぷりのパンケーキはやっつけておきたいということで、とある有名店にやってきた。
そこで色々と注文して待つ間、ついさっきまでうるさいほどに元気だったアランスミシーの息子こと6歳の息子の顔が急激に色を失いはじめ、その場にほぼぐったりと動けないほどになったのである。
吐くことすらもできないほどで、一体急に何が、という感じだった。
お世話になっている家族の奥さんはドクターで、彼の脈をとるなり「いますぐ病院に行ったほうがいいと思う」と言ったことで一気に緊迫した。
幸い大きな病院が近くにあったので、事情を説明し注文もすべてほったらかして病院へ向かった。
そしてEmergencyと書いた救急病棟にて、応急処置をしてもらう。こういう時のアメリカの病院の手際の良さというのは本当にものすごいものがある。
息子のほうもそうこうしているうちに、むしろ救急のベッドで寝かされているのが不自然だというぐらいにだいぶ回復してきた。
結果から言うと、慣れない環境の変化と前日のビーチでの運動のしすぎによるものではないか、というようなまあいわゆる「今となっては原因を突き止める意味もあんまりない」というタイプのある種謎の体調不良ということでおさまった。
では、あとはもう出るための書類の手続きをするので、ちょっとお待ちくださいと待たされている間、目の前に色々とほかの救急患者がいることに改めて気が付いた。
その中の一人に、彼女であろう女性に付き添われてきていた大きなアメリカ人男性がいた。
親指の先をケガしたのか、包帯を巻いてずっと押さえている。横には彼女が付き添っている。男性のほうは屈強で、肩から腕にかけてかなり広範囲なタトゥーをお持ちだ。
息子と二人でそのカップルを見ていると、ちょうどカップルのもとにドクターが現れた。そして「どう?痛みは?」というようなことを聞いた。屈強な男性は顔をしかめながらものすごく痛い、と言った。
少し距離があったのではっきりとは見えないのだが、遠目で見る限り指先のケガはまあ多少の深い切り傷、ちょっと縫わなければならない、という程度のものに見えた。
ドクターが「そしたらちょっと処置するよ」といって、彼の親指付近を手に取って何か処置をし始めた時である。
その屈強男性が「アアアーーーゥ!」「ノォォーーー!」「ガーーーッ!!(God!!)」と叫びだした。ドクターはすまんがちょっとガマンね、という意味のことを言いながら全く手を止めない。
するとこの男性、ついに泣き出してしまったのだ。
傍目に見てもまあそんな言うほどひどいことはされていないことはわかるのに、だ。
ドクターも呆れたのか、「そのタトゥー入れた時のほうが痛かったんじゃあないのか」と声をかける。しかし男性はひいひい言いながら顔を上げようともしない。これには彼女も苦笑いしている。
“Come on, it’s not the end of the world” (おいおい この世の終わりちゃうねんから)というドクターと泣き叫ぶ巨大な男という様はまるで映画のワンシーンであった。
そうこうしているうちに書類も整い息子も無事退院。
すっかり元気になった彼はこの男性の泣き叫ぶ声が恐ろしかったらしく一刻も早く病院を出たかったようだ。
そして気になるその請求額は…
ゼロだ。結局私ひで氏は関西国際空港で家族全員分の海外旅行保険を購入していたのだ。
保険がなければかなりの額になっていたのではないかと思う。
いやよかった、と安堵して病院の扉を潜り抜けるその時も、すすり泣く男性の声は病院中に鳴り響いていた。
みなさん、保険は必要経費です!
泊めてもらっている友人家族と全員で朝ご飯を食べに外に繰り出してみた。ベタではあるがやはりボリュームたっぷりのパンケーキはやっつけておきたいということで、とある有名店にやってきた。
そこで色々と注文して待つ間、ついさっきまでうるさいほどに元気だったアランスミシーの息子こと6歳の息子の顔が急激に色を失いはじめ、その場にほぼぐったりと動けないほどになったのである。
吐くことすらもできないほどで、一体急に何が、という感じだった。
お世話になっている家族の奥さんはドクターで、彼の脈をとるなり「いますぐ病院に行ったほうがいいと思う」と言ったことで一気に緊迫した。
幸い大きな病院が近くにあったので、事情を説明し注文もすべてほったらかして病院へ向かった。
そしてEmergencyと書いた救急病棟にて、応急処置をしてもらう。こういう時のアメリカの病院の手際の良さというのは本当にものすごいものがある。
息子のほうもそうこうしているうちに、むしろ救急のベッドで寝かされているのが不自然だというぐらいにだいぶ回復してきた。
結果から言うと、慣れない環境の変化と前日のビーチでの運動のしすぎによるものではないか、というようなまあいわゆる「今となっては原因を突き止める意味もあんまりない」というタイプのある種謎の体調不良ということでおさまった。
では、あとはもう出るための書類の手続きをするので、ちょっとお待ちくださいと待たされている間、目の前に色々とほかの救急患者がいることに改めて気が付いた。
その中の一人に、彼女であろう女性に付き添われてきていた大きなアメリカ人男性がいた。
親指の先をケガしたのか、包帯を巻いてずっと押さえている。横には彼女が付き添っている。男性のほうは屈強で、肩から腕にかけてかなり広範囲なタトゥーをお持ちだ。
息子と二人でそのカップルを見ていると、ちょうどカップルのもとにドクターが現れた。そして「どう?痛みは?」というようなことを聞いた。屈強な男性は顔をしかめながらものすごく痛い、と言った。
少し距離があったのではっきりとは見えないのだが、遠目で見る限り指先のケガはまあ多少の深い切り傷、ちょっと縫わなければならない、という程度のものに見えた。
ドクターが「そしたらちょっと処置するよ」といって、彼の親指付近を手に取って何か処置をし始めた時である。
その屈強男性が「アアアーーーゥ!」「ノォォーーー!」「ガーーーッ!!(God!!)」と叫びだした。ドクターはすまんがちょっとガマンね、という意味のことを言いながら全く手を止めない。
するとこの男性、ついに泣き出してしまったのだ。
傍目に見てもまあそんな言うほどひどいことはされていないことはわかるのに、だ。
ドクターも呆れたのか、「そのタトゥー入れた時のほうが痛かったんじゃあないのか」と声をかける。しかし男性はひいひい言いながら顔を上げようともしない。これには彼女も苦笑いしている。
“Come on, it’s not the end of the world” (おいおい この世の終わりちゃうねんから)というドクターと泣き叫ぶ巨大な男という様はまるで映画のワンシーンであった。
そうこうしているうちに書類も整い息子も無事退院。
すっかり元気になった彼はこの男性の泣き叫ぶ声が恐ろしかったらしく一刻も早く病院を出たかったようだ。
そして気になるその請求額は…
ゼロだ。結局私ひで氏は関西国際空港で家族全員分の海外旅行保険を購入していたのだ。
保険がなければかなりの額になっていたのではないかと思う。
いやよかった、と安堵して病院の扉を潜り抜けるその時も、すすり泣く男性の声は病院中に鳴り響いていた。
みなさん、保険は必要経費です!