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16年目突入。ビッグイベントに心躍らせながら、草の根のスポーツの面白さにも目覚めている今日この頃です。

最も印象に残った球児   51.鹿児島

2012年09月27日 | 高校野球名勝負

◇もっとも印象に残った球児

51.鹿児島



福岡 真一郎   投手         樟南高校   1993年 春夏  1994年 夏    
田村 恵      内野手       樟南高校   1993年 春夏  1994年 夏    



甲子園での戦績

93年 春   2回戦     〇   4-2    南部(和歌山)
        3回戦     〇   4-0    東北(宮城)
        準々決勝   ●   1-6    国士舘(西東京)
    夏   1回戦    〇   4-3    東濃実(岐阜)
        2回戦    〇   3-0    堀越(西東京)
        3回戦    ●   0-1    常総学院(茨城)
94年 夏   2回戦    〇   8-2     秋田(秋田)
        3回戦    〇   4-1     双葉(福島)
        準々決勝  〇  14-5    長崎北陽台(長崎)
        準決勝    〇   10-2    柳ヶ浦(大分)
        決勝     ●    4-8     佐賀商(佐賀)



鹿児島県と言えば、
80年代中ごろまで、なかなか甲子園で活躍することが出来ませんでした。

そんな中、
鹿児島を何とか強くしようと、40年近くにわたり切磋琢磨し続けた【両雄】が、
鹿児島実業と樟南(旧・鹿児島商工)です。

久保監督は67年から、枦山監督は71年から、
共に母校の監督に就任して、
母校の野球部を強くすることに人生をかけてきました。

鹿児島の方言で『ぼっけもん』ということばがありますが、
その言葉通りの、
『肝っ玉が太く、豪華』
な監督さんでした。

その二人の情熱が、
鹿児島野球の太い幹となって今も生き続けます。

鹿児島野球というと、
この二人がまさに『生き字引』のようなもの。
二人の作ったチームの足跡を追うと、
鹿児島野球が見えてきます。


最初に世に出たのは鹿児島実業。
特に剛腕・定岡(元巨人)を擁して準決勝に進出した74年の夏は、
本当にセンセーショナルでした。

準々決勝・東海大相模戦、カクテル光線の下での15回の激闘。
続く準決勝では定岡が負傷で無念の降板。
そして最後はセンターのトンネルでのサヨナラ負けという、悲劇の結末を迎えました。

枦山・鹿商工の甲子園初お目見えは77年。
その時はまさに『何もできずに』終わったような試合でした。(1-3 黒沢尻工)

70年代から両校は切磋琢磨を続けて鹿児島のレベルアップに努めましたが、
なかなか結果を出せない時期が長くありました。

本当に結果が出始めたのは、
80年代も中盤になってから。

甲子園で結果を出したのが早かったのは、
樟南の方でした。

樟南は『コントロールのいい好投手を擁し、つなぎの鋭い打線が得点を重ねるバランス野球』
というイメージがありますが、
84年夏に好投手増永で準々決勝進出を果たすと、
翌85年夏も連続で準々決勝進出。

その後も甲子園にはよく顔を見せており、
すっかり【甲子園の名門校】の地位を獲得していましたが、
その枦山監督が自信を持って送り込んだのが93・94年の『ちびっこバッテリー』福岡-田村でした。

初登場は93年センバツ。
バッテリー揃って2年生で、しかも身長が低く童顔の選手だったということもあり、
大会前からこのバッテリー『中学生バッテリー』などと呼ばれていましたが、
大会に入るとこの二人、
見事に『小粒でもピリリと辛い』所を見せつけてくれました。

さほど注目されていなかったものの初戦、2戦目に快勝。
特に大型選手をそろえた東北を破った3回戦は、
福岡-田村のバッテリーの配球が冴えにさえ、
東北打線をまさに『手玉に』取りました。

そしてその夏は、
このバッテリーにとっては忘れられないものとなりました。

初戦を苦しんだ末に勝ち臨んだ2回戦。
相手は東京の堀越。

福岡は低めによく伸びる速球が決まり快調なテンポで相手を打ち取っていきます。
8回を迎え3-0とリード。
ここで雨が土砂降りとなり、
なんと4,5年ぶりの『降雨コールドゲーム』で勝利。

空を恨めしそうに見ながら号泣する堀越ナインを、
複雑そうに見つめる田村の姿がありました。


しかしその雨。
今度はこのバッテリーに『恨みの雨』として降り注いできます。

迎えた3回戦の相手は常総学院。
この大会の【優勝候補筆頭】のチームでした。
エース倉、3・4番に金子(日本ハム)、根本という超高校級の選手を擁して、
木内監督が3年計画で作り上げた、
自信満々のチームでした。

『力と力の激突』
と言われたこの試合、
しかし鹿児島商工(当時)は予想に反し、
序盤で4-0と大量リードします。

『鹿商工の金星か』
との雰囲気となった中盤、
またも空からは雨が。

そして一気にグラウンドに降り注いだ雨は、
鹿商工の【金星】をもきれいに洗い流していってしまいました。
鹿商工にとっては、無念のコールド再試合。

はっきり言って、
このまま試合が最後まで行われていれば、
鹿商工が勝利したであろうことは明白でした。

この年の常総は、
力はあるが気迫が希薄。
リードされるとからっきしのチームでしたから。

果たして再試合。

この再試合では、
常総のエース・倉が甲子園で、
『彼の3年間で最もいい』ピッチングを披露され、
鹿商工は0-1と敗れてしまいます。

03年の駒大苫小牧といい、
再試合になるとやはり、
リードして中止になってしまった方はどうしても精神的には不利になってしまいますね。


ということで厳しい結末を迎えてしまったこのちびっこバッテリー。
しかし彼らは2年生でした。
『捲土重来』
彼らのためにあるような言葉で、
ファンは3年になってからの再登場を心待ちにしていました。


そして最後の夏。
3たび甲子園に登場してきたこのバッテリー、

枦山監督は、
よほどこのチームにかけていたんだと思います。

だって、
チームが【福岡-田村】のバッテリーに頼る構成から、
ガラッと変わっていましたから。

とにかく打線が好調。
『打って、打って、打ちまくる』強打線は、
今までの樟南のイメージをがらりと変えるようなインパクトがありました。

まぎれもなくこの年の『一番強いチーム』でした。

ところでこの大会、
ちょっとした異変が起こった大会として記憶されています。

それは、
【九州勢がやたらと強かった】
大会ということ。

決勝が九州同士だったことをはじめとして、
4強のうち3チームが九州。

そしてそのほかにも、
初出場・長崎北陽台の8強入りや、
『本命』横浜を倒した那覇商の健闘ぶりなど、
九州の指導者たちが取り組んできた強化が、
一気に実を結んだ大会となりました。

さて樟南と言えば、
この年に校名を鹿児島商工から樟南に改め、
新しいスタートを切った年でした。

その年に満を持したチームで快進撃。
枦山野球が花開いた年になりました。

エース福岡は昨年ほどの安定感はなかったものの、
大事なところでは勝負強さを見せて相手にスキを見せませんでした。
キャプテン・田村の猛打は爆発。
そして田村・福岡の2人は、
打線の核としてもこの【10点打線】を引っ張っていきました。

もうとても『中学生バッテリー』なんて呼べないような風格を備えた二人でした。

準々決勝で長崎北陽台、準決勝で柳ヶ浦と、
共に九州の代表校を倒して決勝に進出した樟南。

決勝の相手も九州代表の佐賀商でした。

準々決勝、準決勝の戦いぶりを見ていると、
明らかに勝負の前に『九州でのチームの格の違い』に気おされて、
相手がズルズルと勝手にこけていくという感じでしたので、
この決勝でも『樟南が絶対に有利だろう』と思っていました。

これまでの戦いぶりからしても、
佐賀商の勝機は薄い感じがしました。

試合は樟南絶好の展開となりましたが、
3-0とリードしてやや気が緩んだか追加点を奪えず、
ズルズルと同点を許すという展開となりました。

そして9回満塁で、
佐賀商のキャプテン・西原の打球が左中間スタンドに消えた時、
樟南の、そして鹿児島県勢の夢であった全国制覇も一緒に、
空のかなたに消えてしまいました。

痛恨の試合だったと思います。


その後樟南は、
99年の上野投手、00年の青野投手、01年・02年の岩崎投手など、
次々に好投手を擁して甲子園に挑みましたが、
宿願は達成できませんでした。

そして2010年、
ついに枦山監督が引退を決意し、
鹿児島の『名監督のライバル物語』は終わりを告げました。


鹿児島実の久保監督は、
90年代までずっと樟南に押されていましたが、
96年に下窪投手を擁して選抜で念願の全国制覇を成し遂げました。

その後も98年の杉内を擁してのノーヒットノーランなど、
輝かしい戦績を残して引退をしました。


久保監督と枦山監督。

両者がいたから、
鹿児島の野球は発展してきました。

彼らの思いを継ぐ県下のたくさんの高校に、
久保門下生と枦山門下生が監督として赴任しています。

『鹿児島新時代』
の到来とともに、
このベテラン監督たちのあまりにも輝かしい業績に、
こうべを垂れます。


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