父・叔父夫婦・叔母との湯河原一泊旅行が終わりました。
懸念だった、父が大浴場に安全に入れるのかどうかについても…
介助して、なんとか入って来ることが出来ました。
浴槽の縁の、ステンレスの手すりにつかまって、そこから離れることは出来ませんでしたけれど。
それでもとにかく、温泉に浸かって来ることが出来て、父も嬉しそうでした。
でも、かなり大きな温泉ホテルだったのですけれど…
うちの父ほどよぼよぼで、洗い場から浴槽に向かうのも、支えられてやっと…
というような人が入浴している姿は他になく…
それ以前に、廊下を歩くのも杖を突いて、片手は壁につかまって…という状態の人もいなくて…
(車いすにのった老婦人はひとり見かけましたが)
もう本当に、こういうことをするのは限界なんだという実感がありました。
これより衰えた人を、普通の浴場で入浴させるのは、危険になりますし…
他のお客さんにも迷惑をかけます。
実際、迷惑そうな表情や、好奇の視線をいっぱい感じてしまいましたし。
いよいよ、これが最後かな、こういうことをしてあげられるのは……
食事も、部屋で座卓で食べることは出来ないので、大食堂のテーブルで食べる方式を選んで。
ただビュッフェ(バイキング)形式だったので…
私が二人分のトレイを一度に運ぶのはやっぱり無理でした。
まず父の分を適当に見繕って取って、運んであげて…
それから自分の分を運ぶという。
その間、叔父叔母たちは、食べるのを待っていてくれました。
小さい子どもと騒がしい集団がいるのを、我慢する力ももう衰えてしまっているので…
小さなお子さんが大きな声を出すと、露骨に不快そうな顔でそちらをにらみつけてしまったり。
それ以上にハラハラしたのは、ついたてを挟んだ隣に、高齢者の団体がいて…
それがとてもうるさかったこと。
泥酔して今日は「無礼講だ!」「〇〇飲んでねえぞ!」みたいに大騒ぎ。
そういうノリは、みんなで食べる食堂ではなく、貸し切り宴会場でだけ許されると思うので…
まあ、悪いのはあちらだと思うのですが、父は険しい顔で、しきりと衝立の向こうを覗いて。
そのうちに、無礼講団体の中のひとりの老人が、父の椅子の後ろを通ったときに…
浴衣の袖を椅子の背もたれにひっかけて、運んでいた酒をこぼしてしまうという事件が。
こぼれたのは床にだったのですが、怒った父は、椅子が濡れたと言って…
「おい!椅子が濡れたんだぞ!何とかしろ!」と、大声で何度か怒鳴ってしまって。
さすがに気付いた相手が、謝るつもりか、ちょっと何かをつぶやいて頭を下げたのですけれど…
これは日本人の「おっさん」「じいさん」だけの悪い癖だと思うのですが…
表情が、謝罪している感じではなく、何か媚びたような笑顔を浮かべていて。
「それで謝ってると言えるか!」
「おい!もっとちゃんと謝れ!」と、父がますます怒ってしまうという。
相手は酔っぱらっているし、ことを荒立てたくないので、なだめてその場を収めましたが。
この、謝るときに媚びた笑いを浮かべる癖は、本当に外国人には見られない不思議な現象で…
よく他国の人からも、不信と怒りを買うのですけれど、本当に良くないことだと思います。
若い人にはこのパターンはなくて、むしろ無表情な謝罪で誠意が感じられないのですけれど。
本当に、オヤジが何か失敗や悪いことをしたときのニヤニヤ笑い、やめた方がいいと思います。
そんなわけで、せっかくの夕食がさんざんなものになってしましました。
二人分の食事を運ぶせわしなさや、そういった周りとの軋轢で、どんなお食事だったか…
写真を撮ったりするのも忘れました。
とにかく介助が大変で、結局旅行中に撮った写真は、この朝食だけでした。
せっかく、父のきょうだい(元気で生きている)そろっての旅行だったのに…
叔父や叔母たちと揃っての、記念写真ぐらい撮っておくべきだった。大失敗。
まあでも、夜、叔父たちが泊まっていた和室の方に移動しての…
(父は畳に敷いた布団では、寝かせるのも起こすのも大変な労力になるのでベッドの部屋でした)
みんなが子どものころの思い出話や…
(川崎駅の近くにあった家や、近隣にいた親戚たちの商売とか、建物疎開、縁故疎開の話)
先祖についての知っている話…
(小田原藩の剣術指南役だったとか、明治初期には伊藤博文の私的な警護役をしていたとか…
昭和になってから父の大叔父夫婦が犬養毅の箱根の別荘の番人をしていたとか)
翌日、湯河原駅前の喫茶店で、また先祖や親族の昔話がとても盛り上がって…
みんな楽しそうだったし、私も楽しかったので…
失敗の旅行だったとは思いません。
むしろ楽しかった。
ただ…
湯河原の駅で叔父叔母たちが列車で帰って行くのを見送ってから…
駅前のコインパーキングに停めた車に向かおうとしたとき、事件が起きてしまいました。
父が突然よろめいて、支えるまもなく転倒してしまったのです。
通りかかった親切な人と一緒に助け起こしたのですが…
手の指にけがをしてしまいました。
急に気が遠くなって、ふらっとして、気が付いたら倒れていたと、本人。
ベンチに座らせて、表情を見たり、発話させたり、両腕を肩の高さまで上げさせたりと…
脳卒中でないかどうか確かめたところ、異常はなく…
頭を打った様子はなく、身体の他の部分に痛みもなくて、不幸中の幸いではありました。
老人が骨折してそのまま寝たきりに、というのは良くあるケースですから。
でも、貧血の気もない人が突然倒れるというのは、かなり心配です。
一日経って、指の傷が痛い以外は異状ないようですが…
念のため、脳の検査とかしたほうが良いのかもしれません。
ただの「疲れ」ならいいのですが。
いずれにしてもこうした泊りがけの遠出を、歩いてするのはもう限界だと思います。
車いすに乗ってなら、少し動けるのかもしれませんけれど。
父は、車いす生活になったら、もう施設に入ると言っていますが、どうなるか。
無事に行って来られた、と言えるか言えないか、微妙な旅行になってしまいました。