東京都港区の商業施設で平成21年、下りエスカレーターの手すりに体を持ち上げられた男性が階下に転落し死亡した事故で、遺族が管理会社の三井不動産などに約9600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が19日、東京地裁であった。矢尾渉裁判長は「エスカレーターの仕様や安全性に欠陥があったとはいえない」として請求を棄却した。
判決によると、事故は平成21年4月8日に発生。会社員、片山聡さん=当時(45)=が背中から手すりに乗り上げてバランスを崩し、8メートル下の床に転落し死亡した。暮らしの中で起きる身近な消費者事故の原因究明を目指し昨年10月に発足した消費者安全調査委員会(消費者事故調)で、第1弾の調査対象の1つに選定されている。
矢尾裁判長は片山さんがエスカレーターの存在を認識しながら接近、後ろ向きに寄りかかったと認定し、「本来の用法からかけ離れていた」と指摘。エスカレーターの構造や転落防止措置に問題があったとする遺族側の主張を退けた。