17音の記録 やぶにらみ

気が向いた時の記録

 俳句・無季の句 川柳と 関連記事

蓮見

2016-07-15 11:05:37 | 日記
蓮見
ほのぼのと舟押し出すや蓮の中  夏目漱石
長堤の狭き道ゆく蓮見かな       拙

蓮は夜明け頃に咲き始める。その先初めの蓮を見に行くのが蓮見と言われるが、咲くときの厳かな様子は夜明け前なのて咲く瞬間の厳かなようすはなかなか見ることはできない。昼過ぎには閉じてしまい三日繰り返し四日目には地ってしまう運命にある。当地では沼に咲いているので、陸上からだと堤防からとなる。

パリ祭

2016-07-14 09:31:06 | 日記
パリ祭
干物を男が入れる巴里祭    川崎展宏
さらし粉の臭ふ上水パリ祭      拙

7月14日、1789年のフランス革命記念日の日本での呼び名で、昭和八年上演の ルネ・クレールの映画の
邦訳名「巴里祭」に由来する。水不足が懸念されると水道水がことさらさらし粉の匂いがする。
パリの水は高価であり、まずいという評判がある。もしかすると今日あたりの水はパリ並みでは。

ビール

2016-07-13 10:10:20 | 日記
ビール
ビール呑む男の持てる喉ぼとけ 佐藤 都
訥弁のにわかに変るビールかな   拙


ビール類(るい)の出荷量(しゅっかりょう)が過去最低(かこさいてい)を更新(こうしん)、という小(ちい)さな記事(きじ)があった。申(もう)し訳(わけ)ない、と身(み)を縮(ちぢ)めて読(よ)んだ。
 ビールの恋(こい)しい時期(じき)である。夏(なつ)に限(かぎ)らず、秋(あき)も冬(ふゆ)も「取(と)りあえずビール」という流行(りゅうこう)の一(いち)翼(よく)を担(にな)ってきた身である。一度(いちど)、医師(いし)から禁(きん)酒(しゅ)を命(めい)じられた。禁は解(と)けたが、いろいろあって、不本意(ふほんい)ながらビール人気低落(にんきていらく)に手(て)を貸(か)してきた。
 喉(のど)ごしの爽(そう)快感(かいかん)を忘(わす)れたわけではない。つまみを選(えら)ぶのも楽(たの)しい。枝豆(えだまめ)、焼(や)き鳥(とり)などのほかに、他(た)人(にん)の噂話(うわさばなし)や無責任(むせきにん)な悪(わる)口(くち)も、陽気(ようき)なビール談(だん)議(ぎ)の「良(よ)きつまみ」になる。折(おり)しも、また選(せん)挙(きょ)。今度(こんど)は都民(とみん)でない身(み)として、「高(たか)みの見(けん)物(ぶつ)」ができる。
 頼(たの)みもしないのに連日(れんじつ)、どのテレビ局(きょく)もおなじみの顔(かお)が、やれ滑(すべ)ったとか、転(ころ)んだとか報(ほう)じる。何(なん)とも騒々(そうぞう)しいが、暑(しょ)気(き)払(ばら)いのビールのつまみとしては、おいしいネタになる。
 ビールの欠(けっ)点(てん)は、楽(たの)しみの最中(さいちゅう)の「ちょっとトイレ」にある。生(なま)ビールにはその弊害(へいがい)が少(すく)ないようで、かつては愛飲(あいいん)していた。酒席(しゅせき)も選挙も、中断(ちゅうだん)や出直(でなお)しが続(つづ)くのは、どうにもよろしくない。さて、今度はどうなるか。にわかにビールが恋しくなってきた。
                               北国新聞より

梅雨しとど

2016-07-12 08:36:23 | 日記
梅雨しとど
纜(ともづな)も旅の心も梅雨しとど 素十
また一人名優の逝き梅雨しとど   拙

 「夢であいましょう」「黒い花びら」「上を向いて歩こう」「こんにちは赤ちゃん」。曲名を並べ、不思議だなあと首をひねる。なぜか曲名だけで次の歌詞が自然と出てくる。
 「黒い花びら」の曲名を見れば「静かに散った」と、「見上げてごらん夜の星を」と見れば「小さな星の」と浮かぶ。どんな仕掛けか。もう一度、曲名を見る。曲の歌い出しがそのまま曲名になっていることに気がつく。
 直球にして明快な方法である。覚えやすさの点で優しさも感じる。書いたのはそういう方だったに違いない。いずれも作詞は亡くなった永六輔さん。往年の「六、八(作曲家の中村八大さん)、九(歌手の坂本九さん)」の間を埋める、ちゃめっ気か七日に逝く。八十三歳。
 放送作家に作詞家、タレント、文筆家。マルチな活躍の一方、絶えず権力を見張る側にいた方である。安保反対にわく一九六〇年、「デモと番組とどっちが大切なんだ」と聞かれ「デモですね」と台本を書いていた番組を降板。「上を向いて歩こう」には安保闘争の挫折の悲しみを込めた。
 五四年ごろか、戦力を持たぬはずの日本に戦力があると皮肉るコントをNHKラジオの娯楽番組に書いている。「いないいないばあっ!自衛隊」。
 選挙に勝つため不利な争点を隠す「いないいないばあっ!改憲」の時代に直球、明快のガンコ者との別れが何とも心もとない。
                                         東京新聞より

心太

2016-07-11 14:46:18 | 日記
心太
浅草の辛子の味や心太 久保田万太郎
先代の遺影を店に心太      拙


この町には二軒の料理店がある。大きい方の店「J」の経営は風変わりで、できる料理はカレーライスとハンバーグのみ。どちらも大した味ではない。見るのも嫌という人もいる。
 試しに住民に聞いてみた。アベノなんとかというカレーライスを六割の人がまずいといい、改憲ハンバーグは五割がひどいと答えた。二つのメニューのいずれも人気がない。それでも、町のレストラン選挙ではいつも、もう一店の「M」を引き離し、勝ってしまう。
 おかしい。あの店においしい料理はないのに。結果を疑った「M」の店主は探偵に調査を依頼した。探偵は選挙後、町の住民に聞いて歩いた。「あのカレー? ひどいね」「あのハンバーグは絶対許せない」。悪評しか聞こえてこない。
 やはり不正投票の可能性がある。探偵は事実を知らせようと「M」に飛び込んだ。「やはり不正…」と言いかけてやめた。この店の様子もおかしい。
 メニューを見た。「あの店のカレーはまずい」「ハンバーグは絶対阻止」と書いてある。「おいしい料理を作りたい」「こうやっておいしくします」と決意やアイデアもある。しかし、今すぐ提供できる料理がメニューのどこにも見当たらない。
 探偵は店を出た。向かいに「J」が見えた。おなかをすかせた客がカレーを食べている。喜んで食べている人もいる。疑いながら、泣きながらの客もいる。
                           東京新聞より