最近 あたしが眠る時 大谷は決まって腕枕をしてくれる。
『・・・・あたしの頭重いから しびれ切らしてしまうで?』って聞いて見たら
『リサの頭ひとつぐらいで 痺れたりしぃひんから 安心して腕枕されとけ(笑)』
なんて耳元で答えられた。
あたし大谷の声 スキやなぁ…
痺れるのは大谷の腕より あたしの胸の中かもしれん。
大谷とくっついてたら寒さなんてふっ飛んでしまう
ただ寄り添って眠りに落ちるこの瞬間
だいすき
だから...
『ほな 大谷お邪魔しまんにゃわ』
『ほいっ どーぞ』
規則的に上下する腕の付け根に額を寄せる。
あたしは大谷の匂いに抱かれて、このまま眠ってしまうんが惜しいなって思う
もし この時間を永遠に味わえるんなら 朝なんかこなくてもええのに
『大谷 あのな…』
『ぐぅー』
大谷の寝つきは 恐ろしく早い。
なんでこんなに早いんやろって感心してしまうほど(笑)
あたしは愛しい人の寝顔を盗み見る
何回みてもその寝顔に キュンキュンしてしまう
あとどれぐらい こうしていられるんやろう
いつか この寝顔も大谷の全ても手放してしまわんなあかんときが来るんやろか?
この間会社のお疲れ様会で いろんな人にいろんな事いわれて少しあたしは参ってた
『彼氏と結婚は?』
『してないんなら 若いんやから一人の男だけにせんと』
『なんならオレと』
『別れるんなら今や』
『どうせ熱病や』
なんて好き放題の言葉。
今のあたしには なんの確証も約束もない
もし大谷といつどんな別れ方をしても、大谷の顔を忘れたない。
そして声を、体温を、触れたすべてを忘れたない。
こんなに傍にいて寄り添えた日々を、決して忘れたない。
『あかんおセンチモードに突入してしもた。』
ふいにこぼれた涙が 大谷の腕に落ちた。
抑え切れない嗚咽と感情をベットに押し付け消そうとしたのに…
『リサ どんしたんや?』
と大谷は ふいに起きてしまった。
『ごめん、起こし…』
『それはええねん リサ なに泣いてんねん』
寝ぼけ眼の大谷が あたしの頬に流れる涙を拭った
『おなか痛いんか?デザートのケーキ食いすぎやったし…』
『ちゃう…』
あたしは 首を振って、上半身を起こそうとした大谷にしがみついた。
大谷は困りながら、それでも自分の胸の上で泣きじゃくるあたしの頭を撫でてくれた。
『恐い夢…でも見たんか?』
『・・・・』
『リサ?』
大谷の声は優しく 耳を押し付けた温かい胸から響いてくる。
『ちゃうの…だいじょうぶ…やから』
あたしは声を振り絞った
一度不安スパイラルに陥ると涙は止まってなんかくれない。
恐い夢
たしかにそうかもしれへん。未来の幸せは確定的やない
だからいつまで この腕に大谷の胸に寄り添えるのか誰にも保障できひん事なんやから…
『大丈夫ちゃうやろ?こんな時にその言葉使うん間違っとると思うで』
『だい…』
『全然そうはみえへんで…』
大谷はあたしの顎をくいっと上に上げて ひどく濡れた顔を見つめる
『大谷・・・。』
『なに悩んでるんか ゆうてくれんとわからんけど…大丈夫やから』
見上げた大谷の瞳は あたしの心を見透かすように細められていた。
そして大谷は いつものようにぎゅっとあたしを苦しいほど抱き寄せた。
大谷の鼓動が、これ以上ないくらい傍にあった。
『頼りないかもしれんけど オレがおるから ずっとイヤっちゅうほど そばにおるから…』
あたしの頭をくしゃっとして何度も囁く『大丈夫』という言葉
魔法みたいにあたしの駆けていた鼓動が静まっていく。
『・・・う゛ん゛。』
涙でぐしゃぐしゃで鼻に詰まった声で全然 かいらしくないの相槌。
でも大谷は あたしの額にキスを一つ落とした。
『あと言い忘れ… オレはリサしかいらんから…おやすみ。』
いつの間にこんな事ゆうてくれるようになったんやろうなんて思いながら
泣きつかれたあたしは 愛しい人の腕枕で、永遠を夢見ながら眠りについた。
END
いつの間にか泣いてました…
こんな二人、すきです。