対ロシア制裁に反対しているハンガリーで、政府の森林保護の規制緩和に反対する環境活動家の抗議デモが起きている。ハンガリーはロシアから天然ガスの供給は受けているものの価格は上昇しており、「ハンガリー政府は8月上旬、暖房用の需要が高まる冬に備えてまきの供給を増やすため、森林伐採の制限を緩和する措置を承認した」（「親ロのハンガリーも物価高、インフレ対策に抗議広がる」 2022/8/18 日本経済新聞WEB版）。このインフレ下においてまき供給増を妨げるデモは、一般市民にとっては過激派のデモとしか映らないだろう。森林保護規制緩和などを行ったかはわからないが、冬季の暖房を森で採取する薪に依存しようとしているのはポーランドやチェコも同じである。しかし、両国でこのような抗議デモが起こっているという話は寡聞にして知らない。キエフでのポーランド人特権法成立で、実質的なウクライナ併合にうかれる欧州最大の産炭国ポーランドも、ロシアからの石炭輸入を禁止した影響で石炭価格高騰に苦労している（「EU 5月にロシア産石炭の輸入を大幅拡大」 2022/7/20 SPUTNIK日本）。
また、「英国のエネルギー規制当局は26日、家庭の電気・ガス料金水準の大幅な引き上げを発表した。年間の光熱費は標準世帯のモデルケースで10月から3549ポンド（約57万円）と、現在の1971ポンドから80%高まる」（「英国、家庭の光熱費8割上昇 エネルギー高騰で10月から」 2022/8/27 日本経済新聞WEB版）。米国でも電力価格高騰で多くの家庭で公共料金支払いに遅延が発生（“A ‘Tsunami of Shutoffs’: 20 Million US Homes Are Behind on Energy Bills” 2022/8/24 Bloomberg）。光熱費高騰で両国とも家計は火の車だ。欧州での電力ひっ迫は政府予測よりも悪い可能性もあることが指摘されている（”Listening to European Electricity Traders Is Very, Very Scary” 2022/8/26 Bloomberg）。
三井物産と三菱商事はロシアのガス田サハリン2を運営する新会社への出資継続を通知する予定だが、「ロシア側が両社の意向を承諾するかは不透明で難しい局面が続く」（『三井物産と三菱商事、「サハリン2」出資継続通知へ』 2022/8/25 日本経済新聞WEB版）という。プーチン大統領周辺のロシア安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記が、『日本について「全力でロシア嫌いの世界的運動における主導的な立場を占めようとしている」と批判』（『プーチン氏側近 「反ロシア運動を主導」と日本を批判』 2022/8/19 日本経済新聞WEB版）する中、日本企業が順調に液化天然ガス（LNG）の供給を受けることは困難だ。現に、サハリン2の新運営会社は新たな顧客探しを模索している（「サハリン２、ＬＮＧの新たな市場と買い手を模索＝ＣＥＯ」 2022/8/26 ロイター）。例え、出資継続が認められたところで、LNGタンカーも不足している。既に、「限られた数の船舶で輸送される限られた量のガスをめぐり、猛暑でガス需要が急拡大した韓国や日本との間で競争が起きて」おり、「新造のLNGタンカーの価格は、需要増を背景に上昇している」（「【焦点】欧州ガス危機、世界的なLNGタンカー争奪戦激化」 2022/8/23 ダウ・ジョーンズ配信）。タンカーがなければ輸入に支障が出る。細川昌彦明星大学教授は、「日本の発電にどれだけ影響あるかというと、電気の供給量の中で3％の予備率をもっていないといけないと言われていますが、この冬はロシアから天然ガスが来なくなると、マイナスになる。停電覚悟です」（『不透明な「サハリン2」問題 この冬は“停電覚悟”か!?』 【Bizスクエア】 2022/7/31 TBS NEWS DIG Powered by JNN）。
欧州と異なり、日本にはまきで暖をとれる暖炉がある家はほとんどない。炭で暖をとる囲炉裏のある家もほとんど残っていないだろう。子どもの頃には、風呂の焚き付けに使うため松ぼっくりを拾ったこともあるが、現在、ガスや電気以外で沸かす家庭用の風呂はどれだけ残っているだろうか？北国を除いて欧州の冬より温暖だろうが、日本も冬の暖房の問題は深刻である。
