投資家の目線

投資家の目線924(GDP(購買力平価ベース)がBRICSに追い抜かれたG7)

 2022年、購買力平価ベースのGDPで、BRICSがG7を追い抜いた。全世界に占める割合はG7の30.39%に対してBRICSは31.59%である(”Economic policy : How BRICS countries have overtaken the G7 in GDP based on PPPs” THE TIMES OF INDIA 2023/4/9)。BRICSのGDPは今後も急拡大するだろう。イラン、アルゼンチン、アルジェリアが加盟を申請しているからだ。さらに、今年のBRICS議長国南アフリカの準備担当者アニル・スクラル氏は、「南半球の数十カ国がBRICSの一員になることを求めている」と述べている(「西側の圧力はBRICSの協力関係を強めただけ=南アフリカ当局者」 2023/4/8 SPUTNIK)。

 

 トルコ紙「Dunya」が専門家の分析をもとに伝えたところによると、輸入依存度が高く一次エネルギーの化石燃料の割合も高いため、「1バレル=100ドルになった場合、もっとも影響を受けるのは日本、インド、ドイツ、フランス、韓国の5カ国だという」(「OPECプラスの減産 最も大きな影響受けるのは日本経済か」 2023/4/8 SPUTNIK)。このうち、日本、ドイツ、フランスはG7の国であり、原油高はG7の経済をさらに縮小させる要因となる。以前にも書いたが、昨年、日本の最大の石油輸入国サウジアラビアのムハンマド皇太子は訪日をキャンセルしてカタールのサッカーW杯開会式に出席した(投資家の目線906(日本の石油輸入は大丈夫か?))。日本の石油輸入は覚束ない。

 

 原発の濃縮ウラン燃料にしても、ロシア産を代替するのは難しいようだ。露エネルギー発展基金代表のセルゲイ・ピキン氏は、「ウクライナを見てみよう。ロシア産から米国産の燃料に移行しようと10年間も試みている。かなりの労力を費やして、一部の原発では移行に成功している。だが、その他の場所ではいまだにロシア産が使われている。目的に沿う技術が必要なのだ」(「西側はロシア産ウラン燃料の代わりを見つけられるか 解決は容易ではない」 2023/4/13 SPUTNIK)と、技術的な要素でロシア産ウランからなかなか脱却できない理由を述べている。以前述べたとおり(投資家の目線883(原発再稼働は可能なのか?))、日本の最大の濃縮ウラン輸入国は米国だが、「米国は2020年に必要なウランの約46%をロシアと、ロシアとの関係が深いカザフスタンやウズベキスタンから調達した」(「ウラン供給支配するロシア、米は核燃料調達に不安」 2022/3/23 ダウ・ジョーンズ配信)。そもそも、米国が制裁のためロシア産ウランの輸入を止めたら、米国内でウラン燃料不足が起きるのではないか?LNGに関しては、シノペックがカタールのプロジェクトに出資する(「シノペック、カタールの大規模LNGプロジェクトに出資」 2023/4/15 新華社通信)。

 

 G7の喫緊の課題としては、ウォーレン・バフェット氏が「銀行破綻は終わっていない」(『バフェット氏、米銀破綻「終わっていない」-預金者はパニック不要』 2023/4/12 Bloomberg)と言う通り、米国の金融不安も挙げられる。G7は経済でBRICSに抜かれた現実を直視する必要がある。しかし、議長国日本の外相が、「法の支配に基づく国際秩序を守り抜くというG7の強い意志を力強く世界に示したい」(『林芳正外相インタビューの要旨 「G7で国際秩序守る」』 2023/4/14 日本経済新聞電子版)と言っている。こんなことでは5月のG7サミットでも、G7は「先進国」という夢想に浸ったまま「裸の王様」から脱却できないように思う。

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