投資家の目線

投資家の目線642(日本企業の不正と日米経済対話)

 神戸製鋼所のアルミ・鋼製部材の品質データを改ざんしていたことが公表された。同社のアルミ素材は多くの自動車メーカーや、三菱重工業のロケット、JRの新幹線をはじめとする鉄道車両など約200社に供給されているという。先日は日産自動車が無資格の従業員に完成検査をさせていたという不正が公表された。貿易赤字を問題視している米国政府に日本製品を輸入規制して対日貿易赤字を解消する正当な理由を与えているようなものだ。なお、VWは排ガス不正問題で巨額の和解金を支払っている。

 神戸製鋼所のアルミ等の部材は米国のGMやフォード、欧州のダイムラーやエアバス社にも供給されており、海外で訴訟沙汰になる可能性もある。エアバッグのタカタの経営破たんは米国での訴訟が主因だった。

 また、米国カリフォルニア州で売られている某社の海苔の佃煮のパッケージに、「This product contains chemicals known to the State of California to cause cancer , birth defects or other reproductive harm.」という警告が書かれているのを写真で見た。週刊金曜日2017年4月7日号の「新・買ってはいけない」で『「調味料(アミノ酸等)」が添加されている食品を多食すると、痛風を引き起こす、乳幼児の脳細胞を損傷する、目の損傷、塩分の過剰摂取、食用油との加熱で変異原性物質発生…などの懸念が次々と報告されています』と書かれていた。「調味料(アミノ酸等)」の主成分はMSG(グルタミン酸ナトリウム)で、カリフォルニア州での警告の主因と思われる。また、土壌汚染があることが分っている豊洲市場に移転するのに、その市場で取引された海産物から豊洲由来の汚染物質が検出された場合の訴訟リスクについて考えているのだろうか?こんなことでは米国への食品輸出も難しい。

 カリフォルニア州では、2018年モデルから排ガスゼロ車が販売数量の一定比率を超えないと罰金が科される規制が厳しくなる。トヨタで排ガスゼロ車規制に対応できる車はプリウスPHV(プラグインハイブリッド)ぐらいしかない。トヨタのEV(電気自動車)は小型すぎ、FCV(燃料電池車)を投入するにしても燃料を補充する水素ステーションは、シェルがホンダやトヨタの協力を得て、同州に7か所整備することが報じられた程度である(「シェルが米国で水素ステーションを拡充、トヨタやホンダが支援 カリフォルニア州に7カ所設置」 2017/9/21 日経テクノロジーonline)。日本の自動車産業も窮地に立っている。

 安倍首相は2月の訪米時に、米国に対して約17兆円を投資して70万人の雇用を生み出す計画を約束している。最悪の事態は、米国への輸出ができなくなったうえに、約17兆円の米国投資を要求される場合だろう。日本の雇用にはマイナスだが、日系メーカーは米国で約17兆円の設備投資を行い、現地生産を増加させ、米国での雇用を増やすことで米国への約束を果たす方法が賢明ではないかと思う。

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