投資家の目線

投資家の目線723(トランプ米大統領来日)

 先週、トランプ米国大統領が来日した。『トランプ氏は27日の日米首脳会談の冒頭でこう発言した。「たぶん8月には我々は何かを発表できるのではないかと思う(I think we will be announcing some things, probably in August)」。』(『貿易交渉、揺れるシナリオ、米大統領「8月発表」で波紋、正式妥結、なお時間、米、早期成果求める懸念も。』 2019/5/30 日本経済新聞 朝刊)と述べた。2017年2月に安倍首相自ら提案しながら、逃げてばかりで少しも前進しない日米経済対話に業を煮やしたのだろう。日米間に既に密約があるのではなく、交渉に期限を設ける経済版ハルノートのようなものだと思う。

 TAGの交渉担当者である茂木大臣とライトハイザー米通商代表部代表は報道に登場したが、日米経済対話の日本側担当である麻生副総理は存在感がなかった。朝日新聞デジタルの2019年5月26日18時08分の記事に『日米首脳ゴルフ「岸信介は1回、安倍さんは5回」麻生氏』という新潟県新発田市内での講演の記事があったが、来日したトランプ大統領を避けて新潟に行ったのか?25日14時過ぎに東京駅八重洲口を警護されながら歩いていた帽子の人物は麻生氏で、新潟行きの新幹線に乗車するところだったのだろうか?麻生氏といえば、昨年11月に日米経済対話の米国側担当者ペンス副大統領が来日した時も、1日目は第1次世界大戦終戦100周年記念式典に出席し、帰国後も経済対話はしないと閣議後の記者会見で発言した(『麻生財務相「防衛費、国際情勢次第で増やす必要ある」 中国との安保関係は厳しいとの見方』 2018/11/13 日本経済新聞WEB版)。

 28日には、米財務省の為替の監視リストが発表され、「2018年10月の前回に続いて監視リストに指定したのは、日本と中国、ドイツ、韓国の4カ国。新たにイタリア、アイルランド、シンガポール、マレーシア、ベトナムが加わった。」(「米財務省、日中など9カ国の為替監視 対象を拡大」 2019/5/29 日本経済新聞WEB版)。5月31日には、インドを一般特恵関税制度の対象から外すと発表している(「トランプ大統領、インドを一般特恵関税制度の対象から除外」 2019/6/1 Bloomberg)。これらの取り扱いは、巷でいわれる中国包囲網関係なし。米国で商売したければ、米国でモノを作れということだろう。

 「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(マックス・ヴェーバー著、大塚久雄訳、岩波文庫)に、『戦争や海賊とおなじく、規範に服することのない自由な商業も、他部族や共同体外の人々との関係では差し支えないものとされていた。「共同体内部」の関係では禁じられていたことも、そうした場合は「対外道徳」のこと落として許されていたのだ。』(p54-55)、『クロムウェルはダンバーの戦闘(一六五〇年九月)ののち長期議会に宛てて「乞う、一切の職業の濫用を改革せられよ。もし少数者を富ますために多数者を困窮にするものがありとせば、かかることはコモンウェルスにとってふさわしからぬことである」と書き送っている』(p116)と書かれている。キリスト教圏でないアジア諸国では、多額の貿易黒字を抱えても問題視しないが、他の宗教の信仰や無宗教の人が増えているとはいえプロテスタントが主流の米国では、多額の貿易黒字を抱えることは倫理に反すると捉えているのではないだろうか?対米輸出は米国で商売することであり、米国で商売するなら米国人の倫理観に沿ったやり方をするのは妥当だろう。日米貿易問題には、倫理や道徳観が異なる相手と商売する難しさが出ていると思う。

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