投資家の目線

投資家の目線609(日本の雇用状況)

 2017年春大学卒業予定者の就職内定率は85%と1996年度の調査開始以降最高を記録した(2016年12月1日時点 文部科学省、厚生労働省調べ)。同じく高校卒業予定者は90.9%で、7年連続で上昇している(2016年12月末時点 文部科学省)。しかし、最近希望退職者の募集の記事もよく見る。2016年4月以降日本経済新聞等で報道された、上場企業の希望退職募集人数は以下のとおりである(募集中でない会社は応募人数)。

・製造業
田中精密工業 163人
ニコン 1143人
サンデンホールディングス 200人(募集中)
東海カーボン 50人(募集中)
サニックス 391人
ウシオ電機 約100人(募集中)
倉元製作所 130人(募集中)
岡本硝子 29人
岩崎通信機 206人

・消費、サービス業
シーズメン 35人(募集中)
ラピーヌ 61人
東京ソワール 30人(募集中)
三陽商会 249人
そごう・西武 350人(募集中)
メットライフ生命 400人(募集中)
ゲームカード・ジョイコホールディングス 80人(募集中)

追記:さくら野百貨店(非上場、仙台)自己破産で約120人解雇

 HOYAは被災した熊本工場閉鎖に伴い、希望退職や他の拠点への転属を検討していた(「HOYA、熊本工場を閉鎖 地震で被災」 日本経済新聞WEB版 2016/6/21)。また、リコーは埼玉の生産拠点を閉鎖するが、神奈川県海老名市、厚木市や静岡県御殿場市に移動できない場合は早期退職、本社人員を半減して営業に振り分けるが新しい売り方ができない営業スタッフは削減する(「リコー、埼玉の生産拠点閉鎖へ 複写機の競争激化で」 日本経済新聞WEB版 2017/2/8)。希望退職は募集しないまでも、人員削減になるだろう。

 東芝は2016年末に1912億円の債務超過に陥っており、事業の構造改革は待ったなしだろう。不正会計発覚後、同社の取引先も減少している。欠陥エアバック問題の罰金や賠償で揺れるタカタも法的整理や私的整理が取りざたされている。これは雇用の不安要因だ。米トランプ政権の要望に応じて日系自動車メーカーが米国での現地生産を拡大、部品の現地調達比率を上げれば、これも日本の雇用にマイナスだろう。また、大手企業の方が給与水準は高いと考えられるので、大手企業の人員削減は消費支出のマイナスにつながるのではないだろうか?

 昨年休廃業した企業は2万9500件を超え過去最多となる見通しだ(「企業の休廃業・解散最多、昨年2万9500件超す、梼Y減も中小苦境、目立つ後継者不足。」2017/1/14 日本経済新聞 朝刊)。これも雇用の懸念要因だ。


追記:
「実際、日本の自動車は現地生産分も含めるとアメリカの自動車市場全体の37%を占める一方で、アメリカ車は日本市場のシェアは0.3%にも満たないという有様だ」(「アメ車が日本で売れないワケ #BLOGOS」)。このように米国で日系自動車メーカーが目立ちすぎるのが今回の日米自動車摩擦の原因だ。日本のメーカーは、輸出の自主規制するか、現地生産を増やしたり、部品の現地調達比率を上げたりするぐらいしか米国市民を納得させることはできないと思う。
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