投資家の目線

投資家の目線751(ベネズエラのハイパーインフレ)

 ベネズエラのハイパーインフレが終息に向かいつつあるという。「物資を海外から輸入するうえで障害になっていた為替の二重レート制をマドゥロ政権が事実上廃止し、ドルの国内流通も容認した。輸入がしやすくなり、物不足が解消してきた。」(「ベネズエラ、物価高騰緩む、二重レート廃止、物不足解消、社会混乱なお深刻。」 2019/12/17 日本経済新聞 朝刊)と報じられている。

 アイルランド出身の記者、ローリー・キャロルの著書「ウーゴ・チャベス ベネズエラ革命の内幕」(伊高浩昭訳 岩波書店)には、「コロンビア産のコカインは長年、ベネズエラを経由して欧米に運ばれていった。それは司令官の下で小川になり、やがて川になった。(中略)一方で司令官は、忠誠と引き換えに将軍らに蓄財を許していた。これは、ベネズエラの初期の大統領たちの時代から続く習慣だった。」(p164)という。チャベス氏は軍出身なので、これをコントロールできたが、労働組合出身のマドゥロ氏にはできないのかもしれない。無理にその利権を取り上げようとすれば、クーデターが起きて政権が転覆するかもしれず、そう簡単ではなさそうだ。

 マドゥロ政権のハイパーインフレ期に、住民たちが生きるためにごみをあさっていることが報じられていたが、グアヤナ市郊外で、「このおぞましい光景はチャベスが創造したものではない。ごみあさりは以前からあった」(同前p199)という。これでは社会制度自体を変えないと、政権を唐オても同様のことが起きるだろう。

 石油収入を、「CADIVI(通貨管理委員会)」の内部者が隠れて対外投資し、蓄財していることも書かれている(同書p156)。ただし、「メキシコ・ベネズエラ等中南米の国々は、先進国が折角資金援助しても、その半分はその年のうちに資本逃避で戻って来てしまう。」(「国際金融からみた累積債務問題 債務危機の構造」 熊田浩著 マネジメント社 p99)と、ベネズエラの資本逃避は80年代以前からあったもので、チャベス時代以降の傾向ではないこともわかる。

 「森友学園・加計学園事件」のような縁故者への利益供与や、総理大臣主催の「桜を見る会」に反社会的勢力とみられる人物が招待されたことなど、安倍政権も腐敗政権である。ただし、長年にわたり、原発の立地する高浜町の元助役から関西電力幹部などに金品が供与されていたことが発覚するなど、日本社会全体の腐敗の根は深い。日本でも、「個人の外貨預金の残高は7兆円を超え、過去最高の水準を更新し続けている。」(「外貨預金、円安圧力に、小幅値動き、ドル買いを後押し、残高7兆円超、最高更新(ポジション)」 2019/12/19 日本経済新聞 朝刊)という。国内の低金利に耐えかねた動きかもしれないが、ベネズエラで起きているような資本逃避の動きのようにも見える。

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