米国では、万引き犯の凶悪化が報じられている(「【焦点】米国で万引が凶暴化、店員殺害事件も」 2023/9/19 ダウ・ジョーンズ配信)。同記事によれば、米アリゾナ州ではドラッグストア「CVS」の店長が万引き犯の男性に逆恨みされて射殺され、カリフォルニア州のホーム・デポでは万引きを見とがめられた女性容疑者が従業員を射殺、米百貨店チェーン、ノードストロームは同州のショッピングセンター内で発生した強盗事件の動画が拡散された。テネシー州のドラッグストアチェーン大手ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスの店舗では、万引き犯の女性から催涙スプレーを噴射された店員が犯人に発砲する事件が発生した。これではまともに商売を営むことはできない。
ジョージア州では4月下旬、スポーツウェア専門店のルルレモンで万引きを止めようとした店員が安全を理由に解雇されている。「盗難が起きた場合にかかわりを持つことについては、一切容認しない方針で教育担当者を訓練している。それは従業員と客の安全を最優先しているからだ」(「万引き止めようとした店員を解雇 ルルレモン、安全最優先の方針強調 米」 2023/6/7 CNN)という。全米小売業協会の報告書によると、万引事件に対し「中小企業は犯罪に対抗するための資金が少なく、店舗の移転も容易ではない。CVSやホーム・デポなどの大手チェーン店では、万引犯に立ち向かわないよう店員に指示しているケースが大半だ」(「【焦点】米国で万引が凶暴化、店員殺害事件も」 2023/9/19 ダウ・ジョーンズ配信)と、大手企業は窃盗犯を追いかけることに消極的だ。「ロサンゼルス市のホームレス対策局の統計によると、ロサンゼルス郡だけでホームレスは7万5000人以上に上る」(「米カリフォルニア州で車中生活者が増加」 2023/9/16 parstody)など、カリフォルニア州ではホームレスの増加もあり万引きは減りそうにない。バイデン大統領が銃規制を訴えても、息子が銃の違法所持で起訴されているようでは(「米検察、バイデン大統領の次男を起訴 銃の違法所持めぐり」 2023/9/15 日本経済新聞電子版)説得力を持たない。
ロシアはガソリンとディーゼル油の輸出を禁止した(「ロシア、ガソリンとディーゼル油の輸出を禁止-国内供給優先」 2023/9/21 Bloomberg)。米国ではガソリンだけでなく、トラックのようなディーゼルエンジン搭載車に必要なディーゼル油も高騰している。コンテナへの窃盗事件の頻発、鉄道では貨物列車の脱線、橋梁の崩落などインフラストラクチャーの老朽化で、米国では物流は止まるのではないだろうか?地域の雇用を守るはずの中小企業は、人件費高騰だけでなく高金利も利益率の低下要因になり苦しんでいる(「米中小企業経営者、高金利による悪影響は長期化すると指摘-調査」 2023/9/20 Bloomberg)。これで米国経済がソフトランディングするとの予想も出ているのは信じがたいことだ。
追記:2023/9/27
↓窃盗犯の影響で小売り大手のターゲットが9店舗閉鎖。治安の悪化で店舗閉鎖が続けば、商業用不動産のオーナーも賃料が入らず経済的危機では?
米ターゲット、4州9店舗を閉鎖へ-窃盗犯罪による損失抑制を狙う 2023/9/27 Bloomberg