投資家の目線

投資家の目線916(NATOに弾なし)

 北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長が、ウクライナの弾薬消費量が同盟国の生産量の数倍にも達し、「大口径の弾薬を受け取るまでの期間は12カ月から28カ月に延びており、現在発注しても納品は2年半後になる」(「【ウクライナ】弾薬の消費ペースが生産上回る-NATO事務総長」 2023/2/14 Bloomberg)と発言した。弾薬不足は米国でも指摘されている。『ウクライナで使われている兵器の量の多さは、国防総省の幹部を驚かせた。米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は、「米国の防衛産業基盤に対して得た大きな教訓の1つは、消費のスピードがかなり速いことだ」と述べた』(「【焦点】ウクライナ戦争、いまだ米防衛産業の助けにならず」 2023/2/1 ダウ・ジョーンズ配信)。しかし、『レイセオンはロシアのウクライナ侵攻以前、海外の顧客向けにスティンガーの生産を続けていた。しかし、サプライヤーの一部が廃業し、生産拡大のために部品の設計を変更せざるを得なくなった。(中略)国防総省の兵器調達責任者のビル・ラプランテ氏は「実質的に閉鎖されたり、散失してしまったりしたシステム全体を再建しなければならなかった」と述べている。(中略)武器弾薬の注文が減って、企業が防衛事業から手を引き、工場が閉鎖されたため、米国内ではしばしば、重要部品の供給元が1社だけになるといった事態が起きた。』(同)、米陸軍の購買責任者ダグラス・ブッシュ氏は、『2月と3月にさらに大きな契約が続くとの見通しを明らかにし(中略)「米国の防衛産業にはこれに応じる能力も意欲もあると信じている」とした上で、「ただし、簡単なことではない」と語った。』(同)と、弾薬の補充は容易なことではないことを米国防関係の幹部も認めている。弾薬の無い兵器は使い物にならないと思うが、そんな全体像を考えることもできずに武器支援を行おうとするNATO首脳部は無能とボンクラの集まりなのだろう。NATOは日韓豪NZと首脳声明を出すことを検討している(「NATO、日韓豪NZと首脳声明検討 中ロへ対抗鮮明に」 2023/2/16 日本経済新聞電子版)というが、「僕はもう唯一の解決策ははっきりしていると思っていて、結局、高齢者の集団自決、集団切腹みたいなものではないかと」(『経済学者・成田悠輔氏の「高齢者の集団自殺」発言 日本メディア“ガン無視スルー”のなぜ』 2023/2/15 日刊ゲンダイDIGITAL)などと、ジム・ジョーンズのカルト団体「人民寺院」を想い起させる発言をする者がマスメディアでもてはやされる日本は、欧米諸国にとっては忌避すべき国だろう。

 

 アジア諸国の業者からの無許可の並行輸入で、米国企業製のハイテク製品はロシアに流入し続けている。「西側の制裁や輸出規制の対象でありながら、ロシアが輸入した製品は昨年3~11月で124億ドル(約1兆6400億円)相当に上った」(「【焦点】ロシア「並行輸入」の実態 米製品なお流入」 2023/2/15 ダウ・ジョーンズ配信)という。米国ハイテク企業としては、ロシアに輸出できなくなれば売り上げが落ちる。アジア諸国の業者が無許可でロシアへ輸出を行えば売り上げは落ちず、米国企業にとってはありがたいことだ。企業活動を邪魔するような政権には、企業にとっては献金する価値がない。「並行輸入」についてうるさく言わないことが、米国の企業活動を維持しながらバイデン政権のメンツを守るための妥協点なのだろう。

 

 エア・インディアがボーイングから220機、エアバスから250機購入という過去最大級の取引をすることで合意した(「インド航空大手、米欧航空機470機を購入 過去最大級」 2023/2/15 日本経済新聞電子版)。これでインドは外交のフリーハンドを手に入れたと考えられる。ジョージ・ソロスが『アダニの疑惑追及に関連して「インドの民主主義の復活を期待している」』(「アダニ・グループ巡るジョージ・ソロス氏の発言、インドで波紋」 2023/2/17 日本経済新聞電子版)と野党勢力を煽っても、影響はないだろう。米中対立で中華人民共和国という巨大市場を失いかねない中、欧米旅客機メーカーにとってインド市場を失うわけにはいかない。モディ首相の機嫌を損ねて、この取引をおジャンにするような真似はできないはずだ。また、「空の旅の需要が回復したことで、防衛装備の機械・電子部品の製造に軸足を移していた企業が、ボーイングやエアバスのジェット機への供給業務に回帰したという事情もあった(「【焦点】ウクライナ戦争、いまだ米防衛産業の助けにならず」 2023/2/1 ダウ・ジョーンズ配信)。エア・インディアの取引は、NATOの兵器在庫の回復を遅らせる可能性もある。

 

 インドネシア財務相は「東南アジア諸国連合(ASEAN)は米国と中国のバランスをとり、緊張を緩和する重要な役割を果たせる」(『グローバルサウス諸国「世界の緊張緩和に役割」 インドネシア財務相 連携強化に意欲』 2023/2/15 日本経済新聞朝刊)と言い、フィリピンのマルコス大統領は台湾有事に関して、『実際に紛争が始まった場合は「フィリピンにとって何が良いのかを見極める必要がある」』(『フィリピン大統領インタビュー 台湾有事「巻き込まれる」 米への基地提供「見極め」』 2023/2/14 日本経済新聞朝刊)と語り、アジア諸国の多数は旗幟を明らかにはしていない。そもそも、インドから導入している超音速巡航ミサイル「ブラモス」は、インドとロシアの共同開発だ(「中国の南シナ海進出に悩むフィリピン、切り札導入へ インドから超音速巡航ミサイル購入」 2022/1/17  ニューズウィーク日本版)。

 

 ウクライナでは汚職疑惑のあるレズニコフ国防相がゼレンスキー大統領の求めで留任することになった(「ウクライナ国防相、留任へ 一時は交代の報道」 2023/2/16 日本経済新聞電子版)。ゼレンスキー政権は「横領」体質を改める気はなさそうだ。米国は「横領」を防止するために支援担当の監視官をウクライナに常駐させることを検討しているが(「米、ウクライナに支援監視官の常駐を検討」 2023/2/18 ダウ・ジョーンズ配信)、横領資金の一部が米国の政界工作に使用されれば、骨抜きにされるかもしれない。

 

 米国では、家計が苦しくコロナ下で蓄えた貯蓄を取り崩して生活する家庭が増えている(「米家計、コロナ下の蓄え取り崩し」 2023/2/7 ダウ・ジョーンズ配信)。年金を途中引出する家庭すら出現している(「【焦点】年金「401k」中途引き出し増加、生活苦の米国人」 2023/2/3 ダウ・ジョーンズ配信)。米国市民の多くは外国への支援より自国民の苦境を何とかしろと政府に対して思うのではないか?エネルギー価格の高騰でユーロ圏の2022年の貿易収支は過去最大の赤字となった(「ユーロ圏貿易収支、22年は過去最大の赤字」 2023/2/15 ダウ・ジョーンズ配信)。ウクライナでの戦闘支援に熱心なポーランドも、銀行が住宅ローン問題を抱え、経済は危機的状況だ(”Polish Assets Dive as Court’s $12 Billion Opinion Risks Crisis” 2023/2/16 Bloomberg)。欧州市民は、欧州各国政府のウクライナでの戦闘支援に納得しているのだろうか?

 

 『59歳で軍に加わった父親は所属部隊で1番の年長だという。所在を問うと「バフムト」と語りおえつをこらえた』(『ウクライナ侵攻1年 ウクライナ望郷 ポーランド避難民、探る自立 「ここで生活築く気になれない」』 2023/2/17 日本経済新聞朝刊)。59歳の老兵を激戦地に送り込まなければならない軍隊に勝ち目などない。ウクライナ兵は、自分たちをダシにして金儲けをしているゼレンスキー政権を打倒する方が、ロシアと戦うよりよほど賢明だと思う。

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