投資家の目線

投資家の目線915(「非先進国」に敗北しつつある「先進国」)

 インドのUSダラー決済離れは止まらない。インドの製油業者はロシア産石油をUAEの通貨ディルハム建てで決済したり(「インド製油業者、ロシア産石油のディルハム建て払い開始=関係者」 2023/2/3 ロイター)、LNGのインドルピー建て決済が検討されたりしている(「ロシアのノバテク、インド企業とLNG供給交渉 ルピーで決済も2023/2/6 ロイター)。中国の中央銀行、中国人民銀行は、ブラジル中央銀行との間でブラジルに人民幣による決済機関の設置に合意(「中国人民銀、ブラジル中銀と人民元決済機関の設置で合意」 2023/2/8 新華社通信)、BRICSを中心に非USダラー決済のためのインフラストラクチャー造りが進んでいる。

 

 アダニショックの後、『アジア有数の資産家ウダイ・コタク氏は「最近の出来事」でインドの金融システムにシステミックリスクが生じるとは考えないとしながらも、デットファイナンスとエクイティファイナンスの両面で大企業はグローバルな資金源に依存しており、国内での引き受け能力の強化が必要だと指摘した。インドの有力財閥マヒンドラ・グループのアナンド・マヒンドラ会長は、ビジネスセクターの今の困難な状況が、世界の経済大国を目指すインドの大望を妨げかねないとの疑念に対し、「何があっても、インドがうまくいかない方に賭けるべきではない」と反論した』(アダニ不正疑惑、インドの国家的問題に-グローバル投資家心理も懸念 2023/2/6 Bloomberg)。ウォール・ストリートによるインド奇襲攻撃は、グローバル資本に頼りすぎることは危険で、民族資本を育成して経済成長をしていく重要性もインドに認識させており、逆効果だったように思う。

 

 原油に関しては、ロシアの国営石油会社ロスフネスチのCEOは、ロシア産原油はインドへの輸出が増えたため、ウラル産原油の価格設定について欧州は主導権を失う旨発言している(「ロシア産ウラル原油、欧州は価格設定力を失う=ロスネフチCEO」 2023/2/6 ロイター)。また、サウジアラビアは3月積みの原油販売価格を引き上げる(「サウジ、3月積みの原油販売価格を引き上げ-市場の予想外」 2023/2/6 Bloomberg)。中華人民共和国の厳格な新型コロナ対策撤廃による経済の再開は、OPEC事務局長もイランのOPEC関係者も、原油需要や原油価格にとってプラス要因になると判断している(『OPEC事務局長、「より明るい」見通し想定-中国経済再開で』 2023/2/7、「原油は1バレル=100ドルにも、中国再開で-イランのOPEC関係者」 2023/2/8 Bloomberg)。

 

 昨年、米中貿易は最高水準に達した(「米中貿易、4年ぶり過去最高 日用品・食品など依存高く」 2023/2/7 日本経済新聞電子版)。米国も中国以外からの物資の調達を増やし、農産物の輸出先の多様化を目指すだろうが、依存度を減らすことはそう簡単ではなく、米中対立は短期的には米国にとって景気やインフレーションを悪化させる要因となるだろう。インフレーションは日本にとっても他人事ではなく、2月には食品価格が5463品目上昇し(「小麦、イカとエビ、卵に油…食材の値上げに悩むお好み焼き屋さん テイクアウト用の容器まで  2月は5463品と値上げの嵐 静岡」 2023/2/5 静岡朝日テレビ)、2月に入っても来月以降の食品の値上げが続々発表されている。さらに、目玉が飛び出るほどの電気代請求などエネルギー価格も高騰して市民生活は苦しくなっている。

 

 フランスが追い出される中、アフリカはロシアとの関係を強めている(「ロシア、軍事経済でアフリカ接近 外相2カ月連続訪問」 2023/2/8 日本経済新聞電子版)。日本の報道ではミャンマーとの関係に主眼が置かれるが、先日のASEAN外相会議では南シナ海の問題に関して東南アジアは中国との協議の推進、紛争防止に向けた行動規範について話し合われた(「インドネシア、南シナ海の行動規範実現に向け協議後押しへ」 2023/2/4 ロイター)。外交、貿易決済の動きを見ると、「非先進国」は今回の軍事衝突に関してロシア勝利NATO敗北の方にチップをのせている。

 

 一方日本は、北方領土返還要求全国大会で「不法占拠」の文言を明記し(『北方領土「不法占拠」5年ぶり明記 返還要求大会の声明』 2023/2/7 日本経済新聞電子版)、岸田政権は痛いところをついているつもりかもしれないが、ロシアにとっては痛くもかゆくもない挑発行為だけは行っている。岸田政権は正常な判断もできなくなっているようだ。さらに改憲や反撃能力保有などの軍事力増強をちらつかせて、周辺諸国に国際連合憲章の敵国条項抵触で日本を攻撃する口実を与えようとしている。敵国条項抵触なら、欧米の戦勝国は日本の肩を持つことはない。岸田政権は、市民生活を破綻させても、実現できもしない軍事力による「強い日本」という妄想に憑りつかれている。今春の統一地方選挙では自公候補を落選させ最低でも岸田文雄を政権から引きずり下ろさないと、日本は第二次世界大戦よりもひどい敗戦を迎えることになる。

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