投資家の目線

投資家の目線951(中欧から中東にかけて)

 ポーランドの選挙結果は、与党「法と正義」が第1党ではあるが、野党勢力が多数派を得た(「野党勢力が多数派確保 総選挙の開票終了 ポーランド」 2023/10/17 時事通信)。野党勢力は「法と正義」よりロシアに対して好戦的姿勢をとるとは思われないが、小麦輸出や第二次大戦時のポーランド人虐殺問題から、比較的に親EUだからといってウクライナ支援に向かうとは合思えない。第一次世界大戦後に独立したポーランドが最初に行ったのが、同国軍がソヴィエト・ウクライナへ侵攻するポーランド・ソヴィエト戦争だった。1938年のチェコスロヴァキア分割の時、「この決議が示唆するものはほかにもあり、ポーランド人とハンガリー人は、チェコスロヴァキアの分割による利権の分け前を受け取ることになるのだ」(「『ニューヨーク・タイムズ』が見た第二次世界大戦 上 1939~1942」 ダグラス・ブリンクリー編 池上彰日本語版監修 原書房 p74)。チャーチルが著書「第二次世界大戦」で指摘したようにポーランドは領土拡大意欲を隠そうとしない国であるし、英仏にとってミュンヘン会談時の相手はヒトラーのドイツだけでなく、その背後にポーランドやハンガリーがいたことがわかる。

追記:2023/10/24 

↓チャーチルの「第二次世界大戦」については以下の記事参照。また、ポーランドは第二次世界大戦直前に現在のリトアニアの首都ビリニュス周辺を併合している。

投資家の目線911(ポーランドをハイエナに例えたチャーチル)

 

 ハマスとイスラエルの対立は、イスラエル等によるガザ攻撃に焦点が移ってきた。イスラエルでは先頃「司法制度改革反対デモ」という名の「カラー革命」が発生した。最近、コーカサスから中東にかけて紛争が続いている。ナゴルノカラバフ紛争では、先月25日にトルコのエルドアン大統領がアゼルバイジャンを(『アルメニアに「誠実な措置」求める トルコ・アゼルバイジャン大統領が会談』 2023/9/25 時事ドットコム)、サマンサ・パワー米国際開発庁長官がアルメニアを(「米高官アルメニア入り、停戦後初 パートナーシップ確認へ」 2023/9/25 ロイター)互いに訪問している。イスラエル問題では、トルコ外相が『トルコを含む中東の周辺国がパレスチナ側、欧米など「ほかの国々」がイスラエル側の保証国になる』(『トルコ外相、パレスチナ和平へ「保証国制度」提案』 2023/10/18 日本経済新聞電子版)保証国制度を提案し、地域大国としての威厳を示そうとしている。一方、米国はバイデン大統領がイスラエルを訪問して同国を支援する姿勢を示し、この地域での紛争にはトルコと米国がよく顔を出している。「イランはハマスを支援し、影響力を持ちますが、指示して動かすわけではありません。ガザ地区のほか、カタールやトルコ、レバノンといった拠点にいるハマスの指導者たちが、決定を行います」(『「イスラエルの目的はハマスの壊滅」 中東は新段階の紛争へ 米識者』 2023/10/11 朝日新聞デジタル)と、ハマスにはイランだけでなくトルコも関係する。

 

 イスラエル方面に派遣される米軍は、ウクライナ支援で今でも不足気味の弾薬を、ガザ攻撃でさらに消費するつもりだろうか?ニューヨーク・タイムズが報じるところによれば、『パレスチナ・ガザ地区での戦争を口実にイスラエル占領地に米製新型兵器が輸入されていることに触れ、「ガザでの戦争は、武器販売が盛況となる直近の火付け役となり、米国の武器供給業者の利益と生産能力を補強することになった」』(『米紙、「西アジアでの戦争で米製兵器輸出市場が活況」 2023/10/19 parstoday)という。軍事企業にとって在庫を一掃することで売り上げは立つのだろうが、生産が追い付いているとは思えない。携帯型ミサイルの弾頭などは米国では手作業で製造され、製造しようにも廃棄された金型もあるという。オートメーション化はなされておらず、急な増産には対応できない。そもそも需要が安定しない弾薬の生産に巨額の設備投資をしては、紛争終了時には軍事企業にとって減損処理の対象となるだろう。バイデン政権は、ウクライナ、イスラエル、台湾支援の予算成立に躍起だが、企業に兵器の製造余力がなければ予算成立も意味をなさないだろう。

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