投資家の目線

投資家の目線678(アセットマネジメントOneの元本確保型投資信託)

 アセットマネジメントOneが、元本確保型の投資信託を設定するという(「アセマネOne、投信に元本確保型、未経験者を取り込み。」 2018/6/24 日本経済新聞 朝刊)。『アセットマネジメントOneによる調査では「元本割れへの警戒感」が投資を妨げる最大の理由だと分かり、新商品の開発につなげた』(同)という。

 まだ同社や販売元の大和証券のHPでは内容が開示されていない。日本経済新聞の記事によれば、

「国内外の株式・債券の運用成績に連動する特殊な債券を組み入れる。満期時には元本が原則戻るという債券の特性を利用し、投資資金の目減りを防ぐ。」
「運用期間は10年で、組み入れる債券は米金融大手ゴールドマン・サックスが発行する。」
「運用が不調なら債券の評価額は低下する。このため、10年間の運用期間中に投信を解約すると損失を被る可能性もある半面、満期まで待てば元本が目減りしないで戻ってくる。発行体の財務悪化で債券に悪影響が出ないよう、経営の安定度が高いゴールドマンを選んだ。」
「ヘッジ(損失回避)取引なども必要に応じて活用する。」

とあるのでそこから分析すると、ゴールドマン・サックスが国内外の株式や債券に連動するETNを発行する。満期まで保有した場合は元本確保されるが、ゴールドマン・サックス社の信用リスクを負っていると推測される。あるいは、アセットマネジメントOneも独自にヘッジ取引を行って、満期以外の期間でも元本確保を狙っているのかもしれない。

 この投資信託は元本をフロア(最低保証金額)とするポートフォリオインシュアランスの一種と考えられる。償還金額が決まっていない株式に投資しながら元本を確保するため、債券を発行するゴールドマン内部やアセットマネジメントOneで、デリバティブを利用してヘッジを行うポートフォリオインシュアランス運用を行っていると思われる。

 ヘッジのため先物を売り建てるポートフォリオインシュアランスは、ニューヨーク市場における1987年10月のブラックマンデーの原因とされた。一方、日本の株式デリバティブといえば、大阪証券取引所(現大阪取引所)で1987年6月に株先50が開設されたばかりで、当時のポートフォリオインシュアランスは現物株式を売買してポートフォリオの株式比率を調節していた。また株式を保管振替機構が保有している現在とは異なり、名義書換に時間がかかった。10月には多くの3月、9月決算銘柄が名義書換に出ており、売却できない株式も多かった。当時も低金利といわれたが、現在のゼロ金利時代には金利収入で株式の損失を補填することもできない。デリバティブ取引の発達でヘッジはしやすくなったが、ゼロ金利時代に元本保証型投資は難しそうだ。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「ファイナンス」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事