投資家の目線

投資家の目線684(千葉県の公金運用)

 千葉県が公金運用を見直すようだ。『低利が続く国債の保有割合を減らし、より有利な地方公共団体金融機構債や地方債を買い入れる。日銀は低金利政策を維持する姿勢を示しており、債券への投資拡大で運用益を確保する。(中略)定期預金金利は大口でも年0・01%にとどまっているほか、貸し出しが伸び悩む銀行側も「預金の受け付けには消極的になっている。18年度は預金への預け入れを必要最小限にとどめ、債券への投資を一段と加速する」(県出納局)。』(「県、公金運用テコ入れ、18年度末、債券投資12%積み増し、国債から地方債シフト。」 2018/8/9 日本経済新聞 地方経済面 千葉)という。

 債券投資には、

 金利変動リスク:金利変動に伴い債券価格が変動(特に金利上昇に伴い債券価格が下落)するリスク
 信用リスク:債券の発行体が元利金をスケジュール通り支払えなくなる(債務不履行)リスク
 途中償還リスク:債券が発行体により途中償還されるリスク。
 流動性リスク:債券の取引量が少なく、思い通りの価格で売買できなかったり換金に手間取ったりするリスク

等がある。

 一般財団法人地方債協会の「地方債のQ&A」によれば、「現行の地方債制度においては、地方財政計画の策定及び地方交付税の算定を通じて、元利償還に要する経費について所要の財源を確保するとともに、実質公債費比率等の財政指標が一定基準を超える地方公共団体について、段階的に早期是正措置としての起債許可制度、財政の早期健全化制度、財政再生制度を設けており、発行体である地方公共団体の財政状況の悪化が生じた場合であってもこれらの制度により確実に元利償還が行われます」とされている。よって、地方債は信用リスクについて心配する必要性は少ないだろう。また、同「債券の種類及び概要」によれば、公募地方債は満期一括償還が多く、途中償還リスクも少ない。しかし、金利リスクはもちろん存在し、また地方債は国債に比べて発行額が少ないため、流動性リスクは高まるだろう。

 地方公共団体金融機構債について、既往の政府債保証債の借換債以外の債券は一般債務より弁済が優先されるが、政府保証債ではないため、それなりに信用リスクはあるだろう。

 このように、債券の投資比率を高めれば、公金を運用する地方公務員にも金融市場の知識が必要になってくるだろう。

 東京都は、公金運用部門のキャリア活用採用試験で証券アナリストや国際公認投資アナリストの資格保有者には専門試験が免除されるようになっていた。金融市場の知識の重要性をうかがわせる措置だ。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「ファイナンス」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事