投資家の目線

投資家の目線731(日産自動車の経営不振と日米経済対話)

 日産自動車は、2019年4月~6月の連結営業利益が前年同期比99%減の16億円に落ち込んだと発表した。追加の人員削減も発表し、公表済み分と合わせて計12,500人になるという(「日産、1万2500人削減、生産能力1割減、営業益99%減、4~6月、海外工場閉鎖も。」 2019/7/26 日本経済新聞 朝刊)。北米部門の不振はカルロス・ゴーン会長の逮捕が痛手なのではないのだろうか。ブランド再構築といっても、同社の高級車ブランド「インフィニティ」は西欧市場から撤退する(「インフィニティ、2020年に西欧市場から撤退…小型車の英国生産も終了へ」 2019年3月13日 レスポンス)など、そう簡単ではないだろう。グループの三菱自動車も北米事業が不振で、2019年4月~6月の連結純利益が67%減の93億円に落ち込んだ(「三菱自、純利益67%減、4~6月、北米販売が減速。」 2019/7/25 日本経済新聞 朝刊)。大韓民国の現代自動車は、米国のレンタカー市場で日産自動車とライバル関係にあると聞く。その現代自動車は、ゴーン会長らが逮捕されたのちに日産を退職した元幹部をグローバルCOOに招き、米国での販売回復の役目を担わせるという(「現代自、日産元幹部をグローバルCOOに 米国販売回復狙う」 2019/4/19 日本経済新聞WEB版)。ライバル企業日産内部の状況を知る元幹部の登用は、現代自動車の経営戦略に有用であろう。ただし、日産グループの北米での販売不振は、日米貿易収支の改善には役立つ。

 参議院選挙が終わり、トランプ米大統領が5月の来日時に何かを発表できるのではないかと言っていた期限の8月がやってくるが、安倍政権はどうするつもりなのだろう?2017年9月、北朝鮮のミサイル発射を口実に、麻生副総理は日米経済対話前のペンス副大統領との非公式会談が予定されていた訪米を中止した。昨年4月には新たな経済協議を開始し、同11月に日米経済対話の米国側担当者ペンス副大統領が来日した時も、1日目は第1次世界大戦終戦100周年記念式典に出席し、帰国後も経済対話はしないと発言していた。今年5月のトランプ大統領来日時、麻生副総理は姿を見せなかった。「ペリー提督日本遠征記 下」(M・C・ペリー、F・L・ホークス編纂、宮崎壽子監訳 角川ソフィア文庫 P112~P113)には、第一回江戸湾訪問のとき日本皇帝(将軍徳川家慶)の病気について何も語られなかったこともあり、日本再訪のとき、ペリー提督らは「皇帝崩御の声明はアメリカとの交渉を妨害するための術策にすぎないのではないか」と疑ったことが書かれている。米国人は当時から日本の先送り体質を見抜いていたようだ。

 また同書(P19)に、琉球政府の新摂政尚宏勲について「琉球政府お得意の時間稼ぎ政策の達人で、率直な要求に対して率直な回答を与えないようにするため、無数のややこしい議論をたえず用意していたことが見てとれるだろう。しかし、琉球側がどんなに欺瞞や術策をもてあそぼうと、提督は自分の目的を邪魔されることなく、公明正大な取り引きという進路からそらされて、東洋的な隠れんぼう外交の横道に引き込まれることなく、まっすぐに目標に突き進んでいった。」などと書かれている。安倍首相は『日米安全保障条約見直しを主張するトランプ米大統領に必要性を説明した際、「安倍さんの説明は天才的だ」と言われたことがあると明らかにした。』(「首相「トランプ氏から『安倍さんの説明は天才的』」テレ朝の番組で明らかに」 毎日新聞WEB版 2019年7月3日)というが、それは「問題すり替え」もしくは「言い訳」の天才ということの婉曲表現ではないかと思う。安倍政権がどんなに時間稼ぎしようとも、トランプ政権はペリー提督のように目標に突き進んでいくだろう。

 今年は、統一地方選挙や参議院選挙も日米経済交渉の先送り理由に利用された。日米経済交渉をさらに先送りするために、安倍首相は衆議院の解散総選挙を実施するかもしれない。

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