麻薬取引に日本政府が絡んでいても違和感はない。戦時中、東条内閣の機密費には中国でのアヘン密売の収益が充てられたと考えられている。「アジア・太平洋戦争 シリーズ日本近現代史⑥」(吉田裕著 岩波新書)には、「政治資金の面でも、東条首相は有利な立場にあった。陸相として陸軍省の機密費を自由に使うことができるからである。」(p68)、『この後、鳩山は、「東条の持てる金は十六億円なり」と語り、近衛は東条の資金源は、中国でのアヘン密売からあがる収益だと指摘している。アヘン密売との関係については確証がないが、四六年七月の国際検察局による尋問の中で、近衛の側近の富田健治が、東条がアヘン売買の収益金一〇億円を鈴木貞一陸軍中将(興亜院政務部長)から受けとったという噂があると指摘している。』(p69)と記されている。
自由民主党の宏池会に所属し、後に日本国の首相となる大平正芳は、戦時中、中国の河北省でアヘン密売に関わっている。「表舞台 裏舞台 福本邦雄回顧録」(講談社 インタビュアー伊藤隆、御厨貴 丹羽清隆速記 編集協力内藤武宣 p152)には、「大平さんは戦争中、大蔵省からの出向で、興亜院で河北省の麻薬割り当ての担当をしていたんだね。それで、麻薬の話になって、河北で採れる麻薬の数量、割り当て、配給、どういうふうに民間に回し、どういうふうに軍で使うか、そういうことをやっていた、と。」という記述がある。
最近でも、覚醒剤密売で工藤会幹部の逮捕が報じられた(覚醒剤密売で工藤会幹部ら16人逮捕、締め付け厳しく福岡県外に送付…客の大半が九州・四国 : 社会 : ニュース : 2021/11/22 読売新聞オンライン)。「覚醒剤アンダーグラウンド」の記述が正しければ、2014年7月4日に安倍内閣が対北朝鮮独自制裁の一部解除を打ち出す直前の7月2日に米国財務省の金融制裁の対象とされた工藤会は、日本政府の商売ガタキということになる。
同書では、米国でも使用者が増えているが日本が最大の市場だとされている。米国では薬物による中毒死が増えており、覚醒剤中毒者まで増えることには危機感があるのだろう。文春オンラインは、覚醒剤による中毒死事件のことも報じていた(「口と性器から薬を入れた」28歳の既婚者女性を覚せい剤中毒死させた72歳“悪徳税理士”の驚くべき主張 2021/8/3 文春オンライン)。
なお、「覚醒剤アンダーグラウンド」の「宗教団体と繋がりがある組織が優先的にシナモノを仕入れられる」(p211)という記述には、なるほどな、と思った。
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