「日本防衛秘録」(守屋武昌著 新潮社)には、2002年の韓国出張で南北軍事境界線へ車で向かったとき、ソウル周辺地域の人口増加に伴い、以前は北朝鮮の侵攻を防ぐため居住が禁止されていた地域に、増えた住民の住む高層ビル群が立ち並んでいたことが書かれている。また、軍事境界線から40~50KMしか離れていないソウルとその周辺地域に総人口の半分近い2500万人が暮らしていることも書かれていた。経済自由化の結果として農村での生活が難しくなったことも理由として考えられるが、ソウル周辺への人口集中により、韓国は軍事面では脆弱性を抱えていると考えられる。その観点からすると、文政権の選択は間違っていないように思う。
2002年の資料ではあるが、米軍駐留経費に占めるホスト国の負担割合は韓国の場合40.0%と低く(日本は74.5% 「世界一の気前よさ 米軍駐留経費負担 他の米同盟国26カ国分より多い」 2006年2月21日 しんぶん赤旗)、朝鮮半島の緊張緩和で在韓米軍を縮小すれば米国予算をより効率的に配分できるだろう。トランプ政権の「アメリカファースト」の考え方とも整合する。
「朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか」(五味洋治著 創元社)では、「平和協定ができれば、まちがいなく国連軍司令部は解体されるでしょう」(p241)と予想している。日本にも朝鮮国連軍基地として、横田基地(東京都)、キャンプ座間、横須賀基地(神奈川県)、佐世保基地(長崎県)、嘉手納基地、普天間基地、ホワイトビーチ(沖縄県)が指定されているが、国連軍基地としては役割を終えるだろう。平和協定の締結に伴い在日米軍基地の役割が低下するのか、在韓米軍の縮小のために兵站基地等としての重要性が増すのかはわからない。パキスタンやインドの例を見ると核保有国を非核化するのは難しく、朝鮮半島情勢は予断を許さないが、緊張緩和のケースのことも考えた方がよいのではないかと思う。
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