投資家の目線

投資家の目線357(AIJ社長の証言と「告白」)

 4月13日にAIJ投資顧問の浅川社長らの証人喚問があった。参考人招致等での発言内容を見ると、大和銀行の従業員だった井口俊英氏の「告白」(文藝春秋)を思い出す。同書では損失を隠し、それを取り返して何とか自分の地位を守ろうとする姿勢が見られる。負け続けていると損失を取り戻すために取引金額を大きくしていく。

 大和銀行ニューヨーク支店のケースでは資金運用業務と管理業務を同一人物に任せていたため無断取引が可能だった。従業員ならば経営者が資金運用業務と管理業務を分離して牽制機能が働くようにシステム変更ができるかもしれないが、社長自身が資産運用業務を行っていると牽制機能の効きようがない。経営と資産運用業務の分離が必要ではないか?

 また、「告白」では「銀行での無断取引は不正には違いないが、あくまでも銀行の負担を軽くするための行為だ(たとえそれが部分的な自己正当化の詭弁であれ)という意識に支配されているので、罪悪感は、良心の呵責の範囲に収まる」(P252)と書かれているが、それは浅川社長の「年金基金という資金性の重さから、水増しの価格を使うつもりはなかったが、どうしても損した形では返したくなかった。取り戻せる自信もあった。結果として、このような形になって責任を痛切に感じているが、最初からだますつもりは全くなかった。ばくちをしたという覚えも全くない」(2012/3/27日本経済新聞夕刊)の証言と類似する。井口氏は米国で実刑判決を受けた。日米では法律が異なるが、この事例が指針になるのではないか?

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・鳩山元首相のイラン訪問を批判する国会議員が多い。しかし、イランに対する経済制裁は逆効果であった。ヘンリー・キッシンジャー氏は1974年にトウショウヘイ氏に対し、「日本はいまだに、戦略的な思考をしません。経済的な観点からものを考えます」(ウィリアム・バー編 鈴木主税+浅岡政子訳『キッシンジャー「最高機密」会話録』毎日新聞社)と言ったという。国会議員に「戦略的な思考」をする知能レベルがなくてもしかたがないか…。


・朝鮮民主主義人民共和国の「ロケット」発射は失敗に終わった。3回目の核実験もあるという観測もなされている。ポール・ポースト著「戦争の経済学」(山形浩生訳 バジリコ㈱ P363)によれば、「だから確かに核兵器は、通常兵器より破壊力あたりの費用がずっと小さいから、代替効果を持ち得る。全体として、核兵器数発があれば(いや一発でも)千部隊くらいの抑止威力を持つだろう。…中略… 現在GDPの3割を軍事費に使う北朝鮮のような国にとって、核兵器は軍事支出を大幅に下げることができるし、そうすればほかのことにお金が使えるようになる」としている。周辺国にとっては迷惑だとしても、彼らは合理的な行動をとっていると言える。(2012/4/13日本経済新聞夕刊三面の地図に注目。朝鮮半島からアメリカ合衆国本土を狙うとき、ミサイルは日本上空を飛ばないことが分かる。

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