投資家の目線

投資家の目線745(メキシコの治安悪化と新自由主義)

 メキシコの治安の悪化が再度話題になっている。今月4日には米国籍の一家少なくとも9人が殺害され、米国との関係悪化要因にもなっている。「もう一つは麻薬組織との癒着が政界にまん延している可能性が高いことだ。米で終身刑を受けた元麻薬王のホアキン・グスマン受刑者の裁判ではペニャニエト前大統領側に多額の賄賂が渡ったとの証言も飛び出した。地方の警察はすでに組織と癒着しており、事実上、日常的な取り締まりが行われていないともされる。強大な組織の力に政府も警察も手が及ばない状況だ。」(「メキシコの治安、悪化が深刻に、米との新たな火種。」 2019/11/7 日本経済新聞 朝刊)(追記:インセンティブの問題からいえば、麻薬組織、政治家、地方警察にとっては手を結ぶことが最適解なのかもしれないが、外国を含めた社会全体ではよいことではない)。メキシコは1980年代中ごろから新自由主義的政策をとり始め、その集大成がNAFTAであろう。京都産業大学湯川攝子教授の研究論文「メキシコにおける新自由主義的政策改革と農村貧困層」によれば、新自由主義的経済政策は農村貧困層に最低限の生活の維持を可能とするにとどまり、出稼ぎ労働供給を増やしたという。経済効率性優先の政策は地域コミュニティーを破壊することになり、それが治安の悪化につながったのではないだろうか(追記:人の出入りが激しく地域コミュニティーが確立できなければ、地域住民の話し合いによる自治も難しいだろう)?新自由主義的経済政策をとった国家でマフィアが力を持つなど治安が悪化した例としては、エリチィン政権下のロシアが挙げられる。

 古くは賭博ゲーム機(田中森一著「反転」幻冬舎 では、汚職警察官がみな暴力団の捜査担当者だったと書かれている)、近年では風俗店に関する捜査情報漏洩と、大阪府警は裏社会につながる汚職事件が多い。治安機関と裏社会の癒着がみられる大阪府は、新自由主義的経済政策と親和的なように見える。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「政治」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事