プラザ合意以前、米国は高金利・ドル高政策をとっていた。それは景気後退とインフレが同時に起きるスタグフレーションの収束に対して役立ったとされる。プラザ合意はそのドル高の修正だという。現在、米国は金融緩和を修正する方向なので、為替条項は日本が金融緩和して円安誘導し、自動車輸出に高関税がかかったときなどでも価格競争力を維持するのを防ぐためのものだろうと思う。もっとも、日本はマイナス金利であるうえに量的緩和も行っているぐらいで、これ以上金融緩和の余地があるかどうかはわからないが…。輸出数量は急激には減らないので、プラザ合意後の円高によりドルベースの対日貿易赤字額はかえって拡大する「Jカーブ効果」が発生した。そのため、米国の狙いはドルの価値の安定化で、急激な円高までは狙ってはいないのではないかと推測する。
農産物の関税引下げはTPPの認めた水準を限度にすることで大筋一致したと報じられたが(「日米、TPP水準で一致、貿易交渉、農産品関税下げ巡り。」 日本経済新聞 2019/4/18 朝刊)、日米貿易問題の主要な部分を占める自動車についてはその方針が貫けるだろうか?日本経済新聞は4月18日の社説で「TPPの基準に沿った日米通商交渉を」と訴えている。しかし、オランダ等との追加条約の通商規定水準に封じ込めることに失敗した日米修好通商条約の事例を考えると、そんなことはできないことがわかるだろう。安い海外製品の流入は米国人民の生活コストを下げる効果があるが、ホームレス増加の主因である不動産価格(家賃)上昇の問題には役に立たない。むしろ壁なり柵なりを国境付近に作って、住宅問題をタイトにする要因となりうる不法移民の流入を防ぐ方が効果はある。
TPPの水準を限度とする安倍政権のやり方では日米貿易問題を解決できないだろう。トランプ大統領は安倍首相がゴルフ仲間だとしても日本に手加減はすまい。そんな理由で手心を加え、米国人民の利益を棄損すれば、それこそアメリカ大統領失格だ。それにしても、日本の対米外交が幕末から何の進歩もしていないことに驚くばかりだ。
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