「政権が対策を急ぐのは国民が不満を募らせているからだ。米キニピアック大学が6日発表した世論調査で「米経済が良好」と答えた人は29%と5月の38%から下がった。年末商戦でインフレや品不足が続けば、野党・共和党からも批判が高まるのは必至だ」(「米、西部主要港を無休で稼働へ 供給網混乱で官民連携」 2021/10/13 日本経済新聞WEB版)とも報じられている。2010年の中間選挙後、ローレンス・サマーズ元国家経済会議委員長は、『米中間選挙はオバマ大統領の政策への拒絶であったと同時に、米国ではなく(「世界経済フォーラム」の総会が開かれる)ダボスの市民であるとみなされたエリート層への拒絶でもあった』、米国企業に「米国市民としての義務を真剣に考えるべきだ」と語ったが(「中国が米国の中心的課題に=サマーズ米NEC委員長」 2010/11/16 WSJ日本語電子版)、インフレが終息しなければ、中間選挙に向けてバイデン政権は苦しい立場に置かれるだろう。
コンテナ不足により高くなった海上運賃は、スパイスなどの高値の一因となるなど(「スパイス・ハーブ高値続々 天候不順・人手不足で供給減」 2021/10/18 日本経済新聞WEB版)、新型コロナウイルスの流行が治まっても、外国からの物資の供給リスクから、自給に力を入れる国も増えるのではないだろうか?海運のひっ迫は、2014年暮れから2015年にかけて米国西海岸港湾の労使交渉長期化でも発生、また2016年に発生した海運大手韓進海運の経営破たんでは同社の船が1カ月以上荷下ろしできないケースもあり、供給リスクの原因は様々だ。国内で自給するものが増えれば供給リスクが抑えられるうえ、国内の雇用の拡大にもつながる。
トランプ前政権も、バイデン政権も「バイ・アメリカン政策」を掲げているという点では共通している。ソビエト連邦は末期に「二国間経済にはある程度の均衡をはかる必要があります」(「ゴルバチョフ回顧録 上巻」p331)と貿易収支不均衡の是正を目指しており、米政権が貿易収支不均衡の是正を目指すことはおかしなことではない。今回の日本の総選挙で各政党は「分配」政策に力を入れているが、マスコミの論調は分配より成長を重視するものが多い。世界最大の市場である米国が自給型国家に代わった場合、海外市場頼みの日本は、「成長」できるのだろうか?金の保有が少ない日本は、基軸通貨であるUSダラーを稼げなければ信用力を失い、海外から資源を購入することも難しくなるだろう。GDP世界第2位の中華人民共和国も対米輸出に頼る面が多く、「バイ・アメリカン政策」の影響をうけて経済成長に陰りが出ると思われる。外国市場が頼れず、国内市場が拡大できないなら、労働生産性を引き上げても成長は無理ではないだろうか?新型コロナウイルスの影響などによる収入減で、炊き出しに並ぶ人が増えているという(『職あれど窮す「脱する道筋を」 炊き出しに若者・女性』 2021/10/20 日本経済新聞WEB版)。国内市場の縮小を防ぐ意味でも、「分配政策」は必要だと思うが…。
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