投資家の目線

投資家の目線232(大証の新規制)

 17日に、大阪証券取引所が企業統治に関する新規制案を発表した。発行済み株式数の300%を超える第三者割当増資は禁止され、25%を超えるものについては情報開示を強化するという。すると、2006年7月に、王子製紙からTOBがかかる直前に北越製紙が三菱商事に行った発行済み株式数が3割増えた第三者割当増資は後者に引っかかることになる。しかし、MSCBに比べるとまだずいぶん規制が緩いような気がする。第三者割当増資の場合は特定の大株主が発生する場合が多い。原則として市場に売却されるため公募増資に近いMSCBの発行より、特定の大株主ができてしまう分、第三者割当増資は既存株主にとって不利なもののように思う

 ZAITEN2009年12月号の雑談経済論で、西川聰氏がライブドアのニッャ燈咜濫ヮ福フとき、MSCBを使って資金調達をしたことで市場の秩序を乱したかのような批判をしている。しかし、西川氏は日本証券業協会が平成19年2月に出したMSCBに関する報告書をお読みになったことがないのだろうか?

「会員における引受審査のあり方・MSCBの取扱いのあり方等について―会員における引受審査のあり方等に関するワーキング・グループ最終報告―」  
http://www.jsda.or.jp/html/houkokusyo/pdf/hikiuke4.pdf

 その中の「MSCBと公募増資との株価への影響に関する比較検証」では、「MSCBの方が結果として既存株主負担が小さくなるケースも少なくない」、MSCBは「希薄化率の割には株価への影響は限定的であったことが確認できる」と記述されている。市場関係者にもかかわらず、数年前に出ている報告書を知らないような不勉強な人物が、最近まで名古屋証券取引所の副社長だったとは・・・。日本の証券取引所はこれでいいのか?

(また、西川氏は100分割についても批判していた。しかし、平成18年1月の制度改正で割当日の翌日が効力発生日になった。つまり、株券電子化が必須となるような物理的な問題を伴うものではなく、制度の改正だけで解決できるものだったということだ。御自身が「市場の制度的欠陥」と表現するものを改正しなかった、当時の取引所の経営陣こそ「ボンクラ」と批判されるべきであろう。自身の無能を他人のせいにしてはいけないでしょう。)
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