投資家の目線

投資家の目線646(巨悪対市民)

 「巨悪対市民 今治発!加計学園補助金詐欺事件の真相」(黒川敦彦編著)は、先週11月10日に文部科学省大学設置・学校法人審議会が開設を認める答申をした愛媛県今治市の加計学園岡山理科大学獣医学部をめぐる疑惑を追及した本である。

 加計学園の獣医学部の施設は、建築の坪単価が相場の倍ぐらいするとか、細菌やウィルスを扱う先端ライフサイクル研究を行う施設としてはお粗末でバイオハザードが起きると指摘されている。神戸ポートピアアイランドのような人工島なら感染者を「島」に閉じ込めることもできるだろうが、今治新都市開発事業の丘陵地でそれは難しいだろう。テレビアニメ化もされた漫画「がっこうぐらし!」(海法紀光×千葉サドル 芳文社)はバイオハザードが起きて住民がゾンビ化する物語で、主人公の通う高校はバイオハザード発生時には自給自足できる避難施設として設計されていた。今治でも本気で先端研究する気があるのならば、そのような施設も必要ではないだろうか?「がっこうぐらし!」では近所のショッピングモールに出かける回があったが、今治のケースでも近くにイオンモール(第一地区)がある(加計学園の獣医学部は第二地区)。同学部の設立理由として四国の獣医師不足が挙げられていだが、最近になって、韓国でも学生募集していることが報道され、設立理由との矛盾が指摘されている(『認可決定の加計学園が留学生を大量募集! 「四国の獣医師不足」で特区指定受けたのに「韓国で獣医師になれる」とPR』 LITERA 2017/11/7)。

 また、この事件で加計孝太郎加計学園理事長と菅良二今治市長、今治市議13名が贈収賄容疑で松山地検に告発されている。学校法人加計学園と言えば、獣医学部と同じく6年制である薬学部のある千葉科学大学の所在地銚子市では、加計学園に92億円の補助金を提供した影響もあり(うち14.6億円は返還)、財政悪化に苦しんでいる(週刊朝日2017年4月7日号)。2002年に大学誘致を訴えて銚子市長に当選した野平匡邦氏は自治省出身で、加計学園傘下の岡山理科大学の客員教授を務めていた(同)。

 また、加計孝太郎氏は安倍首相と米国留学時代からの友人としても知られ、2013年の第2次安倍政権発足以降だけでも食事やゴルフで14回の接触がある(ハフポスト日本版 2017/7/24)。


 安倍政権の教育問題に関係した事件では、森友学園の問題があった。森友学園事件では、安倍晋三首相夫妻、籠池森友学園理事長の国会証人喚問を要求した竹下亘自民党国会対策委員長、地元が八尾市の松井一郎大阪府知事、冬柴鉄三元公明党幹事長の息子が登場した。

 田中森一(元自民党清和会顧問弁護士)著「反転」(幻冬舎)では、「拓銀をつぶした男」焼鳥屋五えんやグループの中岡信栄氏と親しい政治家として自民党安倍晋太郎氏、竹下登氏、同党で生長の家に関係する玉置和郎氏、村上正邦氏、公明党矢野絢也元委員長(八尾市出身)、民社党春日一幸元委員長が挙げられていた。また、「反転」では五えんやグループには巨額の使途不明金があったこと、同グループの金融会社ECCはメインバンク北海道拓殖銀行から湯水のように融資を引き出していたこと、中岡氏が訪ねてくる客に現金入りの封筒を渡していたこと、上京の時にはホテルオークラのインペリアルスイートルームに滞在し安倍氏や竹下氏らの政治家も訪ねてきたこと、特に安倍氏は国会を抜け出して牛乳風呂を堪能していたことなども書かれている。


 バブル当時、前出の安倍晋三氏は安倍晋太郎氏の秘書を、竹下亘氏は竹下登氏の秘書を務めていた。今の日本は当時と同じことを繰り返しているだけではないか⁈ と思う。

追記:不正で逮捕された望月前山梨市長は、逮捕される前、宮川典子氏(現文部科学政務官)を応援していた。

「反転」によれば、中岡氏から接待を受けたのは近畿財務局長、大阪府、府警、国税局。ECCの顧問弁護士は田村彌太郎元仙台高検検事長(歴代大阪高検検事長が就任時にあいさつに行く慣習があったほど検察内で影響力があった人物)。森友問題関係者と似てる。さらに中岡氏に近かった幹部官僚として、他にも大蔵省主計局次長だった中島義雄氏、東京税関長だった田谷広明氏、国税庁の矢野氏がいる。加計問題に登場する加戸守行元愛媛県知事はリクルート事件に連座して辞職した元文部官僚だが、リクルート事件の時の政界実力者の密会にもホテルオークラのインペリアルスイートルームが使われたという。加戸氏は日本会議の関係者でもある。また、リクルート事件はゴルフ場やスキー場(リクルートの場合は安比高原リゾート)開発に関わる保安林の指定解除という農水省の利権にも関わっていたという。当時、安倍派で農水行政に絶大な影響力を持っていたのが安倍晋太郎氏や加藤六月氏ら。

なお、「拓銀はなぜ消滅したか」(北海道新聞社 編)によれば、預金保険機構は一九九八年十月二十九日の運営委員会で、破たん処理と北洋銀行等への営業譲渡に伴う資金援助の総額を三兆四千百十三億円に決定している。拓銀処理には公的資金が使われているということだ。

 

2023/5/13

三井住友銀行元頭取の西川善文著「ザ・ラストバンカー」(講談社 p115)には、河村イトマン社長は同社の株を大阪の知り合いの業者たちに大量に買ってもらっており、イトマン事件が表沙汰になって株価が下がったため、西川氏が都心のホテルのかなり豪華な部屋をずっと借り切っている、その業者のリーダー格の人に説明に行ったことが書かれている。

2023/6/24

「住友銀行秘史」(國重惇史著 講談社)には、イトマン事件に関連して西川常務(後の頭取)とのやり取りの中に「絵を使って、許と黒川の関係ができたのは89年8月頃か。この資金は政治に流れている。今年6月、松下常務がアメリカに行く前に竹下亘のあっせんで伊藤寿永光にあった。そのとき、福本氏も同席。絵の資金は今年2月の総選挙の前に竹下に流れたに違いない。」(p351~p352)とある。そのほかにも「昨年1年間で5億円、竹下に出ている。イトマン本体ではなく、関連会社経由か。」(p379)との記述がある。田中森一は伊藤寿永光の元顧問弁護士。伊藤寿永光を通じても、竹下は関西の特定グループと深い関係があったことになる。

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