投資家の目線

投資家の目線964(先週の動向)

 台湾で民進党の総統候補だった頼清徳氏の当選が決まった翌々日、太平洋島嶼国のナウルが台湾と断交し、中華人民共和国と国交を結ぶことが発表された(「南太平洋のナウル、台湾との断交発表 中国による外交圧力の可能性も」 2024/1/15 朝日新聞デジタル)。頼氏は、以前に台湾独立支持を公言していた。ナウルは北京を刺激するのぼせ上がった台北につき合って国益を失いたくはないのだろう。よく香港の反政府デモが引き合いに出されるが、デモの首謀者に対して全米民主主義基金が支援していたとされる(「周庭さんもNED(全米民主主義基金)からの支援」 2023/12/8 (遠藤誉))。2022年に米国の方が流暢に日本語を話す女性がNEDから金をもらっていたことを書かれていたから違和感はない。NEDは米国国務省の予算で運営され、『「今我々がやっていることは、25年前にCIAが秘密裏にやっていたのと同じことだ」と、NEDのデービッド・イグナシウス会長代理は1991年のインタビューで語っている』(『トランプ政権「世界の民主化運動を支援するお金はもうない」』 2018/3/8 ニューズウィーク日本版)。政府に不満があったとしても、外国の政府系機関から資金提供を受けていたとなれば、現地では「売国奴」とみなされるのではないか?

 

 グアテマラはアレバロ新政権が発足した(「グアテマラ新大統領が就任、妨害で式典に大幅遅れ 多難な船出」 2024/1/15 ロイター)。新大統領は中華人民共和国との経済関係を重視している(「グアテマラ大統領選、中国重視派が当選 対台湾見直しも」 2023/8/21 日本経済新聞電子版)。台北がこの姿勢では、グアテマラも国交を切り替えるのではないだろうか?

 

 米国はフーシ派を抑えられない(「バイデン大統領、空爆はフーシ派抑止できていないが継続と表明(1)」 2024/1/19 Bloomberg)。イスラエルはフーシ派の発射した弾道ミサイルを大気圏外で撃墜した(『「宇宙で行われた初の戦闘」 イスラエル軍、大気圏外で弾道ミサイルを迎撃』-Chosun online 2023/11/9 朝鮮日報)。フーシ派は宇宙空間を飛翔するミサイルを運用できる「軍隊」と言える。紅海での戦闘は、欧州のLNG輸入にも悪影響を与えている(カタールエナジー、紅海経由のLNG輸出を一時停止=関係筋 2024/1/15 ロイター)。

 

 イランはイスラエルの諜報機関など反イラン組織を攻撃し、敵の機先を制した(『イラン外相、近隣2国への攻撃「領土と主権尊重」主張』 2024/1/18 日本経済新聞電子版)。これも米国がフーシ派対策に手詰まりの理由のひとつだろう。イランの隣国イラクでは、駐留米軍撤退が求められている(「イラク、駐留米軍撤退手続き着手へ 委員会で協議」 2024/1/6 日本経済新聞電子版)。

 

 英国の経済状況はますますひどくなっている。「2023年10-12月期は、英国の担保付き・無担保の家計融資の債務不履行(デフォルト)率が上昇した」(「【市場の声】英家計融資のデフォルト率、10-12月期は上昇」 2024/1/19 ダウ・ジョーンズ配信)。光熱費や地価の高騰でレストランやバーが閉店し(「英国、光熱費高騰で数千のレストランが閉店」 2024/1/15 Sputnik 日本)、ロシアの漁業協定破棄計画でフィッシュ・アンド・チップスも食べられなくなると懸念されている(『英国の国民食「フィッシュ&チップス」が危機に 露が漁業協定破棄を計画』 2024/1/21 Sputnik 日本)。人工肉や昆虫食の推進者には望ましい状況かもしれないが、漁業関係者にとっては死活問題だ。ロシアは日本との漁業協定も破棄するかもしれない。北海道は水産業が盛んな都市も多い。ロシア近海で漁業ができなくなれば人口が減り、北海道北部から東部にかけては、ロシアと日本の間の緩衝地帯になるのではないのだろうか?

 

 エマニュエル米駐日大使が、原子力発電所の再稼働などで日本にエネルギーの脱ロシア化を迫っている(「原発・再エネでロシアのLNG依存脱却を 駐日米大使寄稿」 2024/1/5 日本経済新聞電子版)。しかし、日本が濃縮ウランを輸入してきた米国自体がウラン燃料はロシア頼みで(「米国、原発燃料の脱ロシアに限界 28年も15%輸入」 2024/1/9 日本経済新聞電子版)、昨年11月には再度ロシアが主要輸入国になっている(「ロシア、再び対米ウラン主要輸出国に」 2024/1/15 Sputnik 日本)。ウラン産出国のひとつであるニジェールはロシア側についてしまった(「ロシア、ニジェール軍政と軍事協力で合意=国防省」 2024/1/17 ロイター)。むしろ米国が日本で在庫となっている濃縮ウランが必要とするのではないだろうか?米国は日本にエネルギーの脱ロシア化を迫りながら、ロシア産原油の輸入を再開していた(『米国がロシア産原油の輸入再開 「上限価格」より高値で』 2024/1/11 Sputnik 日本)。

 

 2024年の米国大統領選ではトランプ前大統領が優勢だ。先日、麻生自民党副総裁が訪米した時、トランプ氏側と接触したことが報じられている(「麻生氏、訪米時にトランプ氏側と接触」 2024/1/17 時事通信社)。安倍政権時、麻生氏は日米経済交渉でペンス副大統領のカウンターパートだった。トランプ氏が当選したならば、首相辞任によって故安倍晋三氏が放り出した宿題の履行を求められることになるだろう。

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