息子が合宿に出掛けたので,私もお暇をもらい,
京都に住む友人Tの家へ遊びに行った。
彼女とは高校の同級生で,
一度しか同じクラスになったことはないがなんだかとてもウマが合い,
休みになると時間を作って会って近況を報告し合っている。
彼女が昨年新築したお宅へお邪魔するのはこれが初めて。
お手洗いを借りて中へ入ると,ドアの外からTが
「ミシン目見てや!ミシン目!」
と叫んでいる。
ミシン目?何?
出てTに何のことか尋ねると,
トイレットペーパーのミシン目のことだ,
と彼女は言う。
それでも私は何のことやらさっぱりわからない。
Tは話し始めた。
大学生になって間もない頃,
私が一人暮らしをするマンションへTが遊びにやってきた。
お手洗いを使って出てきたTに,私は
「トイレットペーパーはミシン目のところで切り取るもんや。」
と注意をしたらしいのだ。
Tは言った。
「女の子はそういうところへも気を遣うのが大事,って教えてもらって,
すごく納得したんよ。それからずっと,トイレットペーパーを切り取る時には
いつでも,あさひの顔が浮かぶんよ。」
えぇー・・・
あのー・・・これっぽっちも記憶に無いんですけど・・・
最近どんどん昔の記憶が怪しくなっていて,
「またか」という情けない思いでいっぱいになる。
また,人がトイレへ入った後をチェックして,
ペーパーの切り取り方なんかに
難癖をつけていた自分というものにも愕然とする。
いやいや,それよりも何よりも,今,現在の私は
ミシン目なんか何のお構いもなしにテキトーなところで
「ビリッッ」
と豪快に破いちゃっているのである。
あぁ,それなのに,そんな私のしょーもない一言を真に受けて
20年以上もミシン目,ミシン目,と気にしていたTが不憫でならない。
T宅から帰って以来,私はミシン目が気になって仕方なく,
トイレットペーパーを見るたびにTの顔が浮かぶ。
遠く離れた場所でトイレットペーパーを見ては
お互いの顔を思い浮かべるTと私っていったい・・・
京都に住む友人Tの家へ遊びに行った。
彼女とは高校の同級生で,
一度しか同じクラスになったことはないがなんだかとてもウマが合い,
休みになると時間を作って会って近況を報告し合っている。
彼女が昨年新築したお宅へお邪魔するのはこれが初めて。
お手洗いを借りて中へ入ると,ドアの外からTが
「ミシン目見てや!ミシン目!」
と叫んでいる。
ミシン目?何?
出てTに何のことか尋ねると,
トイレットペーパーのミシン目のことだ,
と彼女は言う。
それでも私は何のことやらさっぱりわからない。
Tは話し始めた。
大学生になって間もない頃,
私が一人暮らしをするマンションへTが遊びにやってきた。
お手洗いを使って出てきたTに,私は
「トイレットペーパーはミシン目のところで切り取るもんや。」
と注意をしたらしいのだ。
Tは言った。
「女の子はそういうところへも気を遣うのが大事,って教えてもらって,
すごく納得したんよ。それからずっと,トイレットペーパーを切り取る時には
いつでも,あさひの顔が浮かぶんよ。」
えぇー・・・
あのー・・・これっぽっちも記憶に無いんですけど・・・
最近どんどん昔の記憶が怪しくなっていて,
「またか」という情けない思いでいっぱいになる。
また,人がトイレへ入った後をチェックして,
ペーパーの切り取り方なんかに
難癖をつけていた自分というものにも愕然とする。
いやいや,それよりも何よりも,今,現在の私は
ミシン目なんか何のお構いもなしにテキトーなところで
「ビリッッ」
と豪快に破いちゃっているのである。
あぁ,それなのに,そんな私のしょーもない一言を真に受けて
20年以上もミシン目,ミシン目,と気にしていたTが不憫でならない。
T宅から帰って以来,私はミシン目が気になって仕方なく,
トイレットペーパーを見るたびにTの顔が浮かぶ。
遠く離れた場所でトイレットペーパーを見ては
お互いの顔を思い浮かべるTと私っていったい・・・