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この時点における黒澤監督の集大成と言われる作品。すでに何回か見ているんですが、今回改めて見てみると以前の印象と全く違いました。
私には、この「赤ひげ」は「人間の心の奥底にある狂なる精神、つまりは狂気を描いた」作品だと受け取れました。つまりはそう見えちゃった。
別に好き好んでそう思ったんでなく、見てて自然とそう思ったから仕方ない。自分でも不思議です。
ですから、何て言うか、ホラー映画というと薄っぺらい言い方になってしまうので、恐怖映画とでも言えばいいのかな、そんな風に見えてしまった(だから今回、私は見ていて少々怖くなった)。
そして映画の序盤で描かれる、加山雄三が演じる保本という登場人物が、小石川養生所で自覚的に働くようになる過程は、まるでフリーメーソンの入団儀式よろしく、人生の一通りのことを体験し、一度精神的に死んで、生まれ変わる、という風に見えちゃった。
実際に、保本は入所している老人の死に立ち合い、怪我で運び込まれた女性の局部を見、そして内臓が飛び出てくるのを見て、気絶してしまう。また狂女の誘惑を受け、殺されそうにもなる。
私自身は「赤ひげ」大好きなんです。でも今回は見え方が違った。自分が年を取ったせいもあるでしょうし、映画に限らず、小説や音楽も、本当に良い作品は、年齢を重ねると共に感じ方も違うとよく言われるわけで、そうしたことなのかもしれません。
要するに、隠喩なり、寓意なりが込められた作品ということになるんじゃないのかな。なかなか日本の作品には、小説でも映画でも、ないんですが、そうした意味では珍しい作品ですね、「赤ひげ」は。
しかしながら、それを意図的にやったのかはどうなんでしょう、たまたま、偶然だったんじゃないのかな(いずれにせよ優れた作品というのは、そうした側面を持っているものです)。
なんか、この「赤ひげ」って、感動の超大作、みたいな触れ込み、そういうことになってますが、実は全然違うんじゃないの? という気がしてきたんで、今回記事にしてみた次第です。
付)だから今回、三船敏郎演じる「赤ひげ」が、あの映画「白鯨」のエイハブ船長に見えたりもしちゃった。
注)隠喩とか寓意の込められた映画の代表例は、あの「2001年宇宙の旅」ですかね。
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