忍者コミックを、コミックの1ジャンルとして定着させたという意味で、白土三平先生の功績は大きいだろう。
「忍者武芸帳」「サスケ」「カムイ伝(外伝を含む)」「ワタリ」などなど、名作は多い。
もちろん、それ以外にも多数の作品がある。
私が忍者好きになった大きなきっかけは、やはり白土先生の作品が大きい。
で、白土先生の忍者コミックを読んでいると、どの作品にもよく出てくるセリフがあった。
例えば「そこだ!」「たわけ!」「うぬ」などがそうだ。他にもあったとは思うが、すぐに思い出せるのが、それらのセリフ。
「そこだ!」は、忍者が忍術などを使ってどこかに隠れている時に、それを見破った敵対相手が、「そこだ!」と言って、その隠れている敵に対して手裏剣などを投げつけるシーンでよく使われた。
隠れているのが腕のいい忍者なら、投げつけられた手裏剣などを片手で受け止め(刺さるのではなく、キャッチして)難を逃れるが、そうでない忍者は、投げつけられた手裏剣などが突き刺さり絶命する・・・というパターンだった。
敵であれ、味方であれ、これが決まると、カッコ良かった。いかにも達人という感じがした。
「たわけ!」は、敵対する相手をなじる時などに使われ、意味合いとしては「バカめ!」的な意味である。
今でも「たわけ者」などの言い方はあるので、現代人でも分かりやすいだろう。
ちょっと調べてみたのだが、「たわけ」とは「田分け」という漢字をあてるらしい。
元々は、子供の人数で田畑を分けると、代替わりして受け継いでいくうちに、それぞれの持ち分が減っていき、収穫が減って、家が衰退する。その愚かさのことをさしていたらしい。
「うぬ」は、「お前」のことだが、この場合主に敵対する相手をののしる言い方である。英語なら単に「you」でひとくくりにできるのだろうが、なまじ日本語には二人称の言い方が何種類もあるので、きめ細かい使い分けが存在する。日本語を学ぶ外国人にとっては、さぞかしややこしいことであろう。
とまあ、あれこれ書いてきたが、「そこだ!」「たわけ!」「うぬ」は、白土先生の忍者コミックにはよく出てきた言葉である。
「そこだ」はともかく、「たわけ」や「うぬ」は、同じ日本語でも今となっては「古い」言い方にも聞こえるのは、白土作品に描かれた時代劇(主に忍者もの)によく出てきたせいか。まあ、あくまでも私にとっては・・・である。
今の世の中で、日常生活の中では「たわけ」や「うぬ」という言い方はめったにしない・・というか、リアル生活では私はほとんど使った覚えがない。
今の人は一般的には「たわけ」を言う場合には「バカ」と言うし、「うぬ」は「お前」や「きさま」と言うだろう。
「そこだ」にしろ「たわけ」にしろ「うぬ」にしろ、どれも敵対する相手に対して使う言葉の印象があるから、仮に使いたいと思っても、通常ケンカの機会がない場合には、中々使う機会はない。
でも、日常でケンカなどをする場合があったとしても、そういう言い方をするだろうか。
そういう場合は、咄嗟の言動になるので、・・・やはり咄嗟には使わないと思う。
やはり、これは、自分の中では、時代劇での敵へのなじり方・・・そんな刷り込みがある。
というより・・
やはり、白土三平先生の作品で、忍者などの格闘シーンでの決めフレーズ的な言い回しというイメージは大きいのだ。白土先生の時代劇語という感じ。
なんにせよ、とりあえず普段の日常で、使わなくてすめばそれにこしたことはない言葉ではある。言葉のニュアンスから言っても。
「そこだ!」に関しては、例えば家の中のどこかに隠れているゴキブリに向かって、「そこだ!」と言って手裏剣みたいなものを投げたり、一撃でやっつけることができれば、小気味いいかもしれない(笑)。
もっとも、ゴキの刺さった手裏剣など、それ以後もう使いたくないだろうが(笑)。
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