僕は たまにここに来てました
それは、ずいぶん昔からです
日常の中で ふと小さな旅をしていたようなものです
ここは夢の中の世界のようでもあり
意識の旅先のようでもあり
しがない現実の中の世界のようでもありました
いつも、行く時は心が躍り
着いてしまうと、こんなものかと思ったりもし
そのくせ、帰る時は、いつも寂しい
そんなところでありました
夢の中で咲いてた花は
その後どうなっているのでしょう
散ってしまったのか
今も咲いているのか
定かではありません
何も思えない
何も届かない
でも確かに僕はそこにいたのでしょう
そして、いなくなったのも僕
なぜなら その花を見続けるには
その花は美しすぎたのです
僕はもうあの時の僕ではなくなってしまったようです
あの花が知ってるのは、今の僕ではないでしょう
だから、あの場所に行っても
花は僕に気づかないでしょう
きっと気づかないでしょう
そして、それを知ってしまうと
たとえ分かっていても
僕は傷ついてしまうのでありましょう
さよならが似合わない別れもあり
さよならを言わなくていい別れもあり
さよならじゃない別れもあり
時には、別れとの別れもあるのでしょう
二度とそこに行けないことを
思いだして、かみしめてみます
持ち前の体験を使ってです
それ相応の体験はあるはず
もしも分別が邪魔をしたら
もう一度考えるのです
そして問いかけてみるのです
それは本当にやってしまっていいのかを
まだ引き返せるうちに
遅すぎるようになる前に
迷える誰かさん。
土砂降りの中にいる誰かさん。
旅先にいる誰かさん。