NOBODY by 杉真理
杉真理。すぎまさみち。「しんり」でもなければ、「まり」でもない。男性シンガーソングライターだ。
私がこのミュージシャンの名前を知ったのは大学の頃。
当時私が所属していた音楽サークルで、女の子の後輩たちが女の子だけでバンドを組んでいたのだが、その子たちがカバーしていたのが「キャッチ・ユア・ウェイ」という曲。
「なかなか良い曲だな」と思い、誰の曲か聞いてみたら、杉真理の曲とのこと。
それで、その名前は私の頭にインプットされたのだった。
で、いつかアルバムを聴いてみようとも思った。
そんな思いの中、私はあるアルバムの存在を耳にした。
それは「ナイアガラ・トライアングル」というアルバム。
そのアルバムは大瀧詠一が若手のシンガーソングライターと組んで制作した、オムニバスアルバム。
第1段として「ナイアガラ・トライアングル VOL,1」があったのは、音楽仲間の家で聴いていたので私は知っていた。
そのVOL,1は、大瀧詠一さんが山下達郎さんと伊藤銀次さんに声をかけ、大瀧さんと山下さんと伊藤さんがそれぞれ3~4曲ずつ持ち寄り、制作したオムニバスアルバムみたいなアルバムだった。
その後「ナイアガラ・トライアングル VOL.2」が制作され、その第2作目で大瀧さんが声をかけたのが佐野元春さんと杉真理さんであった。
ここでも、大瀧さんと佐野さんと杉さんが、このアルバムのために曲を持ち寄り、1枚のアルバムとしてまとまった。
で、このアルバムに杉さんが提供した曲の中の1曲が、「NOBODY」という曲だった。
この「ナイアガラ・トライアングル VOL.2」は、大瀧さん、佐野さん、杉さんの音楽的共通点であった「リバプールサウンド」をテーマに制作された。
アルバムを通して聴くと、テーマである「リバプールサウンド」というものが一番色濃く反映されていたのが、この「NOBODY」という曲だった印象がある。
リバプールサウンド・・といえば、なんといってもその核はビートルズ。
この{NOBODY}は、ビートルズのエッセンスがてんこ盛りの、ご機嫌なナンバーだった。
ビートルズへのオマージュで作られた曲であることは、一回聴いてみれば誰もが感じるはず。実際、杉さんは、ジョン・レノンが亡くなった直後に、この曲を書きあげたらしい。
ジョンへの思いがつまった曲であろう。
メロディラインといい、ファルセットの入れ方といい、コード進行といい、テンポといい、サウンドといい、終わり方といい、まさに初期のビートルズ!
ロックンロールな曲だが、曲の途中では、ビートルズの「恋を抱きしめよう」を彷彿とさせる拍子チェンジなども盛り込まれ、ヒネリが効いていて、芸(?)が細かい。
で、そんな細かい分析よりも、単純に曲そのものが理屈抜きに素晴らしい。
キャッチーで、覚えやすく、ノリもよく、最高に魅力的な曲だ。
私はこの1曲を聴いて、一発で杉真理さんのファンになってしまった覚えがある。
もともと、大学のサークルで後輩たちが杉さんの「キャッチ・ユア・ウェイ」をカバーしているのを聴いて、その名前を頭に刻んでいた私だったが、この「NOBODY」で、私は「つかまれた」。
「ナイアガラ・トライアングル」という企画アルバム、今にして思えば、とんでもなく豪華な企画だ。
前述の通り、第1作では大瀧詠一さん・山下達郎さん・伊藤銀次さん。
第2作では、大瀧詠一さん、佐野元春さん・杉真理さん。
この組み合わせですぜ。なんて凄いメンバーであろう。
後のブレイクを考えると、夢の組み合わせのようだ。
このアルバムが制作された頃は、まだ山下さんも銀次さんも佐野さんも杉さんも、まだ若手。
もちろん、それまでにも地道な音楽活動はされていたはずだが(だからこそ、その音楽性に目を付け、大瀧さんはそれらのメンバーをスカウトしたわけだし)、まだその頃は後の大ブレイクの前。
山下さんも伊藤さんも佐野さんも、杉さんも、このアルバムがその後の飛躍に繋がったのだろう。
そういう意味では、大瀧さんの「人を見る目」「才能を見抜く目」は確かで、その眼力も特筆もの。さすがなのだ。
大瀧さん、山下さん、佐野さんに関しては、もう今更私がここで書くまでもないぐらい、皆さんもよくご存知のはず。
ちなみに、伊藤銀次さんは、山下達郎さんや大貫妙子さんが組んでいたバンド「シュガーベイブ」の第2期にギタリストとして在籍したことがあり、佐野元春さんのデビュー時のプロデュースを担当。イカ天の審査員を務めたり、あの長寿バラエティ「笑っていいとも」のテーマソング「ウキウキウォッチング」を作曲したり・・と多彩な経歴の持ち主。
個人的には伊藤さんの「ベイビーブルー」というアルバムにはかなり熱中し、ウォークマンで会社の行き帰りに毎日聴いてた時期がある。私にとっては、大のお気に入りアルバムであった。
オリビア・ニュートンジョンの「ザナドゥ」を彷彿させる曲調のタイトル曲「ベイビーブルー」などは、特に私のお気に入りで、オリジナルベストヒットカセットにはよく選曲していたものだった。
で、杉さんのことに話を戻すが、杉さんは数多くのシンガーに曲を提供しており、また、数多くのCMにも楽曲が使われている。
「バカンスはいつも雨(レイン)」
「いとしのテラ」
などのヒット曲はCMでもおなじみだった。
他には・・泣く子も黙るほど(?)の有名なCMソングである、あの「ウィスキーがお好きでしょ」もまた、杉さんの楽曲である。
随分前のことになるが、私の卒業した大学の学園祭に杉さんが呼ばれたことを知った時、
杉さんのライブ目当てで私は久々に母校の学園祭に顔を出し、学校の講堂での杉さんのライブを見た覚えがある。
杉さんのライブを至近距離で見れるうえに、懐かしい母校の姿や、学生街のなつかしい様子までみることができ、1粒で3度美味しい日になった。
ビートルズに出会ったことが杉さんを音楽の道に進ませるきっかけになったようだが、その杉さんのビートルズ愛は、この「NOBODY」に見事に発揮され、たまらない出来ばえの楽曲になっている。
この曲を制作してる時、杉さんはさぞかし楽しかったのではないか。
そんな気がしてならない。
なぜなら、この曲からは、杉さんのビートルズへの思いがリスナーにビンビン伝わってくるものがあるからだ。
https://www.youtube.com/watch?v=F5kgypYx3uc
50年代ロックンロールを最も愛する私を瞬く間に熱烈ファンにしてくれました!
この明るく楽しい楽曲をガールズバンドでカバーされていらっしゃた方々、本当に共感します!
私も楽器出来るように頑張るからバンドに入れてください(笑)
だんぞうさんは当時からオリジナル楽曲を多数持っていらっしゃるでしょうけれど、このロックンロールをカバーされなかったのですか?
仲間たちが演奏し、歌う姿を見るだけでは、我慢出来なくなりますよ(笑)
そして、この楽曲をリアルタイムで聴くことが出来た時代は、本当に幸福ですね。
今回は、改めてロックンロール(「ロック」ではない)の魅力・迫力・魔力を邦楽によって確認できました!
そんな価値観・感受性を持つ私は、幸福です(笑)
私の後輩の女の子たちが組んでたガールズバンドで取り上げていたのは、この曲そのものではありませんでしたが、杉真理さんの曲であったのは確かです。
私は自分のバンドではビートルズの曲をカバーしたことはなかったです。
代わりに、ビートルズにインスパイアされて作った自作曲をバンドに持ち込んで、バンドのレパートリーにしてました。
リアルタイムでこの曲を初めて聴いた時、私の心は一発でわしづかみにされました。
この曲を気に入ってもらえて、なによりです。