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ご存知のように、学校では生徒会なるものがあり、その会には生徒会長なる生徒がいる。
生徒会長には任期がある。ということは、いずれ新たな生徒会長が生まれることになる。
自ら立候補する子もいれば、級友からの推薦で生徒会長の選挙にエントリーする場合もある。
私の記憶では、たいがい勉強かスポーツなどがよくできる子が最終的には生徒会長に選出された気がする。
だが、たまに。
この生徒会長選挙の時に、意外な生徒が生徒会長選挙にエントリーすることがあった。
いや、この場合、エントリーさせられた・・と書いた方が早い。
クラスで落ちこぼれぎみの生徒が、級友たちによって推薦させられるのだ。
勉強もスポーツも。
その場合、推薦された子がたとえ勉強があまりできなかったとしても、そのぶん皆からの人気者であったりするならともかく、たまに・・勉強はできないだけでなく、さりとて皆からの人望がさほど厚いというほどでもなかった子・・仮にここではY君と呼ぶ・・が、級友たちから半分冷やかしで推薦されたケースもあった。
生徒会選挙の時に、各クラスから1人づつ立候補者を擁立する時、級友たちは面白半分でY君の名前をあげ、そのままそれがクラスの正式立候補者になってしまったのだった。
それを知った、他のクラスの生徒たちは、「え?Yが?本当か?」「おいおい、冗談じゃないのか?」「お前ら、ふざけてるだろう?」などの反応をした。
立候補者に選ばれてしまった時、Y君の心境はどんなだったのだろう。
それは誰も知る由もない。その点は、Y君本人しかわからない。
ただ、Y君は、自身の名前が級友からあげられた時、拒みはしなかった。
まあ、だから立候補者として決まってしまったのだが。
せっかく皆が自分のことを推薦してくれたのだから、頑張ってみようと思ったのかもしれない。そう、性格は決して悪い奴ではなかった。純朴な奴だった。
Y君がそのクラスの立候補者になることで、そのクラスの他の生徒たちは生徒会長選に出なくてすむ。
ただ、困ったのは担任の先生であった。
生徒会長選の各クラスの立候補者が出揃った時、それぞれのクラスの担任の先生が、自身の受け持つクラスの立候補者に関するアピールコメントを出したのだが、Y君のクラスの担任の先生は、あきらかにとまどったようなコメントを出していた。
「(Y君は)至らぬ点はあるとは思いますが、なにより本人がやる気になっています。一度やらせてあげて下さい」
という主旨のコメントを出していた。
私はこのコメントに、先生も困っているんだろうな・・と思った覚えがある。
まあ、もしかしたら、それは私のうがちすぎな見方だったかもしれないが。
で、選挙の結果なのだが、Y君は結局選出されなかった。
なんか、噂では、他のクラスの生徒たちの中には、「おいおい、面白いからYに票を入れようぜ」という動きもあったのを私は知っている。
だが、結局は無難な子が生徒会長に選出された。
その結果には、安堵感みたいなものを覚えた生徒は多かったはずだ。
後になって私は思ったのだが、もしもその時の選挙で、Y君が生徒会長に選ばれたいたら、どうなっただろう。
Y君を立候補させた生徒たちや、Y君に票を入れようとした生徒たちは、面白半分で入れた子が大半だった。そいつらは、もしもY君が本当に選出されたら、どうするつもりだったんだろう。
私は思うのだが、今にして思えば、だからこそY君が選出されたほうがよかったのかもしれない。
Y君は、クラスでは、正直言うと、ある意味少し「からかわれている」ような存在だった。
そんな子が、生徒会長になって、もしもその役目をちゃんと果たしたら、Y君は、彼をからかってた奴らを見かえすことになったのではないか。
だからこそ、皆からからかい半分で立候補させられた時、拒まなかったのかもしれない。
だとしたら・・・からかい半分で立候補させられたY君が生徒会長に選出され、その役目を全うし、皆を見かえす展開になってほしかった気が私はしている。
ちなみにそのY君とは私は割と仲良くしていた。
私は彼に、ノートに連載漫画を描いてくれとよく頼まれていたからだ。
当時の私は漫画家志望だったし、漫画を描きたくてしかたなかった子だったので、Y君のオファーには喜んで応じ、熱血漫画や野球漫画をノート何冊ぶんも描いて渡していた。
自分の金でまっさらなノートを何冊も買うお小遣いの余裕は、当時の私はなかった。
そんな金があれば、私は漫画の単行本や、漫画主題歌の入ったレコード(ソノシートも)やプラモデルの方が私は買いたかったら。
だから、Y君が私が漫画を描くために、お小遣いでノートを買って、そのまっさらなノートを私に提供してくれていたのは、嬉しかったのだ。
そう、彼は私が当時描いていたオリジナル漫画の貴重な読者でいてくれたのだ。
私にとっては、たった1人でも読者がいるということは、モチベーションアップにも繋がったし。だから、張り切って描いていた覚えがある。
だから、からかい半分、面白半分で彼が生徒会長選に立候補させられた時、私は当初不安だったり複雑だったり、少しムッとしたりもした。だが、Y君本人が拒んでなかった以上、何も言えなかった。
でも、私が不愉快に思った気分は、別の意味では私もY君を軽くみていたのじゃないか・・・後になって、そう私は思うようになった。
だからこそ!
面白半分&からかい半分で他薦で立候補させられたY君が、本当に生徒会長に選ばれて、その役を無事にこなして、彼を普段からかっていた奴らを見返す姿を、私は見たかった。
ほんと、今となっては、そう思う。
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